あるいは
あるいは、この3本足の犬を助けることで俺は大昔に犯した罪を償いたいのかもしれない。
それは正しくもない行為で。
美しくもなく。
汚い俺が汚く贖罪しようとしているだけなのだ。
だがおそらく。
そんな行為は誰にだってあるのだとも思う。
俺だけではないから、俺もする。
犯した罪を他の場所で償う。
それは矛盾しているようで、案外的を射ているのかもしれない。
誰にも言えない、ともすれば懺悔のようなもの。
また、それが自己満足だったとしても。
それでもきっと、何かしらの役に立てるなら。
自己満足でもいいのでは?
と、考える俺は間違っているのだろうか?
罪は犯してはいけないもので。
罪は償うもので。
だから犯した罪に苛まれるのだ。
気を抜けばいつだって夢に出てくる。
まぶたの裏に焼き付いている。
過去のことだと思えないほどに。
昨日のことのように。
いつだってあの風景が。
あの匂いが。
あの雨が。
あの走ったあとの動悸が。
俺の首を絞めて、目を見開かされて、耳をつんざいて、教えてくるのだ。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃ…っ!だけど…俺だって…俺だって…っ!」
あの台詞に続く言葉はなんだったのだろう。
自分が紡いだ言葉のはずなのに、全く分からない。
けれど。
あの感覚は覚えている。
初めて罪を犯した日のことだった。
あの雨の冷たさは今後一生忘れることの出来やしない、後悔の念にまみれた、俺の涙だった。
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あ~あ。
最近嫌な夢をみる。
昔の話だ。
これと言って意識しているわけではないのだが、どうしても思い出してしまう。
夢にみてしまう。
やはり少し肌寒いこの季節に新聞紙で寝るのは不味かったか?もしかすると、そのせいで嫌な夢をみてしまうのかもしれない。
いや、それは関係ないか。
まだ街の方は明るい。
ったく、あいつらは年中パーティーか?
今何時だと思ってんだっての。
まあ、俺は時計なんて高価なものは持っていないので今が何時かは全くもって分からない。
眠くなったら寝るし、目が覚めたらそれが朝だ。
だから今のこの時間帯は俺からすると深夜なので、周りには静かにしてもらいたいところだ。
…その願いが叶ったことは1度もないが。
とにかく俺は今眠いのだ。
そして快眠したいのだ。
「犬っコロ、もっと近寄れ。寒いだろ」
そう言って犬を俺に近付けて、暖をとる。
犬の体温は温かかった。
もうとっくの昔に分かっていたことだったけれど、初めて実感した。
この犬も生きてるんだな。
「おやすみ」
その言葉に犬が返したような気がした。
「クゥン」
その時には俺は寝ていたから真意は分からないけれど、そんな気がした。
今夏ですけどね。。
この物語は冬辺りだと思っていただければ!
…まだ本題に入ってないッ