今日も今日とて
何故、物を盗んではいけないのだろう?
物を盗みまくってる俺が、大分、遠い昔に考えていたことだ。
それは、法に触れるからだろうか。
倫理的によくないことだからだろうか。
人が汗水垂らして作った物。作物。衣類。
稼いだ金。だからだろうか。
人の思いを踏みにじる行為だからだろうか。
そう考えている奴らに俺は問いたい。
そんな綺麗なことを言ってるお前らは、牛が育てた、鳥が育てた、豚が育てた、植物が育てた、沢山のものが、育てた生物を。命を。
奪っていることに気付かないのか?
気付いている奴らに問いたい。
それは相手が人間ではないから許される行為なのか?
相手と言葉が通じないから許される行為なのか?
犬も、猫も、鳥も、蟻も、等しく同じ命なのに?
お前らは差別するのか?
人様だけは違うのだと。
そう言い張るのか?
俺の言ってることは詭弁か?
俺の行為を正しいとは思っちゃいない。
ただ、お前らが物を作るときに汗水垂らしたように。
俺だって、物を盗むときに努力をしている。
同じ努力なのに差別される。
俺はお前らと同じく、生きようとしてるだけなのに。
法に触れた?
触れなきゃ生きることも出来ないのに裁かれるのか?そのまま死ねってことか?
それが運命ってか?
神様が決めたのか?
ざけんな。
もし運命ってなら、みじめに、カッコ悪く。
逆らってやる。
生きることは簡単だ。食って寝れば生きられる。
死ぬことだってたやすい。手首かっ切ればいいだけの話なのだから。
死に続けることだって簡単だ。生き返ることなんて出来やしないのだから、1度死ねば死に続けることと同義だ。
けれど、生き続けるのは難しい。今日も、明日も、明後日も、その次も、もっと先まで、延々と生きなければならないから。
生き続けるのに、意味なんか見出だせない。
けどまあ、運命に抗える唯一の方法なら、それを喜んで選ぼう。
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「だから着いてくんなって!」
俺の周りを走り回ってる犬に言う。
足が1本無くても、意外に走れるモンなんだな。
少し不謹慎な気がしなくもないが、素直に思ったのだ。
俺が住んでいるスラム街は、世界でも有数の犯罪都市なのである。何度も言うように俺もそれに加担しているので、悪い気はしている。反省はしてないし、する気もないし、罪悪感もないけれど。
何が言いたいかっていうと怪我を、それこそ足が1本無いような大怪我をしている犬は、1匹では生きにくいのだ。
人間でさえ、食べるものがほとんど無い。
犬だって人間の食料になり得る。
俺はこの犬の命を奪う気は無いけれど、かと言って守る気もさらさら無い。
ただ、どこまでも着いてくるのだ。
俺がどこへ行こうと。
犬が少し腹を空かしたのか、クゥ〜ンと鳴きながら俺の足へすり寄ってくる。
やめろ。そんなことしたって、なんもやんねーからな。
クゥ〜ン。クゥ〜ン。クゥ〜ン。
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…あぁもう!
手に持っていたパンを半分に千切って、犬の方へ投げる。
あまりに嬉しそうにがっつくので見ていて微笑ましい。
でもこれから先はもう絶対分けてやんねー。
毎日そう思って、毎日そうならない。
「お前も行く場所がないのか?」
聞くまでもなかった。この犬は虐待されて捨てられたのだから。
なら俺と一緒だな。
まあ、俺はずっと独りだったし家族なんてもう覚えていないのだけれど。行く場所がないのは同じだ。
だからと言って着いてくるな!
それでも犬は3本の足で、器用に。
今日も今日とて着いてくる。
久しぶりです。くらげです。
あれ?すぐに完結する予定だったのに終わる気がしないよ!
ってことで、これからもよろしくおねがいしますですです!