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今日も今日とて

 何故、物を盗んではいけないのだろう?

 物を盗みまくってる俺が、大分、遠い昔に考えていたことだ。


 それは、法に触れるからだろうか。

 倫理的によくないことだからだろうか。

 人が汗水垂らして作った物。作物。衣類。

 稼いだ金。だからだろうか。

 人の思いを踏みにじる行為だからだろうか。


 そう考えている奴らに俺は問いたい。

 そんな綺麗なことを言ってるお前らは、牛が育てた、鳥が育てた、豚が育てた、植物が育てた、沢山のものが、育てた生物を。命を。

 奪っていることに気付かないのか?


 気付いている奴らに問いたい。

 それは相手が人間ではないから許される行為なのか?

 相手と言葉が通じないから許される行為なのか?

 犬も、猫も、鳥も、蟻も、等しく同じ命なのに?

 お前らは差別するのか?

 人様だけは違うのだと。

 そう言い張るのか?

 俺の言ってることは詭弁か?


 俺の行為を正しいとは思っちゃいない。

 ただ、お前らが物を作るときに汗水垂らしたように。

 俺だって、物を盗むときに努力をしている。

 同じ努力なのに差別される。

 俺はお前らと同じく、生きようとしてるだけなのに。


 法に触れた?

 触れなきゃ生きることも出来ないのに裁かれるのか?そのまま死ねってことか?

 それが運命ってか?

 神様が決めたのか?


 ざけんな。

 もし運命ってなら、みじめに、カッコ悪く。

 逆らってやる。


 生きることは簡単だ。食って寝れば生きられる。

 死ぬことだってたやすい。手首かっ切ればいいだけの話なのだから。

 死に続けることだって簡単だ。生き返ることなんて出来やしないのだから、1度死ねば死に続けることと同義だ。

 けれど、生き続けるのは難しい。今日も、明日も、明後日も、その次も、もっと先まで、延々と生きなければならないから。


 生き続けるのに、意味なんか見出だせない。

 けどまあ、運命に抗える唯一の方法なら、それを喜んで選ぼう。


*************


「だから着いてくんなって!」

 俺の周りを走り回ってる犬に言う。

 足が1本無くても、意外に走れるモンなんだな。

 少し不謹慎な気がしなくもないが、素直に思ったのだ。


 俺が住んでいるスラム街は、世界でも有数の犯罪都市なのである。何度も言うように俺もそれに加担しているので、悪い気はしている。反省はしてないし、する気もないし、罪悪感もないけれど。


 何が言いたいかっていうと怪我を、それこそ足が1本無いような大怪我をしている犬は、1匹では生きにくいのだ。

 人間でさえ、食べるものがほとんど無い。

 犬だって人間の食料になり得る。

 俺はこの犬の命を奪う気は無いけれど、かと言って守る気もさらさら無い。


 ただ、どこまでも着いてくるのだ。

 俺がどこへ行こうと。


 犬が少し腹を空かしたのか、クゥ〜ンと鳴きながら俺の足へすり寄ってくる。


 やめろ。そんなことしたって、なんもやんねーからな。


 クゥ〜ン。クゥ〜ン。クゥ〜ン。


 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………


 …あぁもう!

 手に持っていたパンを半分に千切って、犬の方へ投げる。

 あまりに嬉しそうにがっつくので見ていて微笑ましい。


 でもこれから先はもう絶対分けてやんねー。

 毎日そう思って、毎日そうならない。


「お前も行く場所がないのか?」


 聞くまでもなかった。この犬は虐待されて捨てられたのだから。

 なら俺と一緒だな。

 まあ、俺はずっと独りだったし家族なんてもう覚えていないのだけれど。行く場所がないのは同じだ。


 だからと言って着いてくるな!


 それでも犬は3本の足で、器用に。

 今日も今日とて着いてくる。

久しぶりです。くらげです。

あれ?すぐに完結する予定だったのに終わる気がしないよ!

ってことで、これからもよろしくおねがいしますですです!

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