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ダンジョン攻略/メリア

 

 誰だろう?あの人。

 すんごい綺麗なんだけど……

 どこの女神だろう?


「はぁはぁ」


 隣の男の子が気持ち悪い。


「イリーナ様ぁ!」


「あの、死んでくださいますか?」


「ありがとぅございますぅ」


 あの変態も気持ち悪い。


 イリーナと呼ばれたその女の子は、悠々と僕の前を通っていく。

 輝くような銀髪に、妖精のような顔。

 艶やかな唇に、雪のような肌。

 あ、今凄いいい香りが。


 ……やばい、心が持っていかれる。


「君」


 肩に手をおかれた。


「我ら『イリーナ様を眺めてはぁはぁする会』に入らないかい?」


「えっと、遠慮しておきます」




 ▲▼▲▼



 三日月を背景にして、銀髪が輝く。

 少女は舞う。

 襲いかかる巨大なモンスター達に対し、踊るように剣を振る。

 皆の寝静まっている頃。

 街から離れた山奥で、少女は化け物達と戯れる。

 イリーナという少女は、学年首席では飽きたらない。



 ▲▼▲▼



「お前ら!泣いて喜べ!Aランク冒険者、スノウ様が来てくれたぞ!」


「Aランク?!」


 す、凄い……

 雲の上の人だ……


「ああ!なんでもここの卒業生なんだと!このクラスは抽選で当たったから一緒にダンジョンにいけるんだぞ!はっはー!」


 ガラガラ


「どうもー、スノウでーす☆」


「「「うおーー!!」」」


「「かわえーー!!」」


「「きゃあ~~!」」


 ピンク色の髪を揺らし、その右目から放たれたウインクに、僕は多大なダメージを負った。

 か、可愛すぎる。

 駄目だ……

 都会は可愛い子が多すぎる!


 あ、担任は剣の授業と同じべヒント先生で、僕と同じクラスには村の知り合いは誰もいない。

 クリスとは同じクラスになりたかった……

 だけど、今日に限ってはこのクラスで良かったと思ってる。

 なぜなら……


「じゃあみんな頑張ろうね☆」


「「「「はい!!」」」」


 ピンクの髪を揺らし、スノウさんは先頭を歩く。

 ああ、ラッキーだ。

 こんな綺麗な人に教えてもらえるなんて。


 今日は特別ということで、森の奥のひっそりとしたダンジョンに先生無しで潜る許可が出た。


「グルル」


 ゴブリンが現れた。

 スノウさんが一歩進み出る。


「ゴブリンは剣を奪ってくるので、気をつけるようにねー☆」


 ゆっくりと歩いていく。


「あ、ゴブリン程度なら剣なんて使わなくても倒せるからねー☆」


 シュッ


 ゴブリンが繰り出した拳を避け、スノウさんはどういうわけかゴブリンの腕をつまんでいた。

 そして流れるように後ろに回り込み、ゴブリンの首をボキッと折った。


 動きが洗練されすぎてて全く参考にならない。


「ま、今のは別に真似しなくていいからねー☆」


 だよねー。

 でもやっぱりAランクって凄い。

 あっという間だったもんな。


「ガアァァァ!」


「はい、オークが出たよ☆これからの私の動きを見本とするようにー☆」


「「「はい!!」」」


 スノウさんは風のようにオークに近づき、剣を振りかぶった。

 オークも棍棒を振るうが、その時にはもうオークの後ろにいたスノウさんがオークの首を切り裂いた。


 ……駄目だ。

 見えなかった。


「出来るだけ、相手の後ろとか死角に回り込むことが重要だよ☆」


 ぐはっ

 相変わらずウインクの殺傷力が凄い。


 しばらく進み、草原のような広い空間に出た。

 霧が立ち込めて、遠くは見えない。


「ふん、ふん、ふふ~ん」


 スノウさんが鼻唄を歌ってる。

 楽しい人だ。


 殆ど真っ白に染まった視界の中、黒い影が浮かび上がる。

 黒い影はだんだん大きくなってきて、ようやくそのモンスターが見えた。


「ちょっ!」


「う、嘘……」


 現れたのは、噂でしか聴いたことのない化け物、ミノタウロス。

 上半身が牛のような外見の、凶悪なモンスター。

 えっと、これ無理……


「じゃあみんな頑張ってね~☆」


 う、嘘やん……

 なんでここで……

 まあ当然僕は無理なので、後ろのほうに隠れた。

 だけど僕と同じ考えの人ばかりなので、みんなでじりじりと下がっていく。

 必然的に下がらなかった人が前に押し出される。


「いつの間にか前に出ちゃったんだけど……」


 ヒスイが前に出た。


「……分かったわよ」


 ヒスイは剣を構える。

 黒髪を揺らし、疾駆する。


「おぉ」


 スノウさんが素で驚いてる。


 ミノタウロスの剛腕を避け、ヒスイの剣がミノタウロスの背中に叩きつけられるが、少し食い込んで止まってしまう。


 剣を引き抜き後ろに跳ぶと、今までヒスイがいたところをミノタウロスの剛腕が振り抜いた。


「まじすげー」


 うん。同意。

 なんというか、戦っている姿が綺麗だ。

 パワーでゴリゴリいくタイプとは違う。

 本当に同学年とは思えない。


 再びヒスイが背後から剣を降り下ろすが、そこに横から剛腕が迫る。

 危ない!


「駄目だヒスイ!」


 ガキンッ

 金属同士を打ち付けたような音をだし、ミノタウロスの剛腕をスノウさんが地面に叩きつけた。

 剣が腕の半ばまで埋まっている。


 ヒスイは冷や汗をかいて後ずさった。

 気づいていなかったんだ。

 ヒスイがミノタウロスの死角から攻撃したように、ミノタウロスもヒスイの死角から攻撃したんだ。


 もしスノウさんがいなかったら……

 寒気が走った。


「ここからはスノウに任せてねー☆」


 言うと同時にとんでもない速さでスノウさんが動く。

 あっという間だった。

 全然見えなかったけど、スノウさんはミノタウロスの首を切って倒した。

 凄い量の血が吹き出る。

 遠くで見ているここまでとんできているのに、一番近くにいるはずのスノウさんには一滴もつかない。


「あなた、もうちょっと周りを見なきゃだめだぞ☆」


「……はい」


 ヒスイは重く頷いた。


「とはいえ、戦闘技術はとても高いね。スノウおどろいちゃったよ☆」


「……ありがとうございます」


 ヒスイの表情は晴れない。

 まあ当然か。もう少しで死ぬところだったんだから。


 それからしばらくヒスイは沈んでいた。

 励ましてあげようかな?

 ……駄目だ。僕にはそんな勇気はない。

 だけど、今励ましたらこれから仲良くなれるかもしれない。

 でも……恥ずかしいし……


 あ、他の男の子がヒスイの背中を優しくさすっている。

 ああ、出遅れた。

 でもヒスイは沈んだままだ。

 いや、普通に見せようとしてるんだろうけど、落ち込んでるのが丸わかりだ。

 あ、男の子が去っていった。

 気づかないのかな?まだ沈んだままだって。

 よし、今度は僕が声をかけよう。

 僕はヒスイに近寄り、声をかけた。


「落ち込むのはあとにしたら?ここはダンジョンなんだから、あれくらいで落ち込んでたらこの先やっていけないよ?」


 すると、ヒスイが僕を見た。

 氷点下な視線で僕を見る。


「あなた、真っ先に後ろへ逃げたわよね」


「そ、そうだけど」


 こ、怖いよぅ。


「女子が戦ってるのに、後ろでびくびく見ていた男子が、私になんの用かしら?」


 ちょっと逃げたい。

 いやー、ぐうの音も出ない。


「な、なんでもない、です」


 言うと、ヒスイは僕などいないかのように前を向いた。

 もしかして、好感度、落ちちゃった?

 はは、まさかね。

 励ましてあげたのに好感度が落ちるなんて、はは、そんな馬鹿な。



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