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閑話らしき話/オロチ

入試が近いので、暫く更新は控えさせていただきます。

 



 とある辺鄙な村に、僕は産まれた。

 貧乏な家で、碌な食事が貰えなかった。

 幼いとき両親が死に、僕は路頭に迷った。

 餓死寸前だった僕は、ごみ箱に入っている食べかすで空腹を誤魔化しながら、ふらふらと彷徨った。

 気が付くと、僕は薄暗い森にいた。


「グルゥゥゥ」


 僕の前には一匹の狼がいた。

 飢えていた僕は、狼を殺して食べた。

 その時の記憶はないけど、気が付いたら僕は血だらけで、目の前には骨と毛皮があった。

 腹を満たした僕は、周りに沢山の狼の気配があるのに気付いた。

 僕は近くの木に登り、木から木へと跳び移ることで狼から逃げた。

 数日かかった。

 虫はうじゃうゃいたので、食事にはあまり困らなかった。


 何年か経ち、僕は空気の揺れを感じることで外敵を察知できるようになっていた。

 僕は外敵から隠れながら、虫や小動物を食べて生活した。


 ある日、滝を見つけた。

 そこには、僕と同じくらいの年の男の子が上半身裸で目を瞑って滝に打たれていた。


「何を、しているの?」


 僕は話しかけた。

 数年ぶりの人間だったので興奮した。

 少年は、修行と答えた。

 ここは霊山という少し変わった山で、修行に向いているらしい。

 興味を持った僕は、修行に混ぜてほしいと言った。

 少年は快く受け入れてくれた。


「俺はシンラ。お前は?」


「僕はオロチ」


 僕達は互いに名乗った。

 そして、友達になった。


「オロチ、見てろよ?」


 ある日、シンラが僕に技を見せてくれた。

 滝に打たれているはずなのに、彼の周りだけ水が避けていく。


「周りの流れというか、気を意識して、自分の気を使ってそれをずらすんだよ」


 よく分からなかったけど、僕も修行すれば出来るようになると思うと興奮した。

 仙術というらしい。

 これがあれば、外敵から身を守ることが出来る。

 生きることに必死な僕は、死ぬ気で修行した。

 ある日、僕は突然それが出来るようになった。

 シンラは驚いたけど、オロチだからな、と変な納得をした。

 その日、僕とシンラは山の奥に潜った。

 そこには、見たこともないような化け物が沢山いた。

 僕達に気付いて襲いかかってきた一匹の化け物を二人で倒し、そこから逃げた。


「はぁ、はぁ、俺決めた。この霊山を征してやる」


「ん。僕も」


 僕達は笑う。


「絶対お前より先にこの霊山を征してやるからな。オロチ」


「それはこっちの台詞だ。シンラ」


 それから僕達は修行に戦闘訓練を取り入れた。

 互いにベクトルをずらし合い、先の先まで読み合い、波動を放ち合い。

 気が付くと、周りの殆どの木がへし折れていた。


 僕達は毎日霊山の奥に足を運び、化け物と戦った。

 競い合うようにして化け物を殺し、いつしかそこに化け物はいなくなった。


「もっともっと、奥へいこう」


「うん」


 更に奥へ進むと、僕達では手に負えないような怪物がひしめき合っていた。

 僕達は一目散に逃げた。


 数年後、僕達はその怪物を圧倒出来るほど強くなっていた。


「お前は一生、俺のライバルだ」


「君は一生、僕のライバルだ」


 僕達は霊山を征した。

 それでもまだ修行を続けた。

 シンラは流れを感知できる範囲を増やし続け、僕は全く別の仙術を修行した。

 徐々にシンラの方が強くなった。

 差はどんどん広がっていく。

 シンラは悲しそうだった。

 でも、僕もなんとなく感覚は掴めてきた。

 既に過去に魂を送ることには成功している。

 一気に追い付く日も遠くない。


 そんなある日。


「GAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!!!!」


 そいつは現れた。

 三つの頭に、六枚の翼。

 巨大な純白の竜だった。

 その竜を見て、シンラの様子がおかしくなった。


「アハ、アヒャヒャヒャ」


 その顔に浮かぶのは、恐怖だった。

 シンラが恐怖するのを、僕は初めて見た。

 対する僕は、もともと恐怖しかなかった。

 死にたくない一心で強くなった。

 だから、狂わずにすんだ。


「アヒャヒャヒャ………」


 シンラは仙術で空を飛び、竜へ向かっていく。

 今まで勝ち目のない戦いはしてこなかったシンラが、死ににいった。

 僕は驚いて動けなかった。


「GAAAAAAAAaaaaaaaaaa」


 一瞬だった。

 シンラは死んだ。

 運命なのだろう。

 少し過去に戻った程度じゃ、この未来は防げない。

 僕の行動も決まった。

 この竜は、必ず殺す。


「シンラァァァ!!!!!ああああああああ!!!!!」


 仙術を使って立ち向かった結果、一瞬で僕の半身が消し飛んだ。

 白い炎の奔流を、仙術でそらしきれなかった。

 ああ、僕はバカだ。

 だけど、後悔はしていない。

 これは僕の運命か。

 でも。


 残り数秒の命で、僕は見た。


 ―――数千の大軍を、剣一つで圧倒する者。

 ―――絶対的自然法則であるはずの、時間を操る者。

 ―――類稀な潜在能力で女神に選ばれ、圧倒的な能力を手にした者。


 これは修行の成果が出てきた証。

 今見えたのは、別の世界か。

 どういう訳か、僕は僕以外にもいるらしい。

 シンラに聞いたことがある。

 シンラはあの世界を、並行世界と呼んでいた。

 あればいいなぁ、と話していた彼に伝えたい。

 並行世界は存在していた。

 そして。


 ―――へたれな僕が、並行世界では最強だったらしい。


 だけど、次に見た光景は、想像を越えていた。


 全ての世界の僕が、目の前の竜と瓜二つの竜に殺された。

 この竜は、僕の運命の竜だとでもいうのか。

 シンラの弔いの為にも、僕はここで死ぬ訳にはいかない。

 僕はシンラの友達なんだ。

 僕は。


「仙人オロチとして告げる。違う世界で、僕はお前を叩きのめす」


 不思議と恐怖はなかった。

 ただ一心に希望を信じ、そして僕自身を信じる。

 さあ、復讐を始めよう。


「魂仙術―――【∞輪廻融合∞】」














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