夢か記憶か/雪夜 真広
「ふぁっふぁっふぁ!」
あー……。
誰?
「よくぞ我のもとまでたどり着いたな、下賤な人間共よ」
「君は多くの命を奪った。それをそのちっぽけな命一つで償わせるというのも癪ではあるけれど、仕方がない。僕の全てをもって、君の全てを斬り伏せる」
……今、俺が言った?
おっかしーなー。
口が勝手に動くんですけど……。
てか一人称違うし。
「ふぁっふぁっふぁ!魔王たる我に対して、よくもそのような大きな口をたたけるものだ」
あ分かった。
夢だな。うん。
魔王……。
てことは、俺って勇者の設定?
俺こんな願望があったのか。
「かかったな、人間」
かかった?
「そこはもう我の領域だ!」
教えてくれるとか親切だな。
その領域とやらからさっさと出よう。
……あれ?体が動かないぞ?
ぐちゃぐちゃ
うわー、なんかきもい触手みたいなのが地面からうじゃうじゃ出てきた。
「みんなは下がっていてくれ」
俺、なにする気?
なにこの日本語……。
「ですが剣聖様!」
「ルーク様が下がれと言っているのです!さっさと下がりなさいこのウ○コ共!」
「は、はいプリリア様……」
なんか可愛い女の子がウ○コとか言ってるし。
格好からして魔法使いだな。
ごっつい男共がへこへこ下がっていく。
………今決定打を撃ってこない魔王、親切だな。
「邪魔者はいなくなりました。さあ!イチャイチャしましょう♡!」
「えーっと、君も下がってくれないかな?」
「いいえ!こんな絶好の機会、逃しませんよ!姫様が見ていない今がチャンスなのです!」
「何を言っているのかよく分からないけど、少しの間でいいから、下がっていてくれないかい?」
は?何を言っているのか分からない?
え、馬鹿なの?
どう見てもこの子俺に惚れてんじゃん!
鈍感なの?!
「いいえここで下がる訳にはいかないんです!ええい!邪魔だこの触手!」
どういう原理か知らないけど、女の子……えっと、プリリア?が手を翳すと、迫ってくる触手が次々と燃えていく。
たぶん魔法だな。ファンタジーな世界だし。
「邪魔すんな!このウ○コ豚屑ド腐れウ○コ!チ○コもぐぞ!」
うわー、この子ちょっとアレな子なのかな……。
おっと、俺の体が勝手に動く。
何をする気だ!俺!
だからなんだこの日本語!
なぜか分からないけど、俺とプリリアを繋ぐように、触手がばっさりと切断された。
加速しすぎて景色が真っ白になったあと、目の前にプリリアの可愛い顔があった。
そして俺の指は、プリリアの顎をそっと持ち上げる。
指に心地よいさらさらの感触が。
そうそう、夢なのに感触があるんだよね。
「女の子がそんなはしたないことを言うのは感心しないね。あまりそんなことを言うようだと、僕がその唇を塞いでしまうよ?もちろん唇でね」
「ウ、ウ○コ………」
痒いー!!!
全身が痒いー!!!
どうしてかけない!
くそっ!体が自由に動かないんだった!
あーー!!
プリリアの顔がどんどん近くなっていくー!!!
「もちろん、冗談だよ」
プリリアの顔が離れていく。
しょぼん……。
くそっ!ヘタレか俺!
口を半開きにして突き出していたプリリアは、切なげに吐息をもらす。
「ふぁっふぁっふぁ………ふぁっふぁっふぁ!……ふぁっふぁっふぁ!!!我の前で………我の前でイチャイチャイチャイチャ………死ねぇ!!!!見せつけているのか!!!ああん?!!!」
あ、魔王がキレた。
「死ねえええ!!!」
い、隕石が降ってきた!おい!マジか!
「ふぅ」
おい!溜め息なんかついてる暇ないぞ!俺!
「どうやら君は、少々僕を侮っているようだね」
言うと同時に、景色が歪みだした。
いや、俺の周りの空間が歪んでいるのか?
まるで蜃気楼みたいになっている。
俺からなにか透明のオーラが出ている。
……気がついたら目の前に隕石があった。
地面が遠い……。
さすが夢。俺、飛んでる。
あ、駄目だ。俺の動きが速すぎて、もう景色がぐちゃぐちゃになっている。
全然なにが起きているのか分からない。
気がついたら隕石は粉々になっていた。
しかもその破片は全て魔王の方へ落ちていく。
景色が線になり、地上に戻る。
「ば、馬鹿な………」
魔王がうわ言のように呟いていた。
「あまり上ばかり気にしないほうが良いよ」
いつの間にか俺の体は、魔王の首を斬っていた。
血が勢いよく吹き出す。グロい。
やべぇ、吐きそう。吐けないけど。
てかそんな速いなら最初から魔王倒せたじゃん。めっちゃ隙だらけだったし。
なにぺちゃくちゃ喋ってんの?
「ルーク!」
綺麗な声だ。
「姫様?!」
姫様?
「ルーク!凄いわ!」
またこの声。
どこからだ?
「ちっ」
あ!プリリア今舌打ちした!
相手姫様でしょ?!そんな失礼な態度とって大丈夫?!
……目の前に甲冑の騎士が歩いてきた。
冑を脱ぐと、まあそれはそれは美しい顔が出てきた。
姫様だなーって感じの顔だ。
気のせいか?視界の端に薔薇の花とキラキラのエフェクトがかかってるような。
「姫様!どうしてこんな所に!」
「うふふ、ずっと見てたわ。あなただけを見てたわ、ルーク」
「ひ、姫様……」
あ、これキスするパターンだ。
今度はヘタるなよ?俺
「ルーク……」
「姫様……」
これはいけるぞ!
いけ!ぶちゅーっといけ!
「ルーク様………」
ごめんなプリリア、後でお前にもグヘヘ……
「ルー、ク」
「姫、様」
遅いな!さっさとせいや!
よし、もうちょっと。
この夢なぜか感触あるから、キスの感触とか味とかも分かるはず。グヘヘ
「ルーク」
「姫―――
ピピピピピッ!!
…………そんな。
「いいいぃぃやぁぁぁぁ!!!」
どどどどど!
どん!
「どうした真広!」
父さん………
「もうちょっとだったのに………ぐすん」
「真広………」
父さんは、優しい目になった。
そしてそのまま俺を抱きしめる。
髭痛い……
「そうか………エロい夢だったんだな…………そりゃあ、最後まで見たいよな。分かる。分かる……ぐすん」
と、父さん………
「俺も昨日、お気に入りのエロ本の中の人が夢に出てきてな?あとちょっとだったんだよ……ぐすん」
………父さん?
「しかも幼馴染み設定とか一番好きなやつじゃん!どうして………どうして最後まで見れないんだ!」
父さん………
「足の裏ぺろぺろしなさいって命令されて、嫌々だけど、体が勝手に動くんだ」
父さん………
………母さん、見てるよ?
「足の裏ぺろぺろなんて本当はしたくないんだ!はぁはぁ、本当だぞ?はぁはぁ、俺はそんな変態じゃない。はぁはぁ」
もうやめてーー!!
今確実に死に向かってるよ父さーーん!!
「はぁはぁ、はぁはぁ、足の裏――」
「あなた?」
びくっ!
父さんが可哀想なくらいびくっとした。
「この本、なんですか?なんだか肌色が多いですけど」
父さん………
終わったな………
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「雪夜?朝からどうした?怖いものでも見たのか?」
「あははは、なんのコトカナー?」
「めっちゃ震えてんだけど」
「いやー寒い寒い!寒いな今日は!」
「めっちゃ暑いだろ!お前やっぱ熱とかあんのか?!家に帰……おい!なんで逃げんだ雪夜!待てこら!」
「痛っ!」
「あ、ごめん」
「ふんっ、別にこんなの運命の出会いでもなんでもないんだからね!」
「え、ん………え?」




