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憧れの都会/ルーク/メリア

 目の前に広がる死屍累々。

 生き残ったのは僕一人。

 僕の軍。

 世界征服を成し遂げた、世界最強の軍。

 その一人一人が化け物のように、あるいは英雄のように強い。

 だから、信じられなかった。

 こんな。

 こんなに、いとも容易く、片手間のように――片手間ですらなく。

 僕の軍が壊滅するなんて。



 三つの頭に、六枚の翼を持つ純白のドラゴン――エンペラードラゴン。

 もしくは、覇皇竜。


 僕はこいつを倒さなくてはならない。

 どれだけあいつが強かろうと、どれだけ辛かろうとも。

 ――どんな犠牲を払おうとも。


『僕の軍』とか言っているが、僕は王ではない。

 魔王とか勇者とか、そんなんじゃない。


 まあ、ただの剣聖だ。

 剣聖ルーク。

 いわゆる世界最強の剣士をやっている。


 僕が剣聖になったのも、世界征服を果たしたのも、この竜に挑むのも、全ては、愛する人の為だ。

 愛する人を守るため。

 守り抜くため。

 愛する人というのは、僕の婚約者であり、主人であり、幼馴染みである、この国の王女のことだ。


 人々の剣聖としてではなく、ただ一人の騎士(ナイト)として。

 ただ愛のために、僕は戦う。


 まず手始めにブレアを剣にこめて、降りながら打ち出す。

 三日月状に放たれたブレアは、音速を越えてエンペラードラゴンに迫るが、当たる前に霧散した。

 なにか結界のようなものがあるのだろう。


 エンペラードラゴンが白銀のブレスを放ったので、僕は脚にブレアをこめ、音速を越えて駆け抜ける。

 衝撃波が周りのなにもかもを吹き飛ばす。


 エンペラードラゴンは上空にいるので、僕は大きく跳ぶ。

 勢いがなくなったが、空気を蹴ってさらに跳ぶ。


 結構近づいたので、ブレアを飛ばして結界の位置を掴む。

 ブレアが霧散したのはエンペラードラゴンから200メートルほど離れたところ。


 様々な角度からブレアを飛ばし、さらに正確な結界の位置を確かめる。

 頭部からは近いところで霧散したので、体表から一定の距離でないことは確かだ。

 結論として、体の中心から約250メートルの距離に結界が展開されていると分かった。


「GAAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」


 エンペラードラゴンの咆哮が、辺りを破壊する。

 その時僕はエンペラードラゴンの頭上にいたので無傷だ。


 さらに600メートルほど上り、重力の力も借りて加速する。

 空気抵抗が邪魔なので、ブレアで僕の通るところの空気だけ退けておく。

 真空の円筒の中で、僕は加速し続ける。


 剣にブレアが集まりすぎて、凄まじいほどに輝いている。


 音速を遥かに越えて、僕の剣とエンペラードラゴンの結界が衝突した。


 決着は一瞬。

 僕の剣が粉々に砕け散った。


 そして、僕の体は白銀の奔流に飲み込まれた。


 そう。僕は負けた。


 ▲▼▲▼



「それじゃあ、いっておいで、メリア」


「行ってくるよ、お父さん、お母さん、ミク」


「お兄ちゃん!行かないで!」


「しばらくはお別れになるね、ミク」


「お兄ちゃ~ん!」


「強くなっておいで、メリア」


 泣きついてくる僕の可愛い愛しい妹を両親がはがして、僕は王都に旅立つ。


 馬車には、十人の子供が乗っていた。

 他にも三台の馬車。

 付近の村の子供達で、王都の学校に通うことになる子達だ。

 僕と同じ制服を着ている。

 クリスが同じ馬車で、村の他の子達は他の馬車だ。


 馬車の男の子達の視線がクリスに集中する。

 うんうん分かる。綺麗だもんね。

 女の子達は、クリスを少し忌々しげに見ている。

 これはよく分からない。


 出発から数時間。

 馬車が遅れ始めた。


「こら!速く走れ!」


 鞭でびしばし叩かれて馬が可哀想だ。

 僕は絶対にあんなに叩かれたくない。

 あ、だけど、クリスになら……なんでもない。


 何時間かがたごと揺れて、やっと着いた。

 王立レイラント学園。

 大きな学校だ。


 憧れだった都会の学校。

 都会の子達はどんなかんじなんだろう?


 門番の人に生徒紋を見せて魔法写真と顔を確認されてから、中に入る。

 適当に歩いていて気づいたのは、女の子が可愛いことだ。

 みんなオシャレをしていて、クリス並に可愛い子もちらほらいた。

 凄すぎる……


 もうしばらく歩くと、男の子二人が剣を構えて向かい合っていた。

 剣といっても本物ではなく、安全な模擬剣だ。


「我ら『イリーナ様に罵られる為の会』は、断固として負ける訳にはいかない」


「貴様ら変態をイリーナ様に近づけさせる訳にはいかない。我ら『イリーナ様を眺めてはぁはぁする会』は、断固として負けない!」


「この変態!成敗してくれる!」


「この変態!ぶっ飛ばしてやる!」


「「「行け~!会長~!」」」


「「「あんな変態ぶっ飛ばせ~!」」」


 うわ!観客だいぶ多かった。

 多くの男の子達がこの決闘を囲んで応援している。

 僕はそそくさとその場を離れた。



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