噛ませ犬の予感/メリア+ルーク+零条 切夜+シヴァ+オロチ
「ふん」
鼻で笑われた。
まあ、男子は大体の子ががっちりしているけど、僕は体が細いから、当然のことだと思う。
「こんなやつがレイラント祭にでるのか?」
だが、笑われたのは、体が細いからだけではない。
この弱そうな見た目で、学年関係なく力を競う、危険な大会に出るからだ。
この大会の出場者は、生徒だけではない。
一応この学校が主催しているけど、一般参加型の大会なのだ。
レイラント祭に出場する生徒たちは、互いに牽制してぎすぎすしている。
他の生徒達がほがらかに会話しているのに、その一角だけ空気が重い。
「一応ね。多分予選で負けるけど」
「おめーみてーなひ弱は出んなよ。盛り上がんねーだろーが」
僕は愛想笑いでごまかす。
目の前で僕を見下しているがっちりした男子は、隣のクラスのなんとか君だ。
出場者の生徒を脅して回っているらしい。
ちなみに出場の際、仮装をしたり偽名を使ってもいいらしいので、僕は両方するつもりだ。
キーンコーンカーンコーン――
――さて、剣術の授業だ。
「取り敢えず防ぎまくれ。当たっても怪我はしないから安心しろ」
一方が攻め続け、一方が防ぎ続けるということを行っている。
僕は今、大柄の男子に攻められ続けている。
先生に言われる通り、両手で握ってやってる。
「はっはっはっ!」
いろんな角度から攻めてくる男子生徒の剣を、僕は全て斜めに当てて逸らす。
やりづらい。
両手持ちというのも、新鮮だ。
「くっ、この!」
相手は苛ついている。
他のみんなは真正面から受け止めているのに対して、僕は流しているので、力の勝負にならないのが悔しいのだろう。
体を相当鍛えているのか、一撃一撃が重い。
「なかなかに重い一撃だね」
「余裕こきやがって、くそっ!」
攻撃が単調に、なってくる。
力任せというのは、あまりいただけない。
「攻撃が単調になっているよ」
「ああ?!」
どうやら僕の言葉は彼の琴線に触れてしまったらしい。
攻撃がさらに単調になっていく。
「くそっ!なんだよその顔!」
どうやら僕の顔も彼の琴線に触れてしまったらしい。
そこはどうしようもないので、我満してほしいものだ。
「涼しい顔を、するなあああ!!」
思考を止めているようだ。
真っ赤な顔で力任せに攻撃してくる。
彼はまず、その短気な性格を直した方が良いだろう。
▲▼▲▼
……メリアくんって、あんなに強かったっけ?
メリア君の相手は、このクラスでヒスイさんの次に強いとされている、サイラスくんだ。
心配でちらちら見ていたけど、サイラスくんの攻撃が全然当たらない。
入学してきたときは、私と同じくこのクラスで最弱のレッテルを貼られてたんだけど………。
「次ー。相手を変えろー」
べヒント先生の指示でサイラスくんは攻撃を止める。
見るからにいらついている。
今までとメリアくんなら、そんなサイラスくんの視線にびくびくしていたのだろうけど、今では全く気にしていない。
あのダンジョンで、なにか心境の変化があったのだろう。
「エリルちゃん、やるかい?」
「やろうか」
メリアくんが話しかけてきた。
見てみると、他の子はみんなペアが出来ている。
サイラスくんの相手は、ヒスイさんだ。
どんなハイレベルな戦いになるんだろう?
「そんじゃ始めろー」
「じゃあ私から攻めるね」
「うん」
「やー!!」
私は精一杯攻めた。
だけど、メリアくんとやってみて、サイラスくんがイラつくのも分かった。
全然正面から受け止めてくれない。
受け止めてくれたら、その反動とかを使ってすぐに次の攻撃に移れるのだけど、全部流されるから、次の攻撃まで時間がかかる。
おそらく力には自信がないからだとおもうけど、普通こんなこと出来ないと思う。
今までへたれで最弱とされてきたけど、攻撃を逸らすこの独特な防御は、鉄壁だ。
メリアくんって、実は強い?