小さな町の雑貨屋さん その五
春、暖かくなる。
ポンニャンはカレンダーと別れて、冬を越した。
その後、命を宿した品は居らず、ポンニャンは静かに暮らした。
ノンとあきは、店を休ませて、外に行く。
ついでに、ポンニャンも連れていかれる。
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ノン 「桜はまだ先かな?」
あき 「もう少し、後ですよ。いいんですか?お店休んで」
ノン 「売り物の宅配は、早い時間にしたし、今日はお客さんは少ないよ」
僕たち、あきの持ってる籠の中にいる。
ボクたち、散歩と言うものに来ている。
カレンダーがいなくなってから……
ボクたちは、静かにノンとあきを見ていた。
ノン 「桜だな」
あき 「はい、桜です」
ノン 「そこのベンチに座ろう」
あき 「うん」
二人がすわる。
あきが、籠の中をのぞく。
あき 「はい、ポンニャン、日向ぼっこしてな」
ノン 「おいおい……」
あき 「少し、情が沸いてきて……」
ノン 「……まあ、いいか」
僕たちは、つかまれる。
ボクたち、お外に出る。
何だか、広い。
とおくまで、見える。
明るい。
うん。
たくさんの人間が、笑ってる。
楽しそう。
空は青い。
空は青い。
ノン 「二人で来る、公園もいいな」
あき 「……」
ノン 「まだ、少し寒いな」
あき 「……」
二人のおしゃべり、なんかへん。
あきが、さっきから、静かだよ。
あきが、ノンに近付いた。
距離がとても近い。
あき 「三人だよ」
ノン 「三人?……えーっ!」
あき 「はい!」
えっ、さんにん?
あれ、どうみてもふたりだよ?
??? 『新しい、命があるのよ』
へ?
だれ?
??? 『私かい、空を見上げごらん。青い空にあるまぶしい光を!」
まぶしい光だ。
あったかい。
??? 『私は太陽、みんなから、「お日様」と呼ばれている。私はね、毎日毎日みんなを見ている』
まいにち?
まいにち?
お日様『そうさ、たまに雲に休め!ってやられるけど、毎日毎日みてるのさ』
どうして、みてるの?
なぜ、みるの?
お日様『命あるものを、見ているんだよ。そして、たまに品に声をかける』
人間は?
人間には?
お日様『人間は、私の声が聞こえない』
どうして?
どうして?
お日様『さあね、わからない。だけど、ポンニャンの声はきこえる』
え?
ボクたちの名前、しってるの!
お日様『ああ、もちろん!』
ノン 「ほんと!」
あき 「結婚前にできた!」
ノン 「あき!」
あき 「キャー」
ノン、うれしそう
命が出来たから?
お日様『そうだね』
どうして、うれしいの?
どうして?
お日様『教えてほしいかい?』
うん、おしえて。
おしえて。
お日様『わかった!なぜ、うれしいか、教えてやろ』
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第六話
匂い
人間は、男と女が理解し合うと、一つになる。
一つになることで……
新たな、「命」をつくるのさ
「あっ!カレンダーの言葉」
「……そっか、生まれだ!」
おや、よく知ってるね。
あきは……いいえ、女は命を育てる。
育った命を、私達の住む場所にでることを……
生まれる
人間は、みんなそう呼んでいる。
「生まれると、人間はよろこぶの?」
「よろこぶの?」
ああ、大喜びさ!
「どうして?」
「どうして?」
新しい命には、男と女に似ているからさ。
そして、人間は、新たな命に……
匂い、を感じるのさ。
二人の匂いが、新たな命からプンプンと匂うのさ!
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におい。
ボクたちも、ある?
お日様『ああ、ポンニャンが生まれた時も、私にはプンプン匂った。
どんな命も、匂いはある』
ノン 「あき……」
あき 「ノンさん」
二人が引っ付いたまんま。
ほんと、ほんと。
お日様『ポンニャン、私の話はここまで。また、外に来るなら、話かけてね』
はーい。
ありがとう。
……お日様、死なないよね?
あっ……
お日様『アハハ、大丈夫!私はぜーったい、死にません!」
ほんと!
ほんと!
お日様『ほんとです!じゃ、またね!』
バイバーイ!
まったねー!
ノン 「しばらく、肩を寄せ合っていいか?」
あき 「はい……」
僕たちも、静かに外を見ていよう。
うん、ボクたちも見ていよう。