バスと託児所
町の託児所はたくさんのちびっ子がいる。
バスも幸洋と預けられたが……
幸洋を引き取りにきた時、母さんがバスをおいて行ってしまう。
土曜日には、迎えにくるのだが……
その少しの間の、バスと預けられたちびっ子の出来事をお話ししよう。
バス 『……わかりました。不束者ですが、がんばります!皆様、温かく見守って下さい』
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自分はバスであります。
今は自分は、託児所という場所に存在しています。
ハッキリ申し上げますと、母さんに忘れられました。
幸洋様、自分をお助け下さい!
保育士「バス君、土曜日に迎えが来ますから、それまではみんなと遊んでね!」
本当でありますか!
さすがは、幸洋様!
……さて、遊ぶとは?
そう言われて見ますと、幸洋様みたいなお方が多いような。
託児所とは一体なんでありましょうか?
利用者「すみません、今日もお願いします」
保育士A 「わかりました」
利用者「おしめ、ほ乳瓶……夕方来ますから」
保育士B 「お疲れ様です」
保育士A 「太田さん、大変だね」
保育士B 「できちゃた、そしてにげ……」
保育士A 「しーっ!」
保育士B 「すみません!」
保育士A 「ここに来る親は、理由持ちが多いの!ダメよ変な詮索は!」
保育士B 「はい、気をつけます」
理由持ち?
どんな理由なのでありますか?
ちびっ子「あうあうあう」
保育士A「雄馬君、いらっしゃい」
保育士B「あそこに、寝かせましょ」
保育士A「はい、まだ首がすわってまもないですね」
保育士B「……そうね」
雄馬様か。
どうやら、自分の近くに来そうであります。
保育士A「雄馬君、おネンネしようね」
自分の近くに来たであります。
本当に、近いであります。
何だか、幸洋様の匂いににているであります。
それでいて、全く違うでもあります。
おかしな感じであります。
雄馬 『おや?品がいつの間に、この場所に居るんだ?』
!
この感覚は、幸洋様と同じ!
これは!
雄馬 『へえー、お前は主人がいるんだ』
はい、幸洋様と言います。
聡明て賢いお方であります。
雄馬 『その幸洋には、母親がいるのか?』
はい!素晴らしい人間であります!
そして、父さんも素晴らしいであります。
雄馬 『……気に入らないな!』
気に入らないとは!
何故でありますか!
雄馬 『話そうか、俺のことを』
はい、お願いします。
雄馬 『……わかった。俺もいずれは人間の汚い時間に身を置くが……俺もそうなるのかな?』
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第三十話
神様と悪魔
俺の母さんは優しくて温かくて、俺にとって本当に神様だよ。
人間は何故か見えないモノを崇拝するけど、俺みたいな人間の時間に入り浸ってしまう前の存在にとって……
母親は神様だよ。
俺を時間の流れの中に、身を置くことを許してくれたんだから。
「そうでありますか。素晴らしい母さんでございます。自分の知ってる母さんも素晴らしい人間であります!そして、父さんも!」
……そうなんだ。
君……名前は?
「バスであります」
バス……か。
バス、俺の知っている父親、つまり父さんはな……母さんを捨てたんだ。もしくは、逃げた。
理由はわからない。
人間の理屈はわからない。
だけど、俺にとって父親は……
悪魔だ!
俺の父親はな、俺の時間を認めなかった。
「認めないとは?」
……母親に、迫ったんだ。
認めないと!これを……
堕ろす
と言うんだ。
「……」
でも、母さんは俺を守ってくれた。
俺を認めてくれた。
正直、俺を産んだことで、たくさん失ったらしい。
だけど……母さんは!
雄馬の瞳の輝きは、どんな宝石よりも綺麗に輝いている。
その瞳は、私の宝物……ありがとう。
いつも、泣くんだ。
そして、泣いた分だけ……
俺に優しくなるんだ。
涙と鼻水の顔は、俺が泣くよりも滑稽だけど何だか優しいんだ。
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雄馬様は、幸せでありますか?
雄馬 『俺は幸せだよ。ただ……』
ただ……なんでありますか?
雄馬 『母さんは幸せかは、わからない。不幸を消そうとして、無理をしているみたいで心配なんだ』
自分は、雄馬様の母さんを良く存じあげません。
しかし、今言えることは、いずれ千日が経ち品との時間が共有出来なくなったとしても、自分は雄馬様を雄馬の母さんを応援します!
応援しか出来ません。
ですが、応援します!
雄馬 『ありがとう……少し寝るよ。ちょっと、疲れたから……』
おやすみなさいです。
ここに来る、人間の千日にならない方々にはたくさんの想いがあるような気がして参りました。
自分……少しでもたくさんの、方々とお話したくなりました。
しばらくはここに居れるであります。
ここに居る間、少しでも知っておくであります。




