雪のふる時期
じいちゃんは退院をした。
具合がよくなった訳ではないが、自宅療養となった。
それといっしょに、ポンニャンとカッパも帰ってきた。
いま母さんは、ポン太の綻んだ場所を針と糸て治している。
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僕は母さんに何かをされている。
みんなとは離れて、母さんの手の中だ。
ニャン太は、クマとカッパの所だ。
母さん「ここにきて、何年かしら?良く出来てるわね。治している場所以外は、傷みがない」
治す?
僕、治されてる。
母さん「はい、治りました!ほら!」
あっ本当だ。
キレイになってる。
じいちゃん「母さん、今日は病院の日だ。すまんがタクシーの手配をしてくれないか?バスが雪で来れんらしい」
母さん 「お義父さん、私が送りますよ!」
じいちゃん「いや、みんなの迷惑はかけられん」
母さん 「そんな……」
じいちゃん「金ならある。時間もある。今は一人でいたいんじゃ」
母さん 「……わかりました、ポン太戻るよニャン太の場所に」
じいちゃん「履きやすい、スリッパじゃ!また貸してくれ」
母さん 「はい、わかりました」
母さんが僕をニャン太の所へ……
みんなの所へ、戻してくれた。
ただいま、ニャン太!
おかえりー、ポン太!
どう?
母さん、さすが!
クマ 『母さん、治してくれた!』
カッパ『さすがだ』
バス 『素晴らしいです』
じいちゃん「ふうー……」
母さん 「落ち込まない。さて、クルマ出しますね」
じいちゃん「かまわんで……ふう」
幸洋 「バース!」
母さん 「はい、バスよ!」
カッパ『がんばってこい!』
クマ 『……』
バス 『お仕事、全力を尽くします!』
バス、嬉しそう。
バス、変わった品だね。
うん。
面白いね……あります!だって。
母さん「幸洋も、今からドライブよ」
幸洋 「ドライブ、ドライブ」
じいちゃん「言葉になってきたな」
幸洋 「バース!バース!」
母さん「はい、バスもつれてくね」
じいちゃん「いいのか?」
母さん「はい、幸洋も外の景色見たいでしょうし、バスはお気に入りてわすから」
どうやら、バスは……
母さん、じいちゃんのお供だ。
クマ 『……』
カッパ『どうした?』
クマ 『いや、何でもない』
じいちゃん、なんだか細くなった。
うん、手遅れだからかな?
ニャン太!ばか!
ごめんなさい。
クマ 『そうかもな』
カッパ『おい!』
クマ 『俺は母さんから聞いた。今のじいちゃんの姿を、そして何をしているのか、何をしにいくのか』
えっ、じいちゃん何かをしにいくの。
クマ、知ってるの。
カッパ『教えてくれないか、今のじいちゃんを』
クマ 『……ああ、教えてるよ。母さんが俺に喋った内容を!』
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第二十六話
先延ばし
じいちゃんは、手術という治療をがんばったらしい。
「手術……」
「うん、がんばったね」
たくさん悪いヤツを取って取って、取りまくったんだって。
「……」
「だけど」
そうだ、気づいているか。
悪いヤツ……
全部は取れなかったんだ。
どうしても取れないのがあって、今それにじいちゃんは……
砂時計の砂をたくさん、落とされて入るんだ。
そして、これが人間が言う……
手遅れ!なんだ。
「どうして、取れないの?」
「取ったら良かったのに」
大切な所に、こびりついているんだ。
離れないくらいに、一つになってたって、母さんが言っていた。
だから、違うの治療をするんだ。
「違う?」
「どんな、治療なの」
クスリって言うのをするだ。
そして悪いヤツをやっつけるだけど……
この治療は……
辛いんだって。
辛くて、泣いちゃうんだって。
「それで良くなるの?」
「ううん、変わらないんだね。だから、母さんは……」
ニャン太、そうだ。
泣きながら……
クスリを使っても、治らない。
人間でいられる時間を少しだけ伸ばすだ……って泣いていたんだ。
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カッパ『今、じいちゃんが行こうとしているのは』
クマ 『治療だよ。辛い治療だ』
……
……
じいちゃん「では、行こうかの!がんばってくる!」
母さん 「はい、でも無理は禁物ですよ」
幸洋 「イクイク、ブー」
母さん「はい、行きましょう。バスは持った?」
幸洋 「バース!」
クマ 『……』
カッパ『どうした?バスになんかあのか?』
クマ 『いや、別に……』
じいちゃん……
がんばってね。




