小さな町の雑貨屋さん その二
雨の季節
今年の雨の季節は、遅かった。
いつもなら、暑くなる時期なのだが、今年はまだ雨が続く。
スリッパ……いや、ポン太とニャン太、カレンダーは店の中で相変わらずだった。
店長とバイトは、おしゃべり中だ。
バイトは近くに出来た、御飯をたべるお店のチラシを見ている。
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店長 「今年は空梅雨だな……と、思ったら」
バイト 「今日も雨ですね」
そらからおちてくる。
これは、「あめ」という。
カレンダーに。
おしえてもらった。
店長 「今年は、涼しい夏らしい」
バイト 「せっかく、水着を買ったのに」
店長 「誰と行くんだ!」
バイト 「女友達」
店長 「……そうだよな」
バイト 「?」
店長、なんだか。
おちこんでる。
どーして?
店長、バイトといきたいの?
カレンダー『ポンニャン、そうだよ』
あっ、カレンダー。
やあ、カレンダー。
カレンダー『人間は、一人で生きていけない』
だから店長おちこんでるの?
だから?
カレンダー『ああ、二人でいたいんだよ』
ふたり?
ふたり?
カレンダー『二人の話をしてあげよう』
うんして!
おねがいします。
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第三話
男と女、そして……
この世界、人間は二つに分けられる。
生きていくうえで、絶対必要な区別……
男と女
時間の流れの中で、人間はいつしか命を終える。
だけど、男と女の思いが一つになると、新たな命を与えられる。
与えられた命は、また時間の流れに身を任す。
「ウーン、わからない」
「むずかしい」
いずれ、わかるわ。
ポンニャン、いいかい?
店長……あの人間は、男よ。
バイト……あの人間は、女なの。
「おとこ、おんな」
「何か、少しちがうような」
そう、男と女は違う。
それは見かけはもちろん、中身も違う。
そんな男と女が、うまく理解しあい。
お互いをわかることで、ある感情が芽生える。
その感情を……
愛
そして、愛は与えられた命にも伝わるの。
「やっぱり、わかんない」
「ウーン……」
……少し、ポンニャンには早かったようだから、ここまでにしますね。
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店長 「明日は休みだな」
バイト 「そうですよ。それが?」
店長 「……別に」
おや、店長がへん。
なにか、言いたいみたい。
店長 「……なあ」
バイト 「はい?」
店長 「今晩……」
バイト 「今晩?」
店長 「……何でもない」
カレンダー『店長のいくじなし!』
どうしたのカレンダー!
何を怒ってるの?
カレンダー『よーし、ポンニャン、バイトのお腹の虫の力をかりよう!』
何をするの。
何をするの。
カレンダー『いたずらを、バイトのお腹に仕掛けるの』
どーする?
どーする?
あそこにある紙を、バイトの足元に落としてくれる?
あの紙?
あれ?
「そうそう、いい?」
はーい
はーい
…………紙、うごけぇ。
…………バイトの足の下。
《えーい》
バイト 「あれ?チラシが足元に落ちてきた」
店長 「ん?」
カレンダー『よし、バイトがしゃがんで……取った!
そーれ!』
バイト 『ぐーぅ(おなかのなるおと)』
店長 「……ん?」
バイト 「わっ、こ、こ、これは!別にお腹が……」
カレンダー『もう一度!そーれ!』
バイト 『ぐーぅ!』
店長 「……」
バイト 「……」
店長 「俺で良かったら、飯食いに行かないか?おごるぞ」
バイト 「……」
店長 「あっ、やま、やまや、やましいことは考えてないから」
バイト 「……たくさん、食べますから」
店長 「そっ、そっか!じゃあ、早く今日は店をしまおう」
カレンダー『ヤレヤレ』
ふたり、どうなったの?
男と女、どうなった?
カレンダー『うまくいきました』
そっか!
そっか!……あれ?
どうしたニャン太。
カレンダー少し黒くなったような……ポン太。
カレンダー『……いたずらしたからさ、少し傷みが出たんだ』
いたみ……
いたみ……
カレンダー『品の定めさ。さっ、今日もお話しましょう』
うん。
いっぱいしよう。
つづく