入院中
じいちゃんは、まだ入院中だ。
点滴台とポンニャンは、いつものように仕事中だった。
部屋の仲間の患者家族が、見舞いに来ているのたが……
一人の患者さんが、複雑な顔をしている。
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家族だ。
患者さんの家族だ。
患者C「嬉しいねぇ、僕、大きくなって」
僕 「じーちゃん!まだ、びょうき?」
患者C「もうすぐ、なおりますよ」
僕 「もーすぐ、もーすぐ」
幸洋よりも、大きいね。
子供……だね。
幸洋は?
赤ちゃん?かな。
患者B 「……」
じいちゃん「どうした?」
患者B 「……なんでもない。ちょっと、買い物いく」
じいちゃん「……」
患者D「アイツ、家族から愛想尽かされたんだ」
じいちゃん「……そうか」
愛想尽かされた?
キライになったの?
点滴台『そうだな』
どうして?
それは、あの人間に聞かないと……
じいちゃん「少し、休憩室に行く」
患者D「俺は、寝るわ!やぶ医者に検査で掻き回されたからな!」
『休憩室』
今日は、明るい時間に来た。
お日様……雲に隠れてる。
点滴台『お日様も忙しいからな』
お月様は?
お日様とは違うの?
点滴台『うん、仲はいいけど、すれ違ってる』
すれ違い?
すれ違い?
じいちゃん「やっぱり、ここか」
患者B 「何かようか?」
じいちゃん「少しいいか?」
患者B 「ふん!」
あまり良くないね。
一人にしてほしいみたい。
点滴台『ん?患者の座っている椅子の下!』
え?……あっ!
写真だ。
誰が写っているの?
お部屋のあの人間と……誰かいっぱい。
ニャン太、ひさびさのいたずらだ!
え?
じいちゃんに、気付いてもらおう。
なるほど!
点滴台『じいちゃんの目の高さまで、写真を舞上げれるかい?ただ、無理はするな!』
やってみる。
やってみよう。
…………
…………
《えーい》
じいちゃん「ん、なんじゃ!儂の目の前に……これは!」
患者B 「なんだ……あっ!返せ!」
うまくいった。
……ポン太、すこし綻びがある。
え!
傷んだよ。
……
……
点滴台『まったく、気を付けろよ!』
うん。
……
じいちゃん「若いお前さんと、息子達だな」
患者B 「それがどうした!」
じいちゃん「……いや、何でもない」
患者B 「……」
じいちゃん「……」
二人が、座っている。
ただ、座っている。
点滴台『……』
じいちゃん「儂は、永くはない」
患者B 「!」
じいちゃん「儂の直感だ。たが、外したことはない」
患者B 「それが?」
じいちゃん「早期手術らしい、儂も手術は覚悟していた。しかし、少し楽観視しすぎた」
感想B 「……」
じいちゃん「儂に毒を吐け!……それだけだ」
患者B 「……聞いてもらう!ただ、毒は吐けない。俺が悪いんだ」
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第二十一話
代償
儂には、たくさんの息子がいる。
……いや、いた。
「いた?過去形だな」
儂は若い時は、仕事と遊びに夢中だった。
子育ては、嫁の仕事だ!
そう思っていた。
「儂もじゃぞ!」
……儂の場合は、度をわきまえんかった。
運動会、保護者会、入学式、卒業式……子供の行事にはいっさい参加せんかった。
成績が悪い、部活動でレギュラーになれない、それを全て嫁の責任にして、子供にはお前が弛んでいるからだ!……取り付くことをしなかった。
「……」
そのくせ、儂は自分勝手に振る舞い、言い訳をしてはその場しのぎしていたんだな。
子供達がでかくなり、大人になった。
その時、嫁と息子達がおれに一枚の紙をつきつけた……
紙の名前は……察してくれ。
儂は、怒り狂った。
だれが、カネを稼いだ!
だれが、学校にやった!
その答えは……
お金はいりません。
その代わり、アナタが消えて下さい。
お金をかえしてほしいなら、今から少しずつアナタにお返しします。
だから……目の前から、消えて下さい。
「……」
その時、儂は気付かされた。
自分勝手に振る舞った代償が、降りかかってきたことをな。
そして、気付いた時は、手遅れだったことを……
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患者B 「儂は、人生を自分勝手に振る舞った。そして、人生の手遅れ……この代償を払わされた」
じいちゃん「許してはくれないのか?」
患者B 「ああ……じいさん、アンタは人生も病気も手遅れになるな!」
じいちゃん「人生はおかげ様で、順調……だと思う。病気は……わからん」
患者B 「儂は、生き続ける!憎まれたなら、とことん憎まれてやる!」
じいちゃん「あっ、それなら大丈夫!儂も憎まれるからな!」
患者B 「うんうん……スマンな、少し楽になった。さて、戻ろう」
じいちゃん「ああ、花のない湿気た連中の所へ」
患者B 「戻るとするか!」
点滴台『うまくいったな』
うん。
じいちゃんは、いい時間を過ごしていた。
それは、今からもだよ。
……
ニャン太?
ポン太、いたずらはほどほどだよ。
……
……




