小さな町の雑貨屋さん その一
できそこない、へんてこりん、町の雑貨屋にお世話になることになった。
他のスリッパは、大きなお店に行ったが、彼等は小さな雑貨屋に来ることになった。
季節は春の終わり、緑深くなる前……
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店長 「帰った」
バイト 「遅いです」
店長 「これでも、頑張ったんたぞ」
バイト 「じゃあ、なんで早く帰ってきたの?ゆっくり、くつろいでたのに……」
店長 「どっちだ」
僕たち、まっくらなところにいる。
ボクたち、どっかにきてる。
みんなは、あっちにいった。
ボクたちは、人間
とこっちにきた。
店長 「あっ、そうそう」
バイト 「なんです?おみやげ!」
店長 「後でな、こんなのもらった」
バイト 「アハハハ、なんですか?」
店長 「できそこない、へんてこりん」
バイト 「ちょっと、店長かわいそう」
店長 「工場のオヤジから、言われたんだ」
まっくらから、いきなり前がみえる
いろんなのが、いる。
おなじがない。
うん、みんなちがう。
バイト 「これだって、立派な売り物です」
店長 「売り物ね」
バイト 「それを、できそこない、へんてこりん、なんて!」
店長 「じゃあ、なんて名前にするんだ?」
バイト 「名前?私、付けていいの!」
まなえ?
まなえ?
??? 『君達の呼び方を付けるの』
あれ?
だーれ?
??? 『私?私は……』
店長 「そう言えば、今日、何日だ?」
バイト 「4月28日ですカレンダー見て下さい……なんて名前にしようかな?」
??? 『あらら……』
カレンダー?
カレンダーなの!
カレンダー『そう、私はカレンダー、人間
に日付を教えるの』
なんで、おしえるの?
なんで、おしえるの?
カレンダー『人間は時間と生きているからさ』
じかん?
じかん?
カレンダー『そして……それは私もだけど……』
おしえてよ
おしえてよ
カレンダー、人間をおしえてよ。
カレンダー、君をおしえてよ。
カレンダー『わかりました。私の知ってること、知ったことを……』
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第二話
時間
私と君達、そして人間、みんな時間と言う流れの中で生きているの。
「じかんのなか」
「どうして?」
生きてるからさ。
動く命をもつ人間も、動くことが出来ない品も、生きているの。
「生きている」
「じかん、生きている」
品も時間といっしょに生きている。
だけど……
人間よりも、永く生き続けて居られる。
つまり、時間といっしょに人を見ていられる。見続けられる。
だから、永遠なの。
「じゃあ、カレンダー、いっしょに生きよう」
「じかんとボクたちと、生きよう」
……そうね。
君達と生きていこう。
「わーい」
「わーい」
君達……
「なに?」
「どーしたの?」
……いいえ、何でもない。
ところで、能力について知ってるかい?
「しってるよ、いたずら、だよ」
「鏡に、おしえてもらった」
そうか!
それじゃ、使ったことは?
「ない」
「あまり、つかうなともいってた」
なるほど。
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店長 「それ、土産」
バイト 「わー、月見堂のチェリータルト!」
店長 「冷蔵庫に入れとくから」
バイト 「店長……好きぃ!」
店長 「バ……バカ」
てんちょう、へん!
さっきと、ちがうよ?
カレンダー『……なるほどね』
へ?
へ?
店長 「ただ……」
バイト 「ただ、何ですか?あっ、バイト代から引こうなんて考えてませんよね」
店長 「あ・り・ま・せ・ん!」
店長の顔、赤いよ。
なんで?
カレンダー『すこし、いたずら、しよう』
いたずらを?
いたずらするの?
カレンダー『ほら、あそこの「木のオモチャ」、落ちそうだ。あれを、落とそう』
うん。
おとそう。
鏡はいってたとおりに。
心におねがいを……
《えーい》
カラン……(オモチャの落ちる音)
あっ、できた!
あっ、おちた!
カレンダー『良くできました!傷みもなし!』
店長 「あれ、オモチャが落ちた」
バイト 「おかしいな?しっかり置きましたよ!」
カレンダー『今だ!えーい!』
……?
……?
バイト 「きゃ!」
店長 「おっと!大丈夫か?」
バイト 「ありがとうごさいます……きゃ!」
店長 「俺、コケそうなの、助けたのに……」
バイト 「それはそれ!これはこれです!」
バイトもあかい。
あかくなった。
カレンダー『私の仕事が出来たようね』
へ?
しごと?
なにそれ。
なになに?
カレンダー『また、今度、おしてあげる』