神社に行ったよ クマの試練
晩秋、銀杏の葉が石畳の上一面に、その姿をさらしている。
そこを母さんと父さんは歩いていた。
人気はない。
二人の貸切だ。
石畳を歩き終わり、神社の鳥居をくぐるとそこには大きな池があった。
その横には、小さな本殿がある。
本殿は靴を脱ぎ上がれるようになっている。
さて、ポンニャンとクマは今回、母さんと父さんのお供をしている。
母さんのカバンにポンニャンが、父さんがクマを抱きかかえているのだが……
あっそうそう、スマホもいた!
スマホ『オマケみたいに言うな!』
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父さん「いい、景色だ」
母さん「本当に」
きれいなお空。
お日様、いますか?
お日様『はい、いますよ』
クマ 『あっ、お、お日様、お久しぶりです!』
スマホ『お久しぶりで御座います』
どうした?クマ、スマホ。
クマもいつもとちがう。
クマ 『お、お前達、お日様を知らないのか』
お日様『クマ、硬いことは言わないの!』
スマホ『はい、お日様、さすがです。お心がひろい』
父さん「本殿に上がるんだな」
母さん「そうね。ポンニャンお仕事よ!」
カバンからつまみ出された。
お仕事、お仕事。
クマ 『……で、ポンニャンはなんかわかる。だけど、何で俺もんだ?』
スマホ『ここに置いてかれるんさじゃないか?』
クマ 『お前、いつもいい加減な!』
スマホ『怒らない怒らない』
父さん「本殿の裏側、池の見える場所……ここかな?」
母さん「ここね」
大きな水たまりの近いところ……
なにかがおいてある。
何だろ?
白い……ぬいぐるみ?
母さん「クマちゃん、少しお仕事よ!」
クマ 『へ?』
父さん「クマをしばらく、ここに置いておくんだな」
母さん「うん、そしてそれまでは、この子を持っているの」
父さん「白い……クマ?みたいなこれか?」
母さん「うん、カッパちゃんを持って帰るの!昨日神社の人にお願いしてたの!」
クマ 『……」
スマホ『スマン、めったなことを言ってしまって……そうなるとは思わんかったんじゃ!』
クマ 『うっ、うそだー!』
クマ、サヨナラなの?
クマとお別れなの?
お日様『……いいえ、ポンニャン達は別れませんよ。だけど、しばらくは……お別れですね』
クマ 『なっ、なんでー!』
スマホ『しばらくじゃ』
クマ 『しばらくって、いつまで?迎えは来るの?』
母さん「一週間後、またここに来るのよ」
父さん「面倒……クマにお別れしよう。こいつを置いておく」
クマ 『えー!』
母さん「ダメです!来週も来るの!」
父さん「はあー」
父さん、来るの?
父さん、来るみたい。
お日様『うん、来ますよ』
スマホ『来るんか……』
クマ 『スマホ……俺に恨みでもある?』
スマホ『いいや、どうしてじゃ?』
お日様『スマホ!いけません!』
スマホ『す、すみません!クマ、お前なら大丈夫!と思ったからじゃよ。理由はないが』
父さん「クマ、しばらくここに居な」
父さんが置いた。
しばらくの、お別れ。
クマ 『みんなー』
母さん「さて一週間、この子を預かるのね」
父さん「白いカッパだな」
母さん「うん、カッパちゃん!」
父さん「そろそろ、帰ろう。寒くなってきた」
母さんと父さんは、帰りはじめた。
クマ、がんばれー
クマ 『えーん、みんなー』
つづく




