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家族 じいちゃんが来たよ

 母さんと、父さんの住むアパートに、父さんの父さん……じいちゃんが来る。

 じいちゃんは父さんに、菖蒲池神社にお参りに行ってこいと話をしている。

 菖蒲池神社は、有名な子宝神社だ。

 じいちゃんは外行きの服に、帽子を脱いで近くに置いて、父さんと向き合って喋っていた。

───────────────────────

じいちゃん「なあ、息子、神頼みかも知れないが、一度行ってみるのもいいだろ!」

 父さん「神様に頼っても、いっしょだよ。第一そんなの迷信さ」


 なんの話?  

 かみだのみ?


 スマホ 『子供が出来ますように、神様にお願いに行けと言っとるんじゃ』


 あの人間ひとだれ?

 父さんになんかおこってる!


エアコン『じいちゃんだな。父さんの父さんだよ』


 父さんの父さん?

 ニャー?


 スマホ『おい、ニャン太!へんなの覚えたな!ニャーって!』

 クマ 『話がズレてる!……父さんに命をくれた人間ひとだ!ポンニャン』

 

 命をくれた。

 父さんをつくった人間ひと


 スマホ『まあ、その一人じゃな』


 ひとり?

 あっ、そうか!

 えっ?

 母さんとふたりで、だからだ。

 あっ、そうか。

 命はひとりでは、出来ないんだ。


エアコン『そのとおり!しかし、じいちゃん神頼みとはな』

 スマホ『それだけ心配なんじゃ!』

 

 かちゃ!(ドアの開く音)


 母さん「ただいま……あっ、お義父さん、すみません散らかった部屋で!」

じいちゃん「いやいや、ますます嫁さんはキレイじゃ!」

 母さん「まっ、お上手!」

 父さん「ハア……」


 クマ 『母さん、機嫌がいいぞ』

 スマホ『父さん、ガンバレー!』

 

 母さん「ところで、お義父さんどうなさったんですか?」

じいちゃん「実はな……」



 母さん「菖蒲池観音のあの神社へですか!」

 父さん「バカらしいだろ?神頼みだぞ」

じいちゃん「何を言う!あそこの御利益は、有名だぞ。菖蒲池の河童様を知らんのか!」

 

 

 かっぱさま?

 ごりやく?


エアコン『なるほど、じいさん、そこに行けと話に来たのか」

 クマ 『へーぇ』

 スマホ『河童ねぇ』


 父さん「オヤジ、朦朧したな」

じいちゃん「バカ言うな!ワシは一番良いと思ったことを、言っとるんだ!」

 

 じいちゃん、何にお願いするの。

 なんで、お願いするの。

 

 クマ 『人間ひとは、目に見えない力を信じる人間ひとがたまにいる。じいちゃんは、そんな人間ひとだな」

エアコン『……そうとは言えない……しかし、そうかも知れない』

 スマホ『わかるな……そんなもんじゃ』

 クマ 『?』


 よくわからない。

 ねえ、教えてよ。


 スマホ『今回は、ワシが教えてやるわい。この前の失敗を取り返すぞ!』


───────────────────────

 第十一話


 信仰


 答えを言えばな、人間は弱いんじゃ


 「よわい?」

 「よわい?」


 そうじゃ人間ひとは姿に見せないが、心は寂しい。

 だから!

 

 信仰をする。


 「しんこう?」

 「すっごく、わからない」


 人間ひとは目に見えないモノを、何故だか信じようとする。

 信じることで、心の寂しさを補う。  


 「でも、母さんと父さんは」

 「さみしくなさそうだよ」


 二人……じゃからな。 

 ポンニャン、人間ひとは一人になると寂しくなる。

 つまり、じいちゃんは……

 

 一人なんじゃろう……

  

───────────────────────

 父さん「母さんが死んでから朦朧したな」

 母さん「父さん!それはひどいです!」

 父さん「とにかく、俺の……俺達のことは大丈夫だよ」

じいちゃん「……朦朧した。朦朧したから、ワシのワガママを聞いて欲しい」

 父さん「……」

じいちゃん「確かに気休めかもしれん。気休めでもいい。頼む、願いを聞いてくれ」


 クマ 『なんだか、じいちゃん可哀想だな』

エアコン『心の支えを失ったんだ。だから、信仰しているな』

 スマホ『少し、じいちゃんの手伝いをしてやるか』

 

 いたずら?

 いたずら?


 クマ 『そう、いたずらする……で、どうするんだ』

エアコン『私がまた、父さんの夢に入る。それまでの準備だな』


 なるほど

 夢に入る、

 ニャン太は知らないだろうけど、実は……

 へーぇ、エアコンすごい!


エアコン『私の能力ちから)は、これしかないから』


 父さん「その帽子、まだ持っていたんた」

じいちゃん「お前が生まれてからすぐ後に、近くの店で買ったもんじゃ。しかし、今ではこの帽子にはワシと、ばあさんと、お前の想いがあるような気がしてな」

 父さん「……」


 スマホ『よし、あの帽子をいたずらしよう』

 クマ 『どうする?』

 スマホ『こうじゃ……』

 クマ 『なるほど!』

エアコン『いい、アイデアです』


 よし、やろう。

 うん、隠そう。


 母さん「父さん、私行きたい。御利益どうこうじゃなく、遊びに行こうよ。見てみたい」

 父さん「オイオイ……」

じいちゃん「おいとましたな、では帰るか……あれ?」

 父さん「どうした?」

じいちゃん「帽子がないんじゃ」

 父さん「え?」

じいちゃん「さっきまでここにあったハズなんじゃが……」

 母さん「探しましょう!」

 

 うまくいったよ。

 うんうん。

 あのタンスの上に……

 思い出の上に……


 クマ 『今だ、動かす!』



 《えーい》


 タンス(カン……音をさせる)


 母さん「キャー!」

 父さん「ん、なんだタンスが……」

じいちゃん「……おい、あんな所に帽子が……」

 父さん「え?……え!」

 母さん「本当だ」

 父さん「……」

じいちゃん「ん?……これは!タンスの上に、アルバムがある。これは?)

 母さん「結婚式から後の二人の、足跡です。ちょっと恥ずかしい言い方ですが」

じいちゃん「しばらく、見せてくれないか?」

 父さん「良いもんではないぞ」

じいちゃん「思い出は、良いも悪いも思い出じゃ」


エアコン『上手くいった。後は私が上手くする……て、ポン太!』


 え?


スマホ 『お主!鼻の辺りに汚れが出とる!』

 クマ 『少し使い過ぎたろ?』

エアコン『気をつけるたぞ!能力ちから)の傷みには』


 ……うん。

 大丈夫、ポン太。

 大丈夫、ニャン太。

 ……。


じいちゃん「良い思い出じゃ、ありがとう」

 父さん 「……」

 母さん 「ありがとうごさいます」


                 つづく

 




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