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家族 ミャアとニャン太

 アパートから飛び出した母さんは、近くの公園で泣いていた。

 悲しい時は、いつもブランコに揺られるのだ。

 一方、外に投げ出されたニャン太、助けてに来るのを待っていた。

 彼自身は全く動けないため、人間ひとには聞こえない声を叫ぶのだが……助けに来たのは……

───────────────────────

 母さん「父さんのバカ!」


 

 ボク、お外に投げられたー

 いやだー、誰か!

 

 お日様『ニャン太、大丈夫ですか?』


 あっ、お日様ぁ、ボクお外に……


 お日様『何があったかは知ってます。ニャン太、可愛いそう』


 お願いお日様ぁ、みんなの所へ戻してー!


 お日様『うーん……出来ない。ゴメンね』


 じゃ、じゃあボク!


 お日様『大丈夫よ、アナタは戻れるわ……あっ、雲が!あらら……』


 あれ、雲にお日様がかくれたー!

 お日様!

 いやだー!うわーん!


 ???『ニャーン、ニャーン……ん?なんだ?』


 ???


 ???『おい、そこの……なんだお前?』


 ボク?

 ボクはニャン太

 君は誰?ニャーン?……あっ、君は動いてる!


 ???『オレ?オレか!……オレはニャーゴだ。ネコと言う生き物だ』


 動いてる!

 人間ひと

 なんだか、ちがうような。


ニャーゴ『オレはネコ!人間ひとじゃあない!』

 

 ネコ?

 ……動いてる

 でも、ボクの声が聞こえる。

 

ニャーゴ『ネコは人間ひとの見えないモノが、見えるのさ』


 じゃあ、ボクの声もわかったの?


ニャーゴ『当たり前だ!あそこのアパートの、スリッパだろ!父さん良いヤツだぞ!オレにエサをくれるしさ!』


 えっ?ウソだ。  

 あの父さんが、良い人間ひと


ニャーゴ『ああ、良い人だ……で、お前どうしてこんな所にいるんだ?』


 えーん、実は……

 ……

 ……

 ……


ニャーゴ『なるほどな、わかった。母さんの居場所はわかる。

 連れて行ってやるよ!』


 ほんと!


ニャーゴ『ああ、父さんにはお世話になってるからさ!』


 ありがとー。


ニャーゴ『どういたしまして』


 あっ、噛まれた。

 

ニャーゴ『人間ひとみたいに、手がないからな。口で失礼!』


 ところで、父さん良い人間ひとなの? 


ニャーゴ『ああ、いつもぶっきらぼうだけど、本心は良い人間ひとだよ』


 ほんしん?


ニャーゴ『意味がわからないか?』


 うん、わからない。


ニャーゴ『教えてやるよ。人間ひとの心をな』

───────────────────────

 第十話

 本心


 人間ひとは、心の中をなかなか……見せない。

 だから、自分の大事な本心は、心の中に深くしまうのさ。

 

 「もし、心の中から、出てきたら?」


 相手を傷付ける。

 これが「いい」と思っても、伝えた相手にはそれが必ず「いい」とは思えないから。


 「父さん、さっき母さんにいったことは……」


 そうだ。

 全く「いい」と思わなかった。

 伝わらなかった。

 本心と言う言葉はな……


 相手を傷付けることが多いんだ。


 だから父さんは今まで、言えなかった。

 母さんを傷付けるから。


 「じゃあ、父さんはあきらめたんだ」


 ……人間ひとは不思議な生き物だ。

 

 「?」


 人間ひとは本心を相手に見せても……


 希望を抱く!


 「希望?」


 そうだ。

 希望とは幸せになりたいと、願うことさ。

 本心は本心で、悲しいことを思うが、悲しいから希望を見ようとするんだ。

───────────────────────

ニャーゴ『人間ひとは悲しいんだよ。悲しいから、笑ったり楽しんだりする。だけど、本心は悲しい』


 父さんは、本心をいったんだ。


ニャーゴ『そうだな。だけど、希望も必ず持っている……ほら、あそこに父さんと母さんがいる』


 あっ、いた!


ニャーゴ『公園のブランコにいるだろ』


 うん

 

 母さん「少し落ち着いた。そうだよね、私達頑張ってもダメなんだよね」

 父さん「……」

 母さん「でも、父さん好き!」

 父さん「……」

 

 父さんは、おしゃべりを聞いてる。

 しずかに聞いてる。

 父さんの顔が、やさしいよ


 父さん「俺が悪かった。さっき、結婚式の写真をみていた。

 無邪気に笑う母さんと、不安げな俺が映ったソレだった」

 母さん「あの頃は、希望に溢れていた。どんな未来があるのかって……私達の未来はいい未来だと思う」

 父さん「……うん」

 母さん「私は諦めない!」

 父さん「……わかった」

 母さん「夢は掴むもの!寝ている夢とは違う!……父さんの口癖ね!」

 父さん「それは、もういいよ……」


ニャーゴ『そろそろだな』


 母さん「ん?ニャーゴちゃん!……あら、ニャン太!」

 父さん「あっ、忘れた。俺、怒ってスリッパの片方を投げたんだ」

 母さん「えー!」

 父さん「まあまあ、ニャーゴ、お手柄だ。あとでにぼしを上げるから、公園で待ってな!」


 ボクは。母さんにつかまれている。

 父さんは、母さんの横にいて、いろいろなお話聞いていた。

 笑う母さんと、頭をたてにふる父さんが今はいる。



 あっ、ニャン太!

 ただいま、ポン太!


 クマ 『ありがとー、お日様』

エアコン『さすがは、お日様!』


 よかったお日様のおかげだ!

 お日様、雲にかくれてた。

 え?

 ニャーゴが助けてくれた。


 スマホ『なんと!あのドラネコが!』


 ネコ?

 うん、ニャーゴが母さん父さんのところに、つれてってくれた。


 スマホ『あやつ、やるな!』


 また、いっしょだね。

 うん、いっしょ!

 あっ、母さんが

 お仕事だ。

 僕たちもお仕事!

 いってきまーす。


───────────────────────

 お日様『ありがとう。ニャーゴ』

ニャーゴ『お日様、ネコ使いの荒い!』

 お日様『あの状況では、アナタしかお願いできなかったの』

ニャーゴ『まあ、いいよ!それじゃあ、またねー!』

                    

                   つづく

 



 


 


 

 

 


 



 

 


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