4話「雪結晶」
「ブラムドさんあれってスノウラビットですよね!? 私初めて見ましたがモコモコしてて可愛いですね」
「一目じゃモンスターだと思わない見た目だよな。でもあの角で刺されると結構痛いから気をつけろよ」
スノウラビットは全部で10匹いる、数は多いが角攻撃にさえ落ち着いて対処すれば問題ない。
まずはこちらに気付いていないうちにキツイ一撃をくらわせてやろう。
「範囲系魔法は覚えてるか?」
「は、はい! そこまで威力の高いのではないですけど……」
「削れれば十分さ、アストラが魔法を発動したら突っ込むから後ろから援護を頼む」
「わかりました」
いきますっ、そう口にしたアストラがスノウラビット相手に杖を向ける。
杖の先に嵌められた透明な石が、アストラの魔力が込められ鮮やかな緋色へと変化していく。
石が完全に染まった瞬間、周囲の酸素を喰らいつくすほど強大な火炎が渦を巻きながら杖から放出される。
異変に気付いたスノウラビット達がこちらを見るがもう遅い。
「ファイアトルネード!」
可愛いらしい声で魔法名が唱えられると、放出されていた炎の渦が勢いを強めながら対象の元に行き炎の竜巻を巻き起こす。
逃げる暇などなかったラビット達のほとんどが竜巻に飲み込まれ、HPバーの半分ほどまでを消し飛ばす。
竜巻が空中に霧散して消えると今度はブラムドの出番だ。
ボルバドには炎系モンスターから取れる灼熱石が素材として使われており、その攻撃には全て炎属性が付与される。
仄かに温かいそれを一匹のスノウラビットの角目掛けて力いっぱい振り下ろすと、その角は粉々に折れHPバーも残さず削り取る。
続けてもう一匹、更にもう一匹…… たてつづけに振られたハンマーとアストラの魔法によってあっという間に残り二匹になった。
しかし好戦的ではないスノウラビットは仲間がやられて勝てないと判断したのか一目散に逃げていく。
追撃しようとしたブラムドだったが、同じく追撃しようと駆けて来たアストラが雪に足をとられて転ぶのを見て気をとられてしまいスノウラビット達を逃がしてしまった。
「す、すいません私のせいで」
「気にしないでくれ、それより気を抜いちゃ駄目だ、来るぞ!」
「えっ……?」
注意されたアストラはブラムドが見ている方向を見るが、そこには逃げるウサギ達の姿しか見えなかった。
しかしいきなりウサギ達の体が宙に浮かび、何かが砕けるような音と共にその姿が粉になって消えていく。
「えっ、何ですかあれ!?」
事態が飲み込めていないアストラを庇う様に前に出る。
右手にボルバドを、左手に投擲用ナイフを二本指の間に挟んでスノウラビットを襲った何かの姿を探し目を凝らす。
「ハイドウルフだ! 体毛が白くて雪に紛れるから中々見えないがこっちに向かってきているはずだ!」
言い終わるや否や、ブラムドの目の前の雪が動きだしたかのように揺れる。
動いた辺りを広い範囲を攻撃するように横なぎするが当たった感触はない、攻撃をかわしたハイドウルフはブラムドの右腕に噛み付いてそのまま地面に引きずり込む。
攻撃した直後で抵抗することができず倒れこむブラムドだったが、桁外れの防御力を持つ防具のおかげでダメージはバーをわずかに減らすだけだった。
右腕は噛み付かれ動かすことが出来ないので、左手に持ったナイフを一本ハイドウルフに突き刺す。
「どけ!」
ハイドウルフに刺さったナイフは殺すにはわずかに足りなかったが、刺さり続けているナイフによって場所がわかるようになりそこをアストラの魔法が焼き払う。
しかし戦闘はまだ終わらない、逃げ出したスノウラビットが二匹いたようにハイドウルフも二匹いたようで、アストラの炎によってそのもう一匹はわずかに姿をみせる。
一直線にアストラに向かっているそれを見過ごすわけには行かず、残るもう一本のナイフを投げつけるがナイフは空を切りわずかにハイドウルフの動きを止めることしかできなかった。
「アストラっ、飛び込め!」
「は、はいいいい!」
横に大きく飛び込んだアストラは寸前のところでハイドウルフの噛みつきを避ける。
その間に体勢を立て直したブラムドはアストラが立っていた場所に向けてハンマーの初期スキル、インパクトショットを放つ。
振られたハンマーから白い衝撃波が打ち出され、その場にいたハイドウルフは一撃で砕け散っていった。
視界の端に取得経験地、ゴールド共にアイテム:雪結晶と表示される、ブラムドたちが求めていた素材だ。
レア素材だがいきなり落ちるとは幸先がいい。
「危なかったー…… でもこれでやっと一つ手に入りましたね!」
「ああ。それにしてもこれからはスノウラビットを逃がさないようにしような。一定確立で現れるハイドウルフがやっかいすぎる……」
「ですね。もうちょっとで私も噛み付かれてました」
アストラに怪我などさせるわけにはいかない、素材集めはまだまだ始まったばかりだ。
2人は次の標的を見つけるため雪の中を歩いていった。