行事「洋菓子で包まれた棒状の焼き菓子を使った遊戯」
注意!!
※この小説には一部百合的行為、表現が含まれています!苦手な方は即ブラウザバックしてください!!
今回は、一日遅れのポッキーゲーム、組み合わせは、阿弥陀くじの結果、澪と春花に決まりました。
気がついたら、一面真っ白だった。
「……………なんだこれ?」
周りを見渡すが、すべてが真っ白な壁に覆われていた。
「あ、澪〜。久し振り〜〜」
ふと懐かしい声が聞こえ、そんなはずはないと思いながらも声がした方を向くと……
「……春花じゃないか!!ったく、今まで何してたんだい!」
九尾の神……鈴風春花が、澪の記憶通りの姿でそこにいた。
「えーとね……、寝過ごしちゃった?」
「『寝過ごしちゃった』、じゃないよ!………はぁ、相変わらずだねぇ…」
「私はいつでも元気だよ!」
無い胸をはりながら、春花はそう主張する。
「そりゃあよかった」
旧友の変わらぬ姿に、澪も思わず微笑んだ。
「……で、ここはどこなんだい?」
「ん〜?私もわからないよ?」
春花の危機感のない答えに、思わず額に手をあてた。
「……はぁ…とりあえず…『ぶち壊すか』」
その単語と共に、澪の目つきが変わり、同時に、左右の拳に熱気と寒気が宿る。
「最初から全力で行くよ……拳符「貫手・穿大蛇」!!」
両手に大量の妖力を供給し、それを拳に纏わせる。
右手に熱気を、左手に寒気を纏い、一点集中された妖力は、温度を操る蛇となり、あらゆるものを穿つ。
しかし、
「っ!?硬っ!!」
最強の拳は、この壁に傷一つつけることができなかった。
「なっ………!」
そのとき、空から一枚の紙が落ちてきた。
「ん〜?澪ー!紙がおちてきたよー!」
ひらひらと落ちてきた紙を春花がつかみとり、中身を見ると……
「えーとね、『阿弥陀くじ様からの詔により、二人でポッキーゲームをするべし by作者』」
「またあのバカの思いつきか……!!」
あいつの勝手のせいで胃が痛くなりそうだよ、と呟く。
「ねえ澪、『ぽっきぃげぇむ』って、何?」
「あぁ、それはね…(さて、なんて説明しようかねぇ)…簡単に言えば、『ポッキー』と呼ばれるチョコレートでコーティングされた棒状の焼き菓子の両端を二人でくわえて、ポッキーを折らずに食べ進んでいく、なんていうのかね、一種の遊戯みたいなものだよ」
「へぇ…面白そう!澪!二人でやろうよ!」
『遊戯』、と言う単語に惹かれ、春花の目が輝く。
「……あたし達でかい?」
「うん!」
何処からともなく現れた机と、その上に山のごとく積まれたポッキー。
添えられた紙には、『折れてもいいようにたくさん買っといた。それがなくなってもまだまだあるから、安心してゴールインしてこい by神である作者』と書かれていたので思わず握りつぶしてしまったのは仕方が無い。
「何が神だ、むしろ紙じゃないか……。まあ、それはおいておくとして、本当にするのかい?」
「………ダメ?」
遠まわしに拒否したかったが、春花はすでにポッキーを持っており、なおかつ多少潤んだ目で澪をみた。
「……ふぅ」
そんな目をされたら断れないじゃないか、と嘆息するが、自分も少しはこんな状況を楽しんでいるのだなと思い、澪は苦笑した。
「じゃあ、やるか」
「本当!?やった〜!」
「まず、ポッキーの先をくわえな」
「ふぉう?」
澪の指示通り、春花はポッキーのチョコレートの部分をくわえた。
「そうそう、で、あたしが反対側をくわえるから、そしたら二人同時に食べすすめていくんだ。折らないよう気をつけるんだよ?」
「ふぁ〜い」
はむ、と澪も焼き菓子の部分をくわえる。
「ほれひゃあ、ひふよ?」
その言葉を合図に、二人同時に食べすすめる。
さく、パリ、ポリ、
澪が知るポッキーよりは長めに作られたポッキーは、二人の口によって順調にその長さを縮めていった。
ポリ、さく、パリ、
「(そういえば、こいつとここまで顔近づけたことってあまり無いよなぁ)」
美味しそうにポッキーを齧る春花、その顔を改めて見つめてみた。
喜びを表現しているのか、ピクピクと動く狐耳、その後ろでは、同じようにフラフラと九本の尻尾が揺れていた。
「(………やっぱ、綺麗だな)」
澪は春花にそういう感情を抱いたことはないが、それでも澪から見て春花は綺麗だった。
その美貌が、少しずつ自分に迫ってくる。
「〜〜♪」
そのまま食べ続け、互いの顔がさらに近づいた時、澪はこのゲームの終着点を思い出した。
このゲームは基本的にどちらかが離れることで終わりを迎えるが、もしどちらも離れなければ…………
「(…って、流石にそれはまずいでしょ!?別にしたところで物理的な問題はないけど、あたし達は別にそういう関係じゃないし!)」
そうして慌ててポッキーから口を離そうとするが、既に春花の顔は間近まで来ており……
途端、唇に柔らかくて温かい感触が触れ、そして……
ペロッ
「○☆□△×※!?!?」
最後に澪の舌と唇に春花の舌があたり、それぞれについていたチョコレートをチロチロと舐め取っていった。
「…ふぅ、美味しかったね!……って、澪?顔赤いけどどうしたの?」
澪から口を離した春花は、満足そうな表情を浮かべた。
「お、おま、おま、お前、今、く、くちが……!」
それに対して、澪は赤面し、口をパクパクと開閉させていた。
「??ただ唇がくっついちゃっただけだよね?それがどうしたの?」
春花は訳がわからないと言わんばかりに首を傾げた。
「そ、それに、し、舌まで……!!」
「?」
「あ、あたしの舌を……」
その時の感触を思い出したのか、さらに顔が赤くなって、思わず俯いてしまった。
「?私、なにかしちゃった?」
春花は訳がわからないと考えるが、結局答えは出なかった。
ので、
「ねえねえ、澪」
「………なんだい?」
ようやく顔から赤みが引いてきた澪が顔を上げると、
「ぽっきぃおいしかったから、もう一回やろう?」
春花は再びポッキーを手に持ち、そう言った。
しかも、あと何度繰り返すつもりなのか、もう片方の手には数本まとめて握られている。
どうやら、春花はポッキーを『ぽっきぃげぇむをする時しか食べられない特別なお菓子』と思っているようだ。
先ほどの時点で羞恥心は既に振り切れかけており、二度目には耐えられない。
「い、いや、あたしはもうこれで十分だから………」
そうして立ち去ろうとしたが、周りは依然として壊せぬ壁に囲まれていた。
「えー、もう一回だけ、ね?」
退路は断たれた、力押しではこの状況は抜けられない、いわゆる詰みの状態だ。
「か、勘弁しておくれよぉ……」
翌日、地底にて真っ白になり、「ポッキーはもうやめてくれぇ」とうわ言のようにつぶやく鬼山澪が発見された。
こういう類のものは初めて書きましたが、いかがでしたでしょうか?
ちなみに、春花も澪も百合ではありません。
春花に至っては、妙に精神が未熟な部分もあるので、そういうところの意味をよく理解していません。
それでは、感想、お待ちしてます。