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第一章  居合剣道 (2)

     第一章  居合剣道 (2)


 ・・くそ、かわせねえ・・

佐々木は竹刀で胴を守りながら大きく横へ飛ばされる様に転がっていた。


なんとか助かった様だと、起き上がりながら自分の竹刀を見て佐々木は愕然とした。


「おい佐々木の竹刀が折れてるぜ~」

「いったい何があったんや!、早くてわからんかったがな」

「なんで佐々木が転がってんだ~」


何が起こったのか訳がわからない、観客達は戸惑っていた。


審判が中断を示し、佐々木の竹刀を交換するように告げると、赤城は自分の位置へ戻りながら独り言を言っていた。


「やっぱりあの程度では決まらないか、さすが佐々木さんだ・・・」

でも赤城は、今猛烈に楽しくてたまらなかった。顔も普段見せない様な笑顔になっていた。


竹刀の交換を終え、再開しようと佐々木が位置に戻る。

 ・・赤城の野郎笑ってやがる、許せねえ・・


 はじめ!

審判の合図と同時に、赤城はいつもの様に腰を少し落とそうとした。その時電光石火で佐々木の突きが飛んで来た。


佐々木の突きは、引きも早く数回繰り込んで相手の体制を崩すのも得意としていた。

赤城も突きのかわし方は、普段から熟れてはいたが、佐々木の突きの速さは経験した事の無いものだった。


 ・・うわあ、さすがにこの突きはすごいや、だけど・・


赤城が関心しながらも、次の突きの後に竹刀を絡めながら、戻る佐々木の竹刀について行く様に相手の篭手へ竹刀が走った。

当たりはしなかったが、佐々木の動きを止めた。

しかしそれは一瞬で、佐々木も承知の上での事、さらに上段からの間髪無い打ちに代わっていた。


 ・・お前は、後の先で来るんだよな。ほらのってやるぜ・・


凄まじい攻防が続き、開始当初と同じ様にいつの間にか佐々木が誘い込まれるかたちとなる。

佐々木の正中を明らかに赤城が取り、一気に篭手へと竹刀を振った。


 ・・待ってたぜ、お前の後の先をさらに後の先でいただくぜ・・


佐々木はこれを狙っていた。篭手へ落ちてくる赤城の竹刀を見切り、今までに無いであろう速さで全体重を載せて、赤城の喉元へ突きを放った。


 ・・赤城の喉へ竹刀が突き刺さって行くのが、ハッキリと見えるぜ、貰った!・・


 胴あり! いっぽぉん!


「審判何言ってんだ! 今突きが決まっただろうが・・・」

しかし佐々木の手と竹刀には、何の感触もなく腹への痛みと、影の様な物が懐を抜けて行った感じが残っていた。


赤城がすでに自分の位置へ戻っているのを見ながら

「俺はお前の残像を突いただけなのか・・・」


 ワー ワー

 スゲーぞ赤城!  

 赤城!   赤城!


会場は赤城の勝利を讃える歓声が当分止まらなかった。



第二回高校三連強化大会 優勝は京都円明学園高校二年、赤城正太郎


表彰式の後、審査委員や高段者の先生方による組太刀や、居合演武、試し斬りが行われた。

赤城と森田も高校生代表で、試し斬りを披露していた。

特に赤城の、複数の敵を想定した巻き藁三本斬りには、生徒だけでなく大会役員等大人達も唸らせた。


とにかく今会は、赤城の凄さが目立つ大会で幕を閉じた。


因縁対決の結果は赤城に軍配が上がったが、しかしこの数ヵ月後には思いもよらぬ展開が待っていた。


次回「第2章 運命のはじまり」へ続く


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