麓の街 イールカ
久しぶりの投稿です。 不定期ですみません。
あれから、河を下ってもう1日野営をし、首都から3日目の夕方ごろに麓の街イールカに僕たちは、到着した。
なぜ麓の街というのかと、岩肌のごつごつとした不毛の山脈の麓にこの街があるからである。魔晶石の採れるロナウとは、この山脈を挟んだ反対に位置し、立ち並ぶ町並みは山脈から採れる石を使った建物が多い。
「よし、今日はこれで宿舎に着いたからあとは自由だ。明日は朝から任務だからしっかり休んどけよ!」
イクサスさんの号令のもと、兵士達が思い思いに街に繰り出していく。酒場に行くもの、夜の遊びに行くものさまざまだ。
「さて、自分はどうしようか」
自分は、イクサスさんとの2人部屋の自分のベットの上で1人つぶやいた。
イクサスさんは、さっそく街の警備詰所にいっちゃったし、他の人達も思いもいに出て行ってしまって宿舎にはいない。
「ご飯は、宿舎で食べるからいいんだけどなあ。暇だ」
旅といっても、路銀がなければ悲惨なものである・・(旅じゃなくて任務だけど・・)
「しょうがない、塩害対策の作物でも調べるか」
腕輪から台地の開拓の時に使った図鑑を取り出し、調べ始める。
調べる作物は耐塩性、つまり塩に強い作物だ。
極端にいえば、浜辺に生える植物は耐塩性の植物である。
「うーん、結構あるなあ。それにしても地球と同じ植物があるのが不思議だな。」
図鑑の中には、およそ地球にないような植物が載っているが、たまに同じ植物を発見する。
性質的に同じなら、そういう植物の中から選んだ方が活用法を含めて扱いやすい。
さらにその中から、乾燥にも強く食用になるものと加工原料になるものとを選んでいく。
幾つかに絞ったが、とりあえず3つほど書き出してみる。
まず、食用として”キヌア”。
(キヌアとは、アンデス地方の高地に生えるアカザ科の植物でイメージ的には、稗や粟といった感じの物である。実は粘り気のあるデンプン質で、小麦などに混ぜるとコシの強い生地ができる。古代インカ帝国では、穀物の母。NASAでは、21世紀の食物とも言われているらしい。)
次に、加工原料として"オカヒジキ”。
(オカヒジキ、名前の通り海草のヒジキに似ている。この草は古来より灰にして、ソーダ灰を作った経緯がある。ソーダ灰は、ガラスや製紙に利用される物質である。)
最後に、麻である。
ここアズールでも、麻は大麦の後に栽培されており一般的であるが、製紙原料としてより白く品種改良をして、大麻紙の作成を考えてみる。
(麻は、古来から日本でも栽培されている作物である。茎の周りの繊維は主に衣類になり、茎の中の白い綿状の部分を紙にする。解り易く言うと、ストローの外側が繊維で内側に綿状のものが詰まっている感じ。作物としての麻は、優れたもので土壌を豊かにし、枯れて落ちた葉は肥料になる。ヨーロッパでは、荒れ地の作物といわれているらしい。)
さて、メモ書きだからとりあえず日本語で書いておくか。そうすれば、第三者にはわからないだろうしな。
将来的には、農業省に提出用と農業関係の政治家に渡す用の二つを作る予定だ。
農業省用には、考えうる作物だけを載せる。
そして、政治家用には作物とそれを使った産業についてコメントを載せておく。
こうすることで、利権の調整は政治家自身にやらせ自分は、政治家とのコネができるだろうとの目論見だ。
色々と考えてみるが、うまくいくは解らないな。
明日は、パウロさんに同行してこのあたりの耕作地でも見せてもらおう。