船着き場をはなれて
今回は、短めです。秋のお月見にかけた話です。
◆首都郊外で◆
船着き場をでて船は、緩やかな河の流れに従って進んでいく。乗ってしばらくすると、街中の景色から広大な大麦畑に変わり、畑の端からは防砂林が連なるっているのが見える。(国土のほとんどがサバクのアズールといっても、河川沿いには何百年と掛けた森林が広がっている。)朝日が昇ってくると、大麦が光に照らされ小金色に染まり、風に揺られた大麦が波打つたびに、光の波がうごめいた。
「うあ、キレイだ。」
景色を見ていた僕はつぶやいた。
「そうだろう。コウタ」
いつのまにかとなりに、イクサスさんが来ていたようだ。
「はい、なんだか月夜に輝くススキを思いだしました。」
「ほう、ススキとは聞かないがどんなもんだ?」
思わず口にして、やばいとおもった。この世界にはススキないんだよねえ・・ また嘘を言わないといけないなあ、ちょっと気分が重くなる。
「えーと、ススキとはですねえ。師匠と住んでいたところにあった植物なんですが、葦に似た植物で秋になると穂がでるんです。それが月夜に照らせれて、銀色に光るんです。」
よく祖母と十五夜になるとお月見したなあ。祖母はお月見は、ススキの原っぱがいいといって、よく自分をつれていってくれたっけ。月見で月じゃなくて、月に照らされたススキを見に行くとこが、植物好きな祖母らしかった。そういえば女神に飛ばされて、こっち来て1年とちょっと。ただ忙しく過ごすようにして、地球のこと考え無いようにてたんだな自分。家族は元気にしてるだろうか。はぁ・・・、なんか寂しいや。
「なかなか凄そうだな。ススキはよく分からないが、とてもキレイなんだろう?」
イクサスさんが、僕をじっと見て聞いてくる。
「はい、まるで光の海の様というか、星の海の様な光景ですね。」
「そうか、それは素敵な思いでだな。なあコウタ、今こうしてみてる麦畑。これはこれで、きっとまた思い出に残るだろうよ。」
そういうと、イクサスさんはニカっと笑って僕の頭をなでてくれた。どうやら祖母とりわけ、地球の事を考えて黄昏ていたのを心配されたみたいだ。
「そうですね。これからもっと素晴らしい景色もあるだろうし。今日の麦畑も最高の思い出になります。」
イクサスさんが励ましてくれたのが嬉しくて、僕は笑ってかえした。
「そうか。まだ見て周るとこは沢山あるぞ。さて、朝飯だ。」
そういうと、イクサスさんがマメと干し肉の入った種なしパンのサンドイッチを渡してくれました。(平べったいこねて焼いたパン)
「はい、頂きます。」
僕も受け取って、みんなと一緒にたべる。朝日に輝く麦畑を見ながら、僕はこの世界で生きているんだと改めて実感する。どうせ生きるなら、思いっきり生きてやろうじゃないか。
船上では、焼き立てのパンの香が漂い賑やかなひと時が流れていった。
次回更新は、10/16日あたりになりそうです。 週一でとかいていたんですが、小説のストックができたら、早めでも載せていきたいとおもいます。
読んでくださってありがとうございます。