お金持ちになりたい (2)
読んでいただき、ありがとございます。9月終わりから、ほぼ毎日のペースで更新してきましたが、前章の大幅な改変のこともあり、丁寧に構文して載せていけるように、頑張りたいと思います。投稿ペースは、1週間に1回をめどにしていきたいともいますので、これからもよろしくおねがいします。
◆アズールの下町にある酒場にて◆
はい、コウタです。あれから数日後、さっそくイクサスさんに会いに行くと、これから仕事明けだからと酒場に連行されました。アビシャさんは、まだ仕事だそうで今回はイクサスさんだけです。
表通りをすぎ下町に入ったあたりに、お目当ての。”犬のしっぽ亭”はありました。日干しレンガで出来た小さな店です。さっそく中にはいると、店内はまだ昼間なので、人が少なく閑散としています。
2人して席に腰かけると、若い女性の店員さんが注文をとりにきました。
「俺は、とりあえずいつものを。コウタはどうする?」
初めての出会いから、数か月。その間に何度かワープポータルの警備任務で来ていたイクサスさんと任務明けに台地の上で飲むようになり、口調もだいぶ砕けた仲になりました。いまでは頼れる兄貴ってかんじです。
(地酒とエールは、任務に来るたびにイクサスさんが持参してくれました。)
「うーん、まだ昼間なので軽食をおねがいします。」
ゲームの中でいつもならエールを頼む所ですが、懐がさみしいのと、ちょっとここの地酒にはなじめないからです。ここアズールでお酒と言えばビールなんですよ。しかしこのビール、あの泡のでたシュワシュワとは程遠いのです。なんというか少しクセがあります。
以下簡単にアズール産ビールの説明をしたいと思います。
ここアズールは、外の国々から流れ入る河のデルタ地帯に都市と農地があります。その農地では主に、麻や大麦などが栽培されています。そんな関係で、エールよりも大麦をつかったビールが発達しました。
ビールの製造工程は、
①きれいに洗った上質な大麦を水につけ、発芽させます。
②それを粉砕して、こねてパンの形にします。
③次に、そのパンを焼きます。
(この工程の重要な個所で、このとき半生の状態で焼きます)
④焼いたパンをツボにちぎって入れ、お湯を入れてドロドロに溶かします。
⑤そこに、若草や薬草などを加えて煮沸させます。
(エッグワールドには、現代のビールに入れるホップがないので、若草などを入れて苦味をつけています。この時の若草は、酒のおつまみにもなります。)
⑥あとは、ふたをして隙間を粘土で密封して発酵させればできあがりです。
閑話休題
さて、ビールと軽食がきたところでイクサスが話しかけてきました。
「そういえば、今日はどんな用事だんだ?」
「うーん、アズールの各地の作物を見て回りたいんだけど。街道とはいえ、モンスターがでるでしょ。どうしようかと思って・・」
「ふーん、なんで急に見て回りたいって思ったんだ?」
「研究とお金の為にアズールを見て周りたいんだ。地域ごとの作物とかも調べてみたいし。」
「研究とお金ねえ。研究はともかく、コウタなら、土地を開拓してそれを転売すればいいんじゃないか?そんだけの実力あるんだろう?」
「うーん、そうなんだけどね。それをするには、水の確保が・・」
「水の確保って?コウタのとこにある、でっかいマメの木みたいの植えればいいじゃねか」
「そうなんだけど、あの種はもうないから・・ あそこで頑張らないと」
話しを聞いていると、おやっと思う方もいるかもしれませんね。僕には”千草の袋”という植物の種をとりだす袋がありますが、実はレア度の高い種は次に出せるまで時間がかかるのです・・ ゲーム時代の名残なんですが、あんまりホイホイとレア度の高いアイテムを市場に出さない為にそんな制約がついています。 ですが、どんなシステムにも抜け道があって、出した種を植えて種を増やせばいいんですよね。だけど、今回のビーノは水の確保の為に大きくするにあたって、実がならないように品種改良しておきました。だって、大きな豆が空からふってきたら危ないし、あとは勝手に種が落ちて増えたら台地がビーノだらけで住めなくなってしまうので。 そんなわけで、一から畑を耕すって案は却下なんですよ・・・
「そうか、そんなに上手くは行かないってことか」
「うん、それでイクサスさんに相談したんだけどさ。」
「なるほどな、それならちょうど各地を見て周れる機会があるぞ。」
「おお。どうするの?」
「ああ、ちょうど来月から南の都市”ロナウ”に行く予定なんだ。」
「ロナウってあの魔導機関に必要な鉱石を採ってる街?」
「そうだ。ロナウは、外から流れ入る河の最下流だ。今回は川沿いに下って河川の異常とかないか調べながらだけどな。その間の都市や作物とかならみれるぞ。」
※(アズールに流れる河は解り易く言うと、ピースマークの真ん中3本を右に倒した感じ。それぞれの河はアズールを取り巻く各国から流れはいっています。アズールの首都は、その3本の交差したデルタ地帯にあります。)
「任務に同行してもいいんですか?」
「ああ、俺から上の連中に頼んでみるよ。」
「ありがとう、イクサスさん。」
「まあ、大丈夫だと思うけど。礼は行けるようになってからにしてくれ」
「はい。それでもありがとです。」
うん、これで少しは可能性がでてきたなあ。行くまでに下準備しなくちゃ
「まあ、礼はいいとして。コウタ、飯食べろよ。」
そういうと、イクサスさんがテーブルに置いてあった川魚のフライの盛り合わせをつまみ、ほおばった。
「あああ、俺の飯!!」
「飯の時に、ぼーっとしてるお前が悪い。」
「ムキー!!」
でも、相談できる人がいるっていいな。こっちに来て友達も家族もいなかったからなあ。フライをつまんでテレ隠ししてるイクサスさんも、なんか嬉しいや。
コウタとイクサスの話し声は、まだまだ酒場に響く。
今日の昼飯は、異世界に来て以来コウタにとって、一番美味しいく感じたのであった。
ビールの作り方については、古代エジプトの物を載せさせていただきました。知識としては、あいまいなので興味のある方は調べてみてください。