湖のほとりで
普段のコウタの性格は、おおざっぱでマイペースですが、自身の危機?に瀕して隠れた一面が表にでてきます。 ドラ〇もんで言う、映画で活躍するの〇太ってとこでしょうか・・・・
はい、コウタです。最近自分の名前の前に腹〇いと形容詞が付きそうな気がする今日この頃です。
さて、今は樹の切り株を利用したテーブルを囲んで、イクサスさん達とお茶会という、腹の探り合い第2ラウンドに突入するところです。
◆湖のほとり・テーブルを囲んで話すコウタ達3人◆
まずは、タロウが席をすすめ話しかける。
「ささ、お茶でもと申しましたが生憎と茶器を持ち合わせておりません。ですので、水分の多い果物をご用意させていただきました。どうぞ召し上がってください。」
そういって、テーブルの上にハンザルを置きます。ハンザルとは、見た目がメロンの様な砂漠にあるスイカの原種の一つで、本来はとても苦くてラクダが通っても見向きもしない物です。しかし、このハンザルは僕が改良してあるので甘くなっています。
「やや、これはハンザルではありませんか?ご冗談もほどほどに・・・」
「・・・・・・」
アビシャは、声を荒げて眉を顰め、イクサスは黙ってしまい和やかなムードはぶち壊しです。
「ええ、ハンザルですよ。しかしながら、私が研究を重ねて品種改良をしたものです。甘いですよ。」
そう言うと、ハンザルを手にとり、まず自分が食してみせます。
ムシャムシャムシャムシャ・・・(コウタのハンザルを齧る音が響く)
それをイクサス達は信じられない様子で眺めている。ハンザルを完食すると改めて勧めてみた。
「河で冷やしておいたのでおいしいですよ。ささ、冷めないうちにどうぞ。」
しばらくすると、黙ったままだったイクサスがハンザルを手に取り齧った。
「!!!!!!」
一瞬、ワサビの入ったシュークリームを食べたような顔をすると ムシャムシャとかぶりつき始めた。それをみて、アビシャもハンザルに手にとって、食べ始める。
「!!!!!!」
こっちも、同じような顔をして驚いたようだが ムシャムシャと食べ始め、一人につき小玉スイカほどのハンザルを3つ用意してあったのだが、食べきってしまった。
「美味しかったですか^^?」
「ああ」
「美味しいですなあ。ホント驚きました。」
イクサスがうなずき、アビシャが感想を述べた
「いえいえ、お口に合ってよかったです。」
フフフフ、これで先制パンチは成功だ。これから先、話のイニシアチブは握れるだろう・・・
「それにしても、コウタ殿は凄腕の栽培師なのですね。お若いのに大したものですな。私達魔術師もあらかた知識の徒と自負しておりましたが、驚きです。」
「いえいえ、とんでもない。まだまだ若輩者ですので。過分な評価です。」
一応、謙遜を美徳とする日本人気質なため、謙遜しておく。
そこへ、アビシャとの会話にいままで寡黙だったイクサスが話しかけてくる。
「いや、大したものだ。これだけでも大陸中に名がしれる程のものだ。それだけの実力のあるあなたが、この国にいらしたのは、どのような用件かな。できればこの国に来た経緯をお聞かせ願いたい。」
こころなしか、イクサスの眼光が鋭く感じる。
「少し長くなりますが、宜しいでしょうか?」
「ああ、お話ください。」
「わかりました、でしたら私と師匠の生活からお話しを始めましょう」
うん、やっぱり思った通りだ。こちらが実力をしめせば、あとは国の脅威になるかならないか。利用できるか出来ないかを見極めるところだろう。ここまでは、想定内だ。うまく話を運んでいくためにもう少しだけ、作り話を話さないと。じゃあ、いっちょはなしますか。。
こうして、コウタは存在しない師匠との生活からこの台地に飛ばされる経緯をはなした。
◆コウタとイクサスのやり取り◆
「なるほど、コウタ殿は幼少のころに師匠の元へ引き取られたとのことですね。」
「ええ、師匠と両親が知り合いでして。両親の亡きあとに師匠が里親になって育ててくれました。」
「それで秘境に、師匠と暮らしていたと。」
「はい、物覚えする頃には師匠と暮らし、栽培師の修業をしておりました。ですが、師匠は私を拾ったときには、もう70歳を過ぎた高齢でした。」
「それで、その師匠が他界したあと師匠の意志を継ぐ為にアズールに向かったと」
「はい、その通りです。師匠はサバクの緑化を研究のテーマにしておりました。私もそれを引き継ぎたいと。」
「なるほど、お若いのに苦労してる。それに次いで、転移魔法具の故障でこの台地とは・・」
「はい、師匠が死ぬ間際にこの秘境から出るには、転移の魔法具を使いなさいと言われてまして。師匠の弔いと遺品の整理などを終えて、魔法具を使いました。その結果がこの台地ですが・・・・」
「いろいろと大変でしたなあ。いやあ、つらい事をお聞きして申し訳ない、これも職務がらで。」
「いえいえ、お勤めですから。それにしても、今度はこちらからお聞きしたいのですが。」
「なんなりと」
「実は秘境から出たことがなかったので、この大陸の国々については全然しりませんで。できたら、アズールだけでもお教え願えないでしょうか?」
「ええ、よろこんでお話ししよう。幸い、アビシャは歴史にも造詣が深いのでアビシャからお聞きください。」
「はい、ありがとうごいます。」
こうして、コウタとイクサス達の思惑が渦巻くお茶会は続く。
(コウタの性格がどんどん、腹黒くなっていくような・・・・)