(6) 其の少女は独りぼっちで。
其の少女は独りぼっちで。
「成功した・・・」
ピエロのお面の少女は嬉しそうにそう呟き、戸惑う優奈を一瞥すると、優しく話しかけた。
「私の名は、ユウ。ここは、君が先程まで居た世界とは全く別の世界なんだ」
「・・・?」
くまのぬいぐるみである優奈は、可愛らしく首を傾げた。
「別の・・・世界?」
口こそ動いてはないが、ぬいぐるみのどこからかそんな声が漏れる。
「そう。私は、君の精神をこの世界に召喚したんだ。肉体ごとこちらに持って来ることは今の私の力では出来ないからね。・・・君は、あちらの世界でとても退屈そうにしてたね。私にはそれが見えた。だから君をこちらの世界へ呼んだのだよ。
ここはとても楽しい場所・・・でも、私は独り。丁度、君に私の遊び相手になってもらおうとしたんだ」
ユウの話はあまり理解出来なかったが、優奈は今、自分が置かれている状況がどれ程不思議なもので刺激的なものかを考えた。感覚からして、夢というにはリアルすぎる。否、もしこれが夢だとしても、とても楽しげなものである。
「どうだい、いつも独りで寂しい思いをしているこの私と・・・一緒に遊んではくれないかい?」
優奈は辺りを見回す。円状の薄暗いこの部屋で、特にこれといって面白そうな物は見当たらない。しかし、どうやらここで遊ぶというわけでもなさそうだ。
「・・・喜んで!!私、北川優奈って言います。宜しく、ユウ」
「良かった。宜しく、優奈」
挨拶を終えると、優奈は其の短い手足を見つめ、ユウに問う。
「それにしても・・・私、どうしてこんな姿に?」
「ああ・・・君が召喚されたのは、精神・・・つまり、魂だけだって事は言ったね。精神だけの身体では、視る、聴く、浮上し、漂う・・・これだけの事しか出来ないんだ。ちゃんとした行動を起こすには、それが出来る肉体が必要となるんだよ。精神と肉体が神経によって結ばれ、そこで始めてちゃんとした身体が成立する。
君の其の身体の場合、本来の人間のものとは造りが違うね?しかし、私の魔術という力を持ってすれば、外見こそはただのぬいぐるみにしろ、人間ともあまり変わらない身体を造ることが出来たのだよ」
「・・・へぇ」
よく解らないユウの説明に、優奈は呆気にとられる。
まぁ、彼女が凄い人物である事は理解出来た。