表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の絆  作者: NANA
Ⅰ別世界
5/35

(5) 不思議な少女に出会った。

 不思議な少女に出会った。

(ん・・・あ、いけない、寝ちゃってた!!)

 優奈が目を覚ますと、辺りは既に薄暗く、全身に受ける風も冷たかった。

 風邪を引いてしまったのか、声を出そうにも出なかった。

(お母さん、心配してるかな)

 立ち上がろうとした優奈は、妙な違和感に襲われた。

 腕を立てようとしたのに、まるでその感覚がないのだ。それどころか、身体が勝手に浮上し・・・自分の姿が、何だかもやもやしている霧のような物体に視える。

(え、え・・・!?)

 優奈の身体は優奈の意思に関係なく、まるで何かに吸い寄せられているかの様に風に乗って森を駆ける。

 森を抜けて優奈の目に飛び込んできたのは、信じられない光景であった。あんなにびっしりと生えていた筈の草はその半分も無くなり、そこは荒地と化していたのだ。

「・・・!!」

 さらに、上を見上げると遠くの方には黒煙が立ち昇っている。

 状況が呑み込めぬまま、それでも優奈の身体は街の方向へと向かう。

 しかし、不意に優奈の動きを止めるものがあった。

「おや、ここに居たのだね」

 謎の声が優奈の前に立ちはだかり、そして優奈の視界は真っ暗になった。

「大丈夫、私の側に居れば」

 その声は、何だか誰かの声にそっくりで、優奈は少しだけ安心感を覚えた。

 それから、どのくらいの時間が経ったろう。相変わらず視界は真っ暗で、箱の中にでも入れられているのであろう優奈は、謎の人物に運ばれてと在る場所へと移動している様であった。

 扉の開く音、閉まる音。階段を降りる音。そして、揺れが収まると、

「これでいい」

 優奈は久々にその声を聞いた。よく考えると、それは自分の声にそっくりだということに優奈は気づく。

 不意に視界に光が射し込み、優奈は驚く。箱の中に入った自分を見下ろしているのは、漆黒の、腰まで届いている髪を携えた少女であった。彼女は不気味なピエロのお面で顔を覆い、全身にほどけかけの包帯を巻き付けている。とてつもなく動き難そうな格好である。

「ちょっと待ってて」

 彼女はそう言うと、すぐに優奈の目の前に可愛らしいくまのぬいぐるみを置いた。全長1mはあるだろうか。かなり大きめのサイズである。

「このぬいぐるみは、私が丹精込めて作ったものなんだ。その身体じゃ色々と不便だろう?新しい肉体をプレゼントしよう」

 ピエロのお面から、そんな言葉が漏れる。

「・・・?」

 意味も解らずただそのぬいぐるみを見つめていた優奈の身体は、再び勝手に浮上し始め、そのぬいぐるみ目がけて漂って行く。やがて、辺りが一瞬光ったかと思えば、優奈の精神はぬいぐるみの中に入っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ