(4) 滝が私を別世界へ連れて行く。
滝が私を別世界へ連れて行く。
しばらく歩くと辺りには背の高い木々が目立ち始め、地面に大きな影を落としている。
「ん~、森って感じ」
歩くにつれて少しずつ長さが伸びてゆく草に足をくすぐられ、行く手を阻む蜘蛛の巣に顔を顰める。それでも小川を辿り続けると、段々と川のせせらぎの音が大きくなっていくことに優奈は気づいた。
そうしてついに、音は轟音と言っても過言ではなさそうなものになる。
「滝・・・?」
優奈の予想通り、川は急に太くなり、そして大きな溜まり場に続いていた。上からは滝が立派に流れ落ちている。
「うわぁ~・・・!!」
このような大自然の光景を見ることは、優奈は殆ど無かった。こんな近くの森に滝が潜んでいたとは、考えた事も無かった。
木の葉の重なる隙間から、幾筋もの神秘的な木漏れ日が優奈を照らすその様も、何とも言えぬ幻想的な世界を創り出している。
「ここになら、ずっと居れそう・・・すごい気持ち良い・・・」
ふいに、頭上を一羽の小鳥がかすめた。
「あ、さっきの・・・」
鳥は優奈の周りを一周すると、滝が流れる崖を飛び、そしてその奥へと姿を消した。
「・・・でもいつかは、またあの退屈な世界へ戻らないといけないんだよね・・・。皆には心配かけたくないけど・・・はぁ~あ・・・」
優奈は草原でした時と同じ様に両手を広げて柔らかい土の上に寝転がる。
そしてそのまま目を瞑り、快い風を顔に受けながら、暖かい滝の子守唄を聞きながら、深い眠りに落ちた―