(3) 二人の少女の真実。
二人の少女の真実。
優奈の質問に対する壮一の答えはやたら長かったのでまとめると、向こうの世界での壮一は普通に高校生であったが、母親が少し魔術を使う事が出来た。ある日車に撥ねられそうになった壮一を、母親は精神だけでも生きてくれと別世界へ飛ばした。しかし現実は車が間一髪のところで壮一を避け、しかし精神が無くなった向こうの世界の壮一は意識が戻るわけもなく。飛ばされた壮一の精神は、元の世界へ帰る方法を知らない。たまたまこの世界での壮一の姿を発見し、乗り移ったのだという。以来こうして一つの肉体に共存していた。
ちなみに母親の血を受け継いで壮一も少しは魔力があるそうだが、本当に少ししか使えなかったため、金属で作った別の肉体に魂を切り離して入れる事は出来なかった。
「というわけだ。でも今やB73が居るからな」
満足げにそう言った。
「じゃあ、どちらから戻そうか」
「私から!!」
あれ程元の世界に戻りたくないと言っていた優奈が声を上げた。
「早く帰ってお母さんを安心させないとッ」
元気にそう言ったが、目には涙を滲ませている。
「優奈・・・・・・別れだね」
「うん。絶対にユウの事、忘れないよ」
ユウが目を閉じた。優奈の辺りが一瞬光り、精神だけとなった優奈の意識は次第に薄れゆき――
「ユウ、いや・・・・・・優奈。さようなら」
優奈はそう言い残して姿を消した。
驚いたのはユウである。
「どうして私の正体が分かったのだろうね」
言いながらピエロのお面を外す。現れたのは紛れもなく優奈の顔であった。
「私は、この世界の優奈。あの世界の私が、私の正体を知ってしまっては色々と面倒な事になると思ってね。名前と顔を偽っていたのだよ」
「ふぅん、こんな顔なんだ」
壮一が呟く。今まで彼女の顔を見た事はなかった。
「あいつ今までくまのぬいぐるみやら蝶やら人形やらの肉体の中に入っててさ、本当の人間の肉体持ってるとは思わなかったな」
瑠華は、壮一のその言葉に反応する。
「くまのぬいぐるみ?!それって、私の!?」
「ああ、そうだよ。お前がいつも連れまわしてたから中々思い通りに事が進まなかったみたいで、見ていて面白かったよ」
思い出し笑いをしながら壮一は言った。
「あ、ごめんなさい・・・・・・」
瑠華は顔を赤らめた。
「さぁ、そろそろ君も戻ろうか」
優奈が囁いた。
「おう」
「早くして下さい、優奈さん」
一つの口が交互に物を言う。
再び優奈が目を閉じ、辺りが一瞬光る。
(じゃあな、執事)
「お元気で」
二人が同時にそう言い、すぐに片方の壮一は姿を消した。
「・・・行ってしまったね、皆」
瑠華は少し悲しそうだ。
「瑠華、これからは君がこの国を造っていかなくっちゃ。お父さんが破壊したものは、娘である君が直す、そうだろ?」
「うん!」
瑠華の目に活気が宿る。
「さぁ行きましょう」
一流執事の壮一は、瑠華と優奈の背を押して優しく声をかけた。