(5) 封印、解放。
封印、解放。
常人では理解出来ないであろうその発言をユウは胸に染み込ませ、
「そうだったのかい・・・正直、もう君とは会えないものかと思っていたよ」
ホッと胸を撫で下ろした。
「どういう事・・・?」
「君はね、この世界では死んでしまったんだよ。魔術師の男が言っていたよ、蝶の肉体に乗り移った者を殺したってね」
つまりそれは、優奈が極秘書類を入れ替えたとしても結局は殺されていたという事だ。
「奇跡、だね・・・・・・」
小さな声で優奈が囁く。しかしユウは優しげに、それを訂正した。
「運命を変える力を、人は奇跡と云うのだろう?しかし奇跡は一つとして特別なモノじゃないんだよ。ほら、今この瞬間にだって誰にでも起こっているのだよ。何故なら、奇跡は偶然と偶然が結びついて起こった、ただの偶然なのだからね」
「うん、そうだね・・・」
優奈は素直に受け止めた。
「あの・・・お取り込み中失礼だけど・・・・・・」
先程から状況が掴めぬ瑠華は、不審な表情で二人を見つめる。そりゃ全身包帯少女と金属の人形が会話しているのだから無理もないだろう。
「ああ、先程は助けてくれてありがとう。私はユウだ」
「え・・・・・・瑠華です」
いきなりの自己紹介。ますますどうしていいのか判らない。
「瑠華、君は神山司の娘だね。君ならこの世界をいい方向へ導ける事だろう」
「ありがとう」
少し嬉しそうである。
「申し訳ないんだが・・・・・・私の包帯を、三分の二程解いてくれないか?」
そしていきなりの要望。
「いいわ」
瑠華は素直にユウの包帯を解く。
「おぉ、力がみなぎってくるよ、ありがとう」
何の力だ、突っ込みたい気分の瑠華。ユウは優奈に向き直り、
「さて、そろそろ優奈も元の世界へ帰らなければ。君には本当に感謝しているよ。きつい事を頼んでしまって悪かったね」
そう言った。
え、そんなあっさり?!