(3) 最後の作業。
最後の作業。
「さて、これから俺は最後の作業をするとしよう。これでB73の意思をコントロールする機械は完全に作動不能になるだろう。後は、そこからどうやって彼女を連れ出すか、だ。また収容室に戻されたんじゃ元も子もねぇからな」
壮一は難しそうな顔をしていたが、優奈は明るく言った。
「それなら私に任せて。ちょっと強引だけど、いい考えがあるの」
「それは良かった。・・・さぁ、お前が居ては気が散る。さっさと出て行け」
そんな言葉を吐く壮一は既にコンピューターの方を向いていた。
「ラジャー!」
優奈もスタスタと部屋を後にし、すぐ上の階にある瑠華の部屋へ向かう。しかし階段を上るのは何よりの難関であった。今度の優奈の肉体は、僅か30cmしかないのだ。空間を利用すれば人に見つかり難いし、扉なんかに挟まってしまっても金属だからめったな事では壊れはしないだろう。しかし羽が無いから飛べないし、自分の体重が身長の割に重くて困る。一段一段時間をかけて全ての段を上りきると、もうすぐそこは瑠華の部屋であった。
(変ね、外に警備の人が居ない・・・・・・あ、いつも壮一が居るんだっけ)
扉の前まで来た優奈は、扉に全身でアタックした。ガンッという音が辺りに響く。少しすると、何事かと瑠華が扉を開けた。その隙間から優奈は入る。
「壮一・・・・・・?」
瑠華はしばらく辺りを見渡し、自分の聞き間違いと思ったのか扉を閉めると先程まで読んでいたらしい本に目を落とすした。優奈は瑠華に見つかりにくい棚の上へよじ登り、その時を待った――
午後9:00。
真っ白な部屋には次第に黒い固まりが増え、辺りは異様な雰囲気に包まれる。神山司と白い少女が入って来ると、彼らの緊張はピークに達する。
「それでは只今より、作戦を実行する」
司の合図と共に、黒フードの一人がコンピューターの電源を入れた。