(2) 世界の難しい原理って。
世界の難しい原理って。
「ああ、B73の力では不可能ではないだろう。そして彼女は、能力を自らの意思で扱える最期の瞬間にお前をこの世界へ飛ばした――この世界は、お前がミッションを達成させた世界・・・つまり、後は俺のコンピューターの操作次第でこの世界が破滅する事はないだろう」
淡々と話を続ける壮一の言葉に、優奈はやや混乱気味であった。それを見かね、壮一は少し柔らかい口調で続けた。
「あのな・・・。世界は一つや二つしかないんじゃない。それこそ無限大にあるし、今この瞬間にだって信じられない数の世界が広がり続けている。そしてそれらの世界は、元は一つだったものなんだよ」
「ふ、ふぅん」
やはり理解出来ていない様子の優奈を冷たく見つめ(いや、もう説明だるくなってきたんだろう)、壮一は突然、飲み残ったコーヒーを全て床にこぼしてしまった。それも、態とである。
「どうやらお前に協力するようになって、俺の魔術の力が上がってきているらしい。つまり、こんな事も出来るってわけだ」
そう呟くと、壮一は目を閉じて呪文を唱え始めた。ユウの様にすぐにとはいかなかったが、優奈の周りは段々と暗くなり、やがて辺りが一瞬光って優奈が精神だけの身体となった時には、漆黒の暗闇は少しずつ明るくなり始めていた。
「ようこそ、別世界のお前」
意識が戻ると、優奈の目の前には先程と大して変わらぬ風景が――いや、一つだけ違っている事があった。壮一がこぼした筈のコーヒーが、床にではなくきちんとマグカップの中で温まっていたのだ。
(どういう事・・・?!)
壮一が差し出した金属の人形の中に優奈の精神が宿ると、壮一が素早く説明を始めた。
「今のは、B73使ったのと同じ、世界移動の魔術だ。・・・世界は元々一つ、これはつまりこういう事だ。
ある二つの橋があるとする。左の橋には向こうに金銀財宝が眠っており、そして右の橋には恐ろしい魔物が待ち構えている。左の橋を渡った者のこれからの人生と、右の橋を渡った者のこれからの人生は全く別のものになるだろうな。
同じ様に説明すると、俺に言われて、偽造した書類を入れ替える事の出来たお前と、それが出来ずに殺されてしまったお前。前者の辿る運命は世界を救って一件落着ってとこだろう。しかし、後者の場合は世界の破滅・・・。お前は後者だったが、どういうわけか前者の世界、つまりここへ来てしまったんだな。きっとB73の仕業だろう。もちろん、B73の力が働かずにここへ来る事の出来なかったお前もいる事だろうが・・・お前は幸運だったんだな」
一通り説明を聞き終えた優奈は目を輝かせ、
「スケールのでかい話ねぇ!」
とても感嘆している様子であった。が、
「・・・でも私がこの世界に来たのなら・・・この世界って、私がミッションを成功させた世界なんでしょ?だったらもう一人の私が居るんじゃない?」
とにかくそれが気になった。しかし壮一は面白そうに口を歪め、
「居るかもしれないな」
なんて言葉を漏らした。
「ただ、さっきの俺がやった世界移動は、向こうのお前とこっちのお前を入れ替えただけ、だから心配すんな」
一息吐いてコーヒーをすする壮一は、少ししてまた話し始める。
「世界はな、行動や言動はもちろん、その人の考えている事なんかでも・・・それこそ秒以下の単位の事なんかでどんどんどんどん広がっていってるんだ。だからこの世界は、お前が最初居た世界と全く違う様に見えて、経っている時間は全く一緒なんだ。未来なんて話じゃない。
お前の居た世界では、特に大きな革命なんてものもなく、お前は普通の高校生として生きていたのだろうよ。しかしここでは戦争の革命が起こってしまい、この有様・・・」
優奈はそこで、ある点に気付いた。
「高校生、て・・・。ここにも高校ってあるの?・・・ていうか、この世界の街並み、私の世界のものとそっくりだったわ」
「じゃあ、この世界はお前の世界と結構最近に分岐したものなんだろうよ。もしかしたら、この世界でのお前が生まれた後に戦争が起きたのかもしれないな」
「え!!この世界に、別の私が居る・・・・・・!?」
驚く優奈を壮一は冷たく突き放す。
「もしかしたら、の話だろ。街並みなんてそう簡単に変わるものじゃない。むしろこの世界のお前が居ない可能性の方が高いんじゃないか」
「・・・そうだよね、うん」
ここでやっと二人の会話に終止符が打たれた。
どうでもいいですが、実は今日(3月3日)ってこの物語の主人公、優奈の誕生日だったりします。
詳しくはまた後程出てくると思いますが。
HAPPYBIRTHDAY優奈♪