(6) 召喚と破滅、そして召喚。
召喚と破滅、そして召喚。
壮一は一人、黙々とコンピューターのキーボードを打ち続けていた。途切れる事なく指が奏でる独特の効果音は、部屋中に響き渡っていた。
3月1日、午前九時。
「只今より、作戦を実行する」
この国のトップ、神山司の声が静まり返ったその部屋に響くと、周りに居た黒フードの集団は、殺風景なその部屋にB73を連れ込んだ。その部屋は、壁も床も天井も全てが白く塗り潰され、中心に天井から吊るしてあるよく解らない機械の他、何も無かった。
黒フード達は、その機械の下にB73を置き、頭に機械で出来た重そうな帽子を被せた。
全ての準備が整うと、黒フードの一人が機械の電源を入れた。どういう原理かは説明出来ないのだが、ゆっくりとB73の全身に巻き付いた包帯が解かれてゆく。B73の力がみるみる覚醒してゆく・・・。
通常ならコンピューター制御のおかげでB73に一切の行動は出来ない様になっていたのだが、しかしB73は自分がたった今、自分の意思で魔術を使える様になっているのに気付いた。コンピューターの不調子か。とにかくB73の行動は早かった。
「天上に彷徨う別世界の私よ―我の元へ舞い降りて、その羽を再び羽ばたかせん・・・・・・」
そんな呪文を誰にも聞こえない様に呟く。目の前に霧の様な物体が出現した。
(・・・・・・ユウ・・・?!)
優奈であったことのあるその精神に、今の状況を理解する事はとても出来なかった。
「優奈、君はまだ死んでしまうわけにはいかない・・・苦しませてすまないね」
B73は、ユウは、静かに目を閉じた。すると優奈の周囲は、まるでユウが目を閉じたのと連動する様に、ゆっくりと暗くなっていった―
優奈の姿が消えたのを見届けると、包帯が全て解けてしまったユウの意識は薄れ、ユウの力は完全に解放された。
――そして世界は破滅した・・・・・・