(4) 世界を変える一台のコンピューターは。
世界を変える一台のコンピューターは。
「いいわ。じゃあまず、ユウの意思をコントロールするコンピューターがあるそうね。それを使えないようにしてくれる?」
「ああ任せろ。ただ、そいつが使い物にならなくなったら、B73の力は暴走し始めるぞ。何か考えでもあるんだろうな?」
「大丈夫、包帯もコンピューターで解くみたいだから」
優奈はニコッと笑う。
「少し時間がかかる・・・」
壮一は目にも止まらぬ速さでキーボードに指を叩きつける。画面上に、優奈には全く理解する事の出来ない文字の羅列が広がってゆく。
しばらくし、手を止めた壮一の手が若干震えている事に優奈は気付いた。画面には『error』の文字。
壮一はちッと舌打ちをし、呟いた。
「思ったよりもセキュリティが重い。これを解除するには・・・少なくとも12時間はかかる、か」
「そんなッ!!だって作戦の決行は、明日の午前九時だよ?」
時計を確認する。時刻は夜の十一時過ぎ。もう作戦の決行時間には間に合わない。
しかし壮一は冷静な態度であった。
「お前が見たその極秘の書類は、これだな?」
いつの間にか画面には、優奈が魔術研究室で見た、あの極秘の書類がそっくりそのまま展開していた。
「うん、確かにこれよ」
壮一は優奈の返答を聞く前に、見事にその内容の一部を変更していた。
『魔術による世界侵略作戦<極秘>』
使用する魔女:B73
特徴:包帯 ピエロの面
威力:推測・世界侵略を数分間で出来る程度。
また、特殊な包帯で全身を巻くと威力はほぼ皆無。
隔離場所:特殊能力者収容室(地下牢)
使い方:包帯をコンピューター制御で安全に解き、コンピューター制御で意思をコントロールする。設定した地域を選択し、決定ボタン(赤)を押す。
作戦決行日:3月1日午後九時┃
作戦決行日の、『午前九時』であったところが『"午後"九時』に変更されている。
「今からこれを紙にコピーするから、お前はそれと本物を入れ替えるんだ。俺は一眠りしてセキュリティ解除の作業に取り掛かる。長い戦いになるからな、寝ないと意識が持たない」
間も無くすると、壮一の手には一枚の紙が握られていた。偽造された極秘の書類。
「そんな、この身体じゃ持てっこないよ」
「いいや、そんな事は無い。持て」
壮一は無理やり、優奈の細い手に紙を握らせた。重みで落下すると思ったのだが、何故かその重みはあまり感じなかった。
「俺も実は、ちょっとした魔術が使えるんだ。・・・本当にちょっとしたものしか使えないが」
壮一は眠そうにそう呟くと、ふらふらとベッドの方へ向かい、そのまま倒れ込んでしまった。