(1) 謎の部屋には真実が。
謎の部屋には真実が。
優奈は地下室を出て、近くの通路先にあった基地内案内板を見つめる。二階に、『魔術研究室』なるものを見つけた。
「きっとここに、何かのヒントがあるはず・・・」
場所を脳内に刻み込み、なるべく天井付近を飛んで人に見つからないよう心がける。最初は危うかった羽の使い方も、今では自由に使いこなす事が出来ている。
蝶の身体は動きやすい。何より、その色が黒いので暗闇に紛れてしまえば誰の目にも止まる事は無かったし、狭い空間だってスイスイ通る事が出来た。しかし、その小さな肉体故、どうしようもない事も多々あった。例えば、今自分が置かれている状況がそうである。魔術研究室の前には到着したものの、その重い扉の向こうへ行く事は不可能であった。本来の人間の肉体でなら、ただドアノブを回して扉を引くだけでいいのだ。子供にんだって出来るそんな行動を起こせない自分に苛ついた。
扉の近くに身を潜めること約一時間。待ちくたびれた優奈の前に、ようやくその人物は現れた。黒いローブを身に纏い、フードを深く被っているためその顔は伺えない。女性か男性かの区別もつかぬその人物は、鍵の掛かっていないその扉を簡単に開けた。優奈はタイミングを見計らい、扉が閉まる寸前に中へ飛び込んだ。
その部屋は、何とも不気味なものであった。壁に所狭しと並んだ棚には、水晶だの髑髏だのが整理されて置いてある。床には大きな丸い模様の周りによく分からない文字が刻まれたものがある。よく漫画やアニメなんかで出てくる、魔方陣というものだろうか。
優奈はある机に向かって飛んで行った。何かの記録を記したファイルがたくさん重ねられている。そして、"それ"は机に広げられていた。
(『魔術による世界侵略作戦<極秘>』ですって。・・・極秘ファイルをこんなにも無用心に放置しておくなんて、敵対国もナメられたもんね・・・)
黒フードの人物は、別の机に向かって何か書き物をしている。今ならゆっくりと、その内容を拝見する事が出来そうだ。
その内容は、以下の通りであった。