(9) 最後の贈り物、それは・・・
最後の贈り物、それは・・・
「優奈・・・君に、この新しい肉体を授けよう。・・・私が、誰かのために使った・・・最後の魔術だ。私がこの部屋に入れられた時、力を完全に封印されてしまう前に、この蝶が舞い込んで来たんだ。私はその肉体を少し改良して、優奈の精神が入るのに都合良いようにしたんだよ。・・・おかしいね、私はずっと優奈を待っていたようだ」
「ユウ・・・ありがとう。確かにこの身体じゃ、基地を徘徊するのには向いてないしね」
ユウは、蝶が止まったその手を優奈に差し出し、言った。
「そのネックレスには・・・まだ僅かながらも、私の魔術が残っている。その最後の力を使って、優奈の精神をこの肉体に移し、ガラスをすり抜けて戻る事くらいは出来るだろう。ちょっとじっとしていてくれ」
「ん・・・」
優奈は言われた通りに大人しく、そのネックレスを見つめていた。
辺りが一瞬光り、精神だけの身体となった優奈は浮上しながら音をとるための穴をくぐり抜け、ユウの手先へと向かう。再び辺りが瞬き、気づいた時には優奈はユウの手先に止まっていた。
「さぁ、急いでガラスをすり抜けるんだッ」
ユウの切羽詰ったその声に押され、慣れない羽を不器用に羽ばたかせながら、優奈はガラス目がけて突っ込んだ。一瞬、水の中に入った時の様に視界が霞み、無音の空間に放り出される。もしこの瞬間にユウの魔術が切れでもしたら、優奈はこの空間に押しつぶされて死んでしまうのだろう。そんな恐怖が優奈の頭の中をかすめた時には、優奈は空中へ還っていた。
「優奈・・・頑張って・・・」
ユウはそこで意識を失ったのか、バサリと大きな音を立てて倒れた。
「ユウ・・・絶対に、助ける。約束だよ」
優奈が飛び立った後の部屋には、倒れ込んだユウと、少し大きめのくまのぬいぐるみが静かに寝転がっているだけとなった。
いよいよクライマックスです。
優奈とユウの関係が今明かされる・・・!!((笑