(8) 世界の破滅が迫ってる。
世界の破滅が迫ってる。
「えーと、ユウはどこに居るのかな・・・」
優奈は通路を必死に見回す。
そして、一際目立つ一つの入り口を発見した。上に、金色のプレートが設置されてある。見るとそこには、『特殊能力者収容室』という文字が彫られており、優奈は一目でこの中にユウが居ると直感した。
「ユウ?!」
入室するなり、大きな声でそう叫んだ。
――そこには、真っ白な少女が居た。
「え・・・!?」
近づいて確認すると、それは露出している肌の部分が手先ぐらいしかない程までに包帯で身体中をぐるぐる巻きにされたユウの姿であった。
「ユウ!?」
優奈のその声を聞いたユウは、動き難そうな足を動かし、ゆっくりと優奈へ近づいた。
「優奈・・・久しぶりだね。まさかここまで来てくれるとは思わなかったよ」
ピエロのお面から聞こえるその声は弱々しいものであったが、しかし優奈と再会出来て嬉しそうであった。
「どうして・・・そんな姿にッ?」
「・・・それはね、私の魔術を完全に封印するためなのだよ。今の私には・・・どんな小さな力だって使う事が出来ない・・・」
「そんな!!どうして!?」
優奈は辛そうに声を上げる。
「もちろん、私がここから逃げないためだよ。この包帯は特殊なものでね。どんな手を使ったって私に解く事は出来ないんだ・・・」
「・・・私が、その包帯を解いておけば良かったのに・・・そしたら、あいつらからも連行される事は無かったでしょうに・・・」
しかしユウは、首を悲しげに振った。
「いいや、私の力を完全に目覚めさせるわけにもいかないんだ。そうしたら、私のこの莫大な力は暴走し始め、私にだってコントロールが効かなくなってしまう・・・そう、それこそ世界を破滅しかねない。しかし、話の分からないこの基地の連中は、私を使って自分らの国を地球上のトップにしようと目論んでいるのだよ・・・」
「・・・その時、ユウの包帯を全て解くんだね」
優奈は何か良い方法はないかと必死に考えてはみたが、結局何も思いつかなかった。
「ユウ、すまないね・・・。君をこんな事に巻き込んでしまって。・・・・・・君はもうこの世界から、この運命から逃れる事は出来ないのだよ・・・」
不意に、ユウが辛そうに口を開いた。
「え・・・?」
「君の持っているそのネックレス、君の世界とこの世界を移動出来る力を持っているね。しかしそれは、私の力が無いと使う事は出来ないのだよ・・・」
つまりそれは、優奈がもう元の世界へ帰る事は出来ないという事だ。
しかしそれを聞いた優奈の反応はユウにとって意外なものであった。
「ううん、大丈夫だよそんなの。だってこれは、私が選んだ運命なんだから」
そう言って、にこりと微笑んだ。
「優奈・・・私は、君と出会えて本当に良かった・・・」
「私もよ、ユウ。でも私、まだ諦めてないから。絶対、ユウを、この世界を救うから!!」
その言葉に対するユウの返答は無かった。代わりにユウはゆっくりと部屋の隅へ移動すると、その場にしゃがみ込み、少しするとまた優奈の前に戻って来た。その手先には、何か黒いものが止まっていた。それは、神秘的なオーラを放つ、黒い蝶。