(6) 本当の友達が出来たその日。
本当の友達が出来たその日。
その日、瑠華の父親は別の基地へ向かったため、この基地にはトップが居なかった。
それをいい事に、瑠華は水谷家を誘って食事会を開いた。もちろん父親には内緒、周りに居る使用人達にも口止めをしておいた。
しかし、楽しい食事会の筈なのに水谷家の表情はつれない。
「どうしたの?」
瑠華が怪訝そうにそう尋ねた。
優奈はその光景を、一人のメイドの腕に抱かれながら見つめている。
「あの・・・お父さんは、まだ見つからないのですか?」
不意に、楓が俯いたままそう尋ね返した。瑠華は水谷家の気持ちを察し、つられて俯く。
「残念だけど・・・まだ見つかってはいないわ。ごめんなさいね」
しばらくの沈黙。その後、瑠華が静かに語りだした。
「私には・・・母親がいないの。お父さんしかいない。・・・そのお父様も、忙しすぎて私に構ってる余裕なんてなくて。・・・私には、あなたたちの気持ちが良く分かるわ」
「・・・だから、私たちを救ったの?」
楓にしては珍しく、強めの口調で瑠華に迫った。
しかし瑠華はすぐに首を振った。
「いいえ。・・・私、ずっと友達って存在が欲しかっただけなのよ。何でも気兼ねなく話せて、困った時や悩んでいる時には良い相談相手になってくれて・・・。私は昔から独りだったから・・・」
言いながら、彼女の視線は優奈に向けられる。
きっと彼女は、友達代わりとして優奈を嘘を吐いてでも手に入れたかったのだろう。でも今、彼女は本当の友達となりし者たちを見つけたのだ。
「お願い、私と友達になって・・・お願い・・・」
本来いつも頭を下げられてばかりの立場の者が、まだあまり知らない人たちに何度も頭を下げたのだ。周りが一瞬どよめく。
「ええ、もちろん」「いいよ♪」
楓と燐は優しげに瑠華に手を差し伸べる。
「ありがとう・・・」
瑠華は二人の手を順に握り、涙を一筋流した。
「改めて、自己紹介をしましょう。
神山瑠華、11歳よ。宜しく」
「水谷楓、17歳。こちらこそ」
「燐、9歳!!」
すると、周りから拍手の音が広がり始めた。使用人達は働く事も忘れ、この時を一緒に喜んだ。
「ふふ、良かったわね」
楓と燐の母親は、微笑ましげな目でこの三人を見つめていた。
喜ばしい事というのは続くもので、その時壮一が慌てて駆けつけて来て、こう言った。
「水谷様の父親が・・・地下牢に収容されていた事が判明しました!!まだ出す事は出来ませんが、面会なら出来ますよ」