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世界の絆  作者: NANA
Ⅲ出陣
13/35

(2) 私はただ無力だった。

 私はただ無力だった。

「ねぇ、この辺誰も居なくなっちゃったよ。まだ戦争を続ける気?」

 まだ10代前半であろう幼き少女は、金の髪を肩まで巻いて、頭には特大の真っ赤なリボンを付けている。彼女が話しかけているのは、立派な椅子に腰掛けた白髪混じりの男だ。

「あぁ、その通りだ。この辺の土地はお前にあげようか」

 男の言葉に、その少女は目を輝かせる。

「本当?瑠華るか、嬉しいッ。お父さんなら世界を手に入れれる・・・そうでしょ?」

「そうだよ。お父さんに任せなさい。瑠華の遊び場くらい、いくらでも増やす事が出来るんだ」

 男は満足げに、瑠華という、その少女の頭を撫でる。

「うん。・・・でも、瑠華、本当は・・・」

 瑠華は俯き加減にそう言いかけ、

「ううん、やっぱり何でもない」

 明るい笑顔を繕ってその場を後にした。

「旦那様・・・」

 先程までの一部始終を静かに見つめていた、ある男がふと声をかけた。

「む、何だね?」

「こちらのぬいぐるみが落ちてあったのですが・・・もしや、瑠華お嬢様の物では?」

 そう言い、持っていたくまのぬいぐるみを差し出した。

「うーむ、見た事はないな。だが、瑠華の物に間違いは無いだろう。戦車整備員よ、瑠華の部屋まで届けてくれ」

「はっ、了解しました」

 大きなくまのぬいぐるみを抱えたその戦車整備員の男は、一度瑠華の父親であるその人物に敬礼をすると、速やかに部屋を後にした。

(う~ん、困ったな。本当にここにユウは居るのかな?)

 優奈は男の腕の中、一人考えを巡らしていた。

「ええと、お嬢様の部屋は・・・」

 館内が広すぎるのか、この男の物覚えが悪いのか、不意に男は館内案内板の前で立ち止まった。優奈も何気なく目を向けたその案内板には、地下にそこだけ場所名が記されてない場所を見つけた。

(牢屋に違いないッ!!)

 優奈はそう直感し、そこにユウが居る可能性を信じた。

(ユウ、もうすぐ助けに行くから・・・)

「ここを曲がって直ぐか」

 男は再び歩み始めた。

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