(3) 定められた運命に抗う小鳥の夢は儚くて。
定められた運命に抗う小鳥の夢は儚くて。
「戦争・・・!?」
「私はずっと独りだった・・・。そして、私はこれから幸せになる事は無いんだよ。その事を、私は受け入れなければならない。だからせめて、最後に自分の幸せな表情を見たかったんだ。おかげで君を傷つけてしまった・・・すまない」
ユウは突然話を変えたかと思うと、まるで自分に言い聞かせるかのように、静かにそう言った。
「・・・?」
優奈はその時、ユウが言いたい事がまるで解らなかった。
「もうじき私は自らの手で世界を破滅に追い込む事になるのだろうね。少しでも君と居られて良かったよ・・・」
「え・・・」
丁度その時、物凄い轟音と共に地が揺れた。
「!?」
窓から外を確認すると、優奈の世界のものとは比べ物にならない程大きな、戦車の様な物が外にあった。
「来た・・・」
ユウは包帯の内から、一羽の小鳥をモチーフとしたネックレスを取り出し、それを優奈の首へ掛けた。
「これは、二つの肉体を精神で移動する事の出来るアイテムだ。君がこれに向かって元の世界へ戻りたいと念じれば、帰る事が出来る。さぁ、早くこの世界から脱出して」
しかし優奈は首を縦には動かさなかった。
「ううん、ユウを見捨ててなんていけないよ・・・何があっても、私はユウの事を助けるから・・・」
優奈はその時、これから何が起こるのかは分かっていなかったが、何か大きな事にユウが巻き込まれてしまうと直感していた。
「ありがとう、優奈は優しいね・・・」
「・・・」
優奈がユウに何を言おうか迷っていると、ドアが物凄い音を立てて破壊された。ユウの魔術を持ってしても防ぐ事は出来なかったようだ。
「魔女は居るか!?隠れてないで出て来い!!こちらには魔術は一切効かない!!」
低い男の声が二人の耳に届いた。
「さようなら、優奈・・・私には抵抗する力が無いんだ・・・死ぬ事も許されない・・・」
「え、ちょ、どういう事!?」
しかしユウは二度と優奈を振り返る事は無かった。
「私ならここだ。さぁ、私の手で世界を終わらせてしまおうではないか」
扉の前で待機する男へと声をかける。
「ふん、抵抗しないとは賢明な判断だな。大人しく我々に付いて来てもらおうか」
優奈の見えない場所でユウは謎の集団に連行され、再び轟音が辺りを支配する。
「・・・」
優奈は一人、どうして良いのか判らずにしばらく自分の首に掛かったネックレスを見つめていた。
「何か・・・凄い事に巻き込まれた様な・・・」
大きな黒い影がまるで優奈から逃げるかの様に、轟音を立てながら、地を揺らしながら遠ざかって行く。
「取り合えず・・・このままじゃどうにもならないし。元の世界に帰るべきか・・・」
優奈はネックレスを握り、目を閉じた。
「どうか・・・私を、元の世界に・・・」
優奈の想いが通じたのか、ネックレスの力により優奈の意識は除々に薄れてゆく。