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第9節 ドラゴントラブル

結局、いろいろぐだぐだ悩んだ挙句。

一緒に付いて行くことを決めた。

こっちの世界での始めての友人なので、安全な場所まで送り届けてあげたいという心配と、今の何も知らない自分の状況的に知り合いから離れるのはいささか心細いものがあったからだ。

いや、いささかというか、かなりの心細さだけれど。

寝る前に悶々と考えて分かったことといえば、彼女の振る舞いが心の癒しになっていたこともあり多少の依存心ないしは甘えが出ていたのでは?と考え、いつまでも頼っていてはこの世界で生きていけないと結論付けて一旦、距離を置こう。

・・・とも思ったよ。

思ったんだよ。

思ったんだけど、それが無くなったときの事を思うとそれだけで胸の奥がチリッとする。

その「チリッ」がまた、不愉快で好きでなくて、イラついて、なんとなく不安で、何に対してというまでも無く焦燥に駆られて。


一言で言うなら嫌なのだ。

こんな気持ちになるのは初めてで、きっと心細いからだと自分の気持ちに折り合いを付けて眠る。



一晩たった今日。

ベリルに「なんとなく一緒にいたいからついていくよ。」といったところ。


「ふむ。

やっぱり駄目か。

まぁいいや。

なんども言うようだけど監視されても文句言わないでね?」

「もちろん。」


なんどもそう言われると暗に「ついてくんな」と言われてる様に聞こえたが、少なくともそのニュアンスは無いように思える。

「やっぱり駄目か」の部分は良く分からなかったのでスルー。

結論を言うと、僕の目的地は東大陸となったわけだ。


もともとの目的はお金を稼ぐことだったと思うのだがいつの間にやら紆余曲折したものだ。

ま、たのしいからいいんだけど。

何より姉さんがいない日常が良い!

最初こそボロボロだったが、そのことに観点をおいてみると幸せすぎるくらいだ。



「さて、では改めてよろしくお願いしますね。」

「私も期待してるよ~。」

「こちらこそ、よろしく。」



☆ ☆ ☆

などと順調にいけるはずだったのだが、ここで問題が発生した。

国境を越えるに当たり、国境を結ぶ街ではなく、魔獣が生息する広大な森を抜けるという荒業を使用する。

というのも確かに問題なのだがそれではない。


「どうやら、リネティアちゃんがまずったらしいんだよね。」

とはベリルの談。

「まずったって?

ここに来れなくなったってこと?」

「ん・・・まぁそういうこと。

彼女はここから西の街、ルベルークを2日前くらいから拠点にして、セリアちゃんを探しに言ってたんだけど・・・

そこの北にあるララバム遺跡で足止めを食らっちゃったらしくてね。

どうも、そこに一人の女の子が入っていったという情報があって、それを・・・」

「セリアじゃないか?と思って確認しに言ったらなんらかのトラブルで出れなくなったと?」

「そうなるわ。

ルベルークは伝承の街と呼ばれてるんだけど、これは数々の伝承があることからそう呼ばれててね。

ルベルークに伝わる伝承の一つに「闇人の家」ってのがあるの。

その伝承の話の舞台がそのララバム遺跡。」


へぇーと唸りながら、彼女の話を聞いてると当然の疑問がわく。

「どうやってそんなこと知るわけ?

手紙・・・じゃないよな?」

「もちろん。

私の奇跡に遠聞えんぶんってのがあって、これはあらかじめ自分の霊力を対象の相手に打ち込むことで、遠距離会話をする奇跡よ。

距離や遮蔽物を完全に無視できる、協力かつ便利な意思疎通手段ではあるんだけどね。

大気の霊脈を相手につなげるという特殊なやり方ゆえに対象は打ち込んだ相手一人のみっていう、限定された術なの。」


霊脈?

特殊といわれてもなにがなにやら?

「2人に対してこの術を使おうとしても、1人だけにしか成功しないってことよ。」


はなからその結論だけ言ってくれれば良いのに。

「それで?

助けにいくってこと?」


という僕の言葉に首を横に振るベリル。

その顔は真っ青である。

「自分でなんとかするから、先にセリアちゃんを本国へ・・・ってさ。」

「セリアはなんて?」

「伝えてないわよ。

助けにいくでしょうから。」


妥当な判断だろうな。

リネティアさんもそれを分かって、自力でがんばるつもりだろう。

だが、自分でなんとかするといっても無理じゃないか?

多分、やせ我慢。

なんとかできるくらいならベリルに伝える間もなく何とかしてるだろうし。

できるなら、初めからこんな話をしてくるわけあるまい。

「わかってるとは思うけど、主人であるセリアちゃんを放って助けにいくことはできない。

私は彼女の侍女であり友人であり従者であり護衛でもある私だけど、あくまでも私の一番は護衛であること。

護衛役としてここに居るの。

かといって、自力で脱出も期待できない。

リネティアちゃんの声・・・かなりくぐもってた。

きっと軽くは無い怪我をしてる。

私が助けにいってる間にここで待ってもらうこともできるけど、もちろんそんな勝手なことはできない。

そもそも私が助けにいって、死んだらどうするのか?

それを考えるだけでも論外。

でも、私の姉のような存在でもある彼女を助けたいと思う。

見殺しになんてしたくない。

でも、セリアちゃんをみすみす危険にさらすことは出来ない。

このまま、あなたと一緒に本国へ帰るのが利口なのもわかってる。

王がお叱りになると思う。

というか打ち首レベルの勝手だとおもう。

でも・・・・どうしても、見殺しになんて出来ないの・・・。」


そもそもそれを僕に言ってくるという時点で魂胆が見え見えである。

というかそんな顔で・・・先刻と一転して今にも泣きそうな顔になって言われては・・・。

どうしようもあるまい。

特大のため息をこれみよがしにつきながら言ってやる。

「僕が助けに行けば良いんだろ?

関わった手前、それくらいいいさ。」


彼女は目を見開いて驚きながら口を言った。

「い、いいの?

お、お礼ならもちろん用意するけど・・・

命の危険があるんだよ?」


なぜ驚く?

助けに行ってほしくてこんな話をしたのだろうに。

というか泣き落としまでしてさ。

もう、泣かれると困るの何のって。

「礼なんて良いわ。

てか、そこまで驚く意味がわからん。

もともと頼むつもりだったんだろ?」

「そ、そうだけど・・・その・・・断ってくれるのを期待してたって言うの?

断ってくれれば、諦めが付いたというか・・・・

断るだろうと思ってたというか・・・

分かってないみたいだけど、トラブルってのは、上位竜種の三体に囲まれたっていう・・・状況だよ?」

「そ、そんなもん頼むつもり!?

そりゃ、護衛の立場のベリルは助けにいけないわなっ!?」

「あ、そういえば、異世界から来たんだっけ?

ララバイ遺跡は西、東問わずに上位竜種の住処で有名なの。」


ベリルがどれほどの実力かは分からないが、いくらなんでも上位竜種は無理だろう。

下位竜種のバルバトでさえあの強さ・・・というか堅さなんだから。

てか先にそれを言えよ。


はぁ~しゃーない。

「・・・戦って殺すのが目的じゃないしな。

足の速さなら自信がある。

まずは気配を殺して潜入。

その後、リネティアさんとやらを探し出して、脱出。

こんなところだろ?

わざわざ先に行かせるって事は、自分が生きて帰れない。

もしくは生きて帰ったとしても遅れる・・・すなわち、まともに歩けないくらい弱ってるってところだろう。

担ぐのは辛いけど、なんとかなる。と思いたい。」

「・・・上位竜種の超感覚は知ってる?」

「はい?」



上位竜種は魔力の壁と堅い鱗で鉄壁の守りを誇り、ブレスといった強力な魔術を駆使する。

さらには超感覚という特殊な力を備えていた。

これは自身の肉体のいずれかを一時的に強化するという能力であり、視覚、聴覚、触覚などの感覚はもちろん、敏捷性などの肉体的性能を驚嘆に上げる奇跡らしい。

やっかい過ぎる。

そんなのが三体。

リネティアさんの血の臭いで常に周囲をうろついてるらしい。


「リネティアちゃんは遺跡内部に立てこもって、隙を見て脱出するつもりらしいけど・・・

3体が同時に現れたってところから見てツガイと子供が一匹って所だと思う。」

「てか、上位竜種とやらは奇跡も魔術も使うのか?」

「似たようなって言った方が正しいけどね。

そして、もう一つ脱出しにくいのが・・・交互に見張ってるってこと。」

「人間相手にそこまで執着したいものかね・・・」

「人間は美味しいらしいから・・・

特に魔力、霊力を持つ上位の魔獣ほど人間を好むらしいわ。」


賢くもあるわけだ。

なんにせよ、見てみるしかあるまい。

「わかった。

とにかくできるだけがんばってみるさ。

セリアにとっても大切な人だろう?」

「頼んでおいてなんだけど・・・本当にいいの?

あなたには関係ないことよ?」

「問題ない。

姉さんに比べたらまだ、良いほうだ。」

「姉さん?」

「いや、なんでもない。」



こうして、僕は伝承の街「ルベルーク」へ急遽向かうこととなる。

主人公は一時的にセリアたんとはお別れです。

そして、東大陸に行った後はしばらく西大陸に行くことが無くなるっぽいので西大陸内でのイベントをもう一つくらい入れたいな~ということでしばらくこの話は続きます。

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