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第7節 月の魔力より「ばか」の魔力

護衛をする商人の名前はグスタフといった。

感じのよさそうな中年のおっさんである。

ただ、額に水晶が付いていて何かと聞いたら、変な顔をされた。

「彼はポポイ族みたいですね。

数は少ないけど、唯一西大陸と東大陸を行き交いすることが許されている種族です。」

とはセリアの談。

特別大きな力を持たないが、商才に秀でたものが多いらしい。

ほとんどの商人はポポイ族だとか。

「ははは。私の一族を知らないとは・・・

君の故郷は人が行きづらい場所だったのかな?」

とはグスタフの談だ。


途中、ちょこちょこと魔獣とであった。

ソルトドッグとフラワーラビットである。

ソルトドッグは体表に塩を形成し、他の捕食者から身を守っているそうだ。

大きさは柴犬程度。

塩分の過剰摂取はそれだけで死ぬ原因にもなるし、食えたものでもないだろう。

だが、塩自体は表皮から生成されるので、肉自体には塩気が無く、その肉は柔らかい。

なおかつ、さっと脂がのった美味なもので少し大き目の街では盛んに養殖されてるらしい。

昨日の晩の食材はソルトドッグの肉だった。

実に美味いものだ。

(ただソルトドッグの解体は見れたものじゃなかった。)

フラワーラビットは頭頂部に花を咲かせる以外はただのウサギで、この魔獣も養殖がされてるらしい。

花の花粉は魔法薬の原料だそうで、それなりの値段で売れるとのこと。


2日ほど経ち、ロロリエの手前の山道でまたもやバルバトと出くわした。

本当に個体数が少ないのだろうか?

馬車には遠くで停車してもらい、もう一人のフルアーマーで重装の護衛(名前は忘れた)に馬車を任せて、交戦。


「セリアはあいつに見つからないところで待機してて。

僕が囮になって注意を引き付けるから、その間に馬車を先に。

後から追いつく。」

「はい。

他の人がいなければ私の奇跡で殺せるのですが・・・

き、気をつけてくださいね。」

「言われるまでもないよ。」


という僕の言葉にとりあえず、といった具合で頷くのだが・・・本当に分かってるのか疑わしいところがある。

どうも、いまだに「命の恩人で借りがある」という水臭いことを思ってるらしいのだ。

恩人をおいていくわけには・・・と目で言っていたがそこはあえて無視。

そもそも西大陸に住む人前では奇跡を使えないからいても足手まといなだけだ。

「女の子を危険にさらすわけにはいかないっ!」みたいないじらしい他意はなく、護衛対象だということと、足が速い僕が囮役をする方がより安全というだけの話で、倒せなくとも僕一人なら余裕で逃げられるのである。


姉さんのせい・・・おかげでね。

姉さんといえば、夏休みの合宿を思い出した。

一年前の高校2年の夏だったか?

たまたま修学旅行ということで、山に行くことになったのだが・・・

そこに姉さんがいたのだ。

僕は戦慄したよ・・・

姉さんがいた理由は熊の駆除依頼。

その山では少し前から規格外の熊が暴れまわっていて、賢く、地元の猟友会でも苦戦していたらしい。

そこにどこからか姉さんの話を聞きつけた人が姉さんに依頼したということで・・・

そんな熊が居る場所を旅行先にすんなと言いたかったが、学校側は知らなかったとのこと。

そして、何が戦慄したって、その姉さんが熊を斬り殺したところを偶然にも僕の友人・・・姉さんの顔を写真で知っていた友人が見てしまったということにある。

熊の返り血で真っ赤になった姉さん。

しかし姉さんは水準をはるかに上回る美人なので、触れてはならない艶やかさ、美しさ・・・というものを友人は感じたらしい。

もちろん僕の姉さんではないと誤魔化したが、危うく僕のクラス内の見方が変わるところであった。

小学校の頃のような思いはしたくは・・・ぶほぅぅぅっ!!

やば・・・泣けて・・・いや、唐突に目から汗を噴出したくなってしまった。

小学校の頃のエピソードはまたそのうちにしたいと思う。



肝心の二度目のバルバト戦だが、ここまでの戦いでどうも身体能力が2~3倍くらいに向上しているらしいことに気づいた僕がそれを意識して桜花烈蹴斬を放つと、難なく斬れた。

蹴りもつい入れてしまったのだが、予想以上に威力があり、鱗が弾け飛んでいた。

首を落とすのは物理的に・・・ファルシオンの刀身の長さよりもバルバトの首の太さの方が勝っていたので無理だったが、リベンジを果たせたのはちょっと満足。

ただファルシオンは少し欠けてしまった。

少し力が入っていた証拠である。

自分はまだまだ姉さんに適わないと感じながらセリアに一言声をかけようとすると・・・


「ひ、ヒビキ・・・す、すごいのですけど・・・なんというか・・・私、必要なかったですかっ!?」

「い、いや・・・別にそういうわけでは・・・」

なんか不機嫌・・・?

「前回は手を抜いてたのですか?」

「いや・・・だんだん力を使いこなせるようになった・・・って感じかな?

意識すると身体能力が増すみたいで・・・」

「ふぅん・・・心配してた私がバカみたいです・・・」

「な、何?」

「別に何でもないですっ!」

「いや、そんなあからさまに不機嫌で居られると・・・理由がさ・・・」


なんなんだろうか?

意味が分からない。


商人と、名前を忘れたフルアーマーの男性。面倒なのでフルさんとする。フルさんも驚いていた。

「ぼ、坊主・・・すげぇなオイ。

奴を単なる剣で殺したのはお前が初めてじゃないか?」

とはフルさんの言葉。

「これでポーンとは・・・・

ナイトクラス以上のチェスは大体が魔術を持っていますから、決して強い魔獣ではないですが・・・」

魔術が効くのはもうすでに知っていたが、魔力を帯びた魔法剣でも有効だという。

ただの剣で斬り殺したのがとんでもなく凄いことらしいことは分かった。

でも姉さんなら、と思って考えるのをやめた。

考えるまでもなく姉さんなら簡単にぶった切るだろう。

というか、魔王というものがいても姉さんならぶった切れる。

その確信が・・・というか、どうせ召喚するなら姉さんの方をと思ったのだけどそんな仮定に意味は無い。


バルバトの素材は鱗や牙。爪である。

それらを剥ぎ取って、もてない分は商人さんやフルさんに分けた。

いいのか?と聞かれたが良いも悪いも、持てない分はどうしようもない。


そうこうしてようやくロロリエにたどり着く。

「んじゃ、またどこかであったらよろしくな。」

「ええ。こちらこそ。」

フルさんと別れ、商人さんとも別れる。

「次も君たちに頼みたいものだ・・・

これは今回の報酬。

少し上乗せしてもらわせたからね。」

なぜ?と言う前に商人が言った。


「珍しいものを見せてもらったのと、バルバトの素材をいただいたからさ。

これだけしてもらって何も礼が無いというのは私の商売魂が許さない。」

「そ、そうですか・・・では頂いておきます。」

特別必要というわけではないが、魂とまで言われてはしょうがあるまい。


ちなみに上乗せぶんや、ここまでにくる時に狩った魔獣の素材を売り払うとこれまた大分お金が溜まった。

なかなかおいしい仕事だったかな。


「僕は武器屋に行くよ。

セリアはどうする?」

「わ、私も付いていきます。」

まぁそれがいいかな。

珍しい武器があるというロロリエ・・・もとい魔法剣があるかもという期待を込めて武器屋へ。

魔法剣はあるが、やはり、刀は無い。魔法の宿った刀などももちろん無い。

刀が欲しいな。


「これなんてどうですか?」

「ん?これ?」

というのはファルシオンの魔法剣。

月の魔力が宿っており、切れ味が増し、魔法的な攻撃力を持つらしい。

確かに魔法剣としては良さそうだが、剣自体の出来は並より低いくらいだ。

これでは切れ味と頑丈さが増したところで、今持つファルシオンと大して変わらないように見える。


「わ、わかるんですか?」

「なんとなく・・・魔力なのかな?

これ。流れが見える。」


最近、どうも目がおかしい。

いや、正常なんだけども・・・セリアのホーリーランスを見て以来、魔力と霊力の流れが見えるようになってきた。僕の体には魔力、霊力が微塵も無いのだけど(異世界人だから?)流れが見えることでなんとなくその力が及ぼす影響も分かるようになってくる。

「魔眼・・・ですかね?」

「まがん?」

「はい。

通常、魔力、霊力といったものは目に見えず、感じることが出来ます。

上級の魔術師、聖職者はその感じ方からある程度の効果がわかるらしいです。

ちなみに私にもそこそこのことは・・・魔力に関しては全くわかりませんけど。

とにかく、魔眼とは上級術者のそれ以上の見極め能力を持っていて、魔力、霊力のどちらでも見極められるという特殊な力です・・・・ヒビキが勇者として召喚された際の力はそれでしょうか?」

「・・・そうかも。

でも、そしたら外れないこの黒い手袋はなんだろう?

魔眼ならこの手袋要らないじゃん。しかも外れないという呪いの装備みたいな仕様だし。

普通にこの目は実質かなりありがたいけどね。」

「そういえば、誰よりも早くバルバトを見つけてましたものね。

ツリードラゴン科は基本的に待ち伏せ型の狩りをしますから・・・下手したら先手を打たれて護衛が失敗していたかも・・・」

「うん。

魔力の流れで潜んでるのが分かった。」


とか話しても解決しないので、とりあえず、剣の修理を頼んで武器屋を後にした。


「そういえば、感じるってことで分かっちゃうならセリアが奇跡を使えるってこともばれるんじゃないの?」

「それは無いです。

き、奇跡において私は、て、天才・・・とのことみたいですから。」

少し顔を真っ赤にして俯くセリア。

か、かわいい・・・


「私は霊力の量、操作、使える奇跡の豊富さ。

全てにおいてダントツだそうです。

日常生活で常に霊力を外に漏れださないように出来るのはちゃんとした訓練をしないといけません。私としては物心付く前から自然とやっていたんですけどね・・・

ご、ごめんなさい。

じ、自慢じゃないんですよ!?」

「じ、自慢じゃないの?

嫌な女だな~と思ってたんだけど・・・」

「ち、ちが・・・べ、べつに・・・嫌って・・・嫌いに・・・」


どぅわっ!?

ちょっとからかうつもりが、なんか泣きそうになってるっ!!

「い、いやいや・・・冗談・・冗談だから・・・」

「ほ、本当ですか・・・?」

上目遣いにそう言う彼女は可愛くて可愛くて・・・

つい顔をそらすと

「や、やっぱり・・・嫌いに・・・いやに・・・」

「ちょ、ちょっ・・・ちがくてね・・・あまりに可愛いからつい顔をそら・・・じゃねぇっ!?」

つい本音が。


「か、かわい・・・ば、ばかなこといわないでくださいっ!!

・・・ば、ばか・・・」



ぐふぅはぁあぁぁああああっ!!

何この”ばか”!?

最後の「ばか」がこれまたたまらんっ!!

なんだ・・・この気持ちぃぃぃいいいいいいいいいいいっ!!

この気持ちが「萌」というものなのかっ!?

こんな気持ちをオタクの皆さんは日々味わっていたというのかっ!?

なんとうらやましいぃいいいいいっ!!

そして憎いっ!!

忌々しいっ!!

姉さんとの死合が私生活の殆どという僕には・・・くびり殺したくなるほど憎いぃぃぃぃいいいいっ!!


「はぁはぁ・・・」

少し息が荒くなってしまった。

彼女はいまだ顔を真っ赤にして俯くだけ。

こんなに純粋な子がいままでに居ただろうか?

まぁそれはともかく。

セリアの戦闘力は魔術特化型のキャラといってところか。

テイル○を思い出すな・・・

弓キャラは3Dになってからというもの・・・まぁ使えない。

シュ○ァーンもといおっさんは別だが・・・


魔術特化型は総じて防御が薄いからな。

魔法盾をしっかりとしたものに変えたほうがいいかもしれない。


「僕の剣はいいから、次は防具屋でセリアの魔法盾を強化しよう。」

「ふぅえ?

・・・あ、はい。

でも・・魔法盾は結構高くつきますし、今もってるので十分では・・・?」

「あそこで買えた物で、しかも最安値のものじゃないか。」

「ええ・・・支度にお金がかかりましたから・・・」

「セリアの盾を強化すれば僕もその分大胆にいける。

合理的だよ。」

「私よりもヒビキが買った方が・・・」

「いや、もともと僕の使ってる剣術は盾を使うものじゃない。

使い慣れてないものを使っても、邪魔になるだけだよ。」


防具屋でかなりちゃんとしたものを購入し、宿へともどる。

「さて、それでここにベリルさんだっけ?セリアの護衛が?」

「は、はい。

私たちが襲われてはぐれたときに一番近い街がここロロリエでしたから。

彼女たちなら行き違いも考え、ベリルを留守番させて探査奇跡を使えるリネティアが外に探しに行く・・・といったところだと思います。

とはいえ、もう10日以上経ってるのでここにいるかは分かりませんが。

私は足を怪我していたので、たまたま通りかかった馬車に乗せてもらうしかなかったのです。」

「なるほど。

その馬車が僕のスタート地点であるレヴァンテの街行きだったと?」

「ええ。

私の勝手で行き先を変えてもらうのも悪いと思いまして・・・」


となれば、そのベリルさんを探すのが当面の目的となる。

「とりあえず、全ての宿に聞いてまわろう。」

「はい。

あ、あの?

私と一緒についてくる気ですか?」

「まずいの?」

「い、いえ・・・たしかに居てくれるのは心強いのですけど・・・

私の護衛だけがヒビキの仕事で・・・人探しとか、余計な面倒をかけるのは申し訳ないです。」

「かまわないよ。

というか、街とはいえど絡まれるかもしれないじゃないか?

セリアは可愛いから。」

「か、かわ・・・ば、ばか・・ま、また・・・お、女たらしですっ!!」

「な、なぜそうなるっ!?」


といった僕にきょとんとした瞳を向けるセリアはやっぱり可愛かったのだ。

ナタリアは微妙だった(笑)

マイソロのチェスターもね・・・ていうか、3Dのクラースと3Dで暴れる初期デザインのノームとかシルフを良い加減見たいものです。

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