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第40節 響とエンデの仲違い2

やっぱりあまり慣れてないせいか、三人称は書き上げるのにいささか時間がかかっちゃいます。

ざっとニ時間ほど。

二時間で六千文字近く。

これは早いのか遅いのか?

夜。

響は泣いていた。

食べ過ぎによる腹痛もそうだが、エンデが本格的に怒っていると勘違いしていたからだ。


ひとしきり泣いたらスッキリした。

そうなると考えが前に向く。


「ど、どうしよう・・・」


こんな拷問まがいのことまでしてくるなんて相当怒ってる証拠だ。

一体どうしたら許してもらえるのか?

それが思考の大部分だった。

コレに対し、解決策が何も浮かばないと言うのが正直なところであり、いっそのことこのまま寝て明日考えよう!とテスト前日のダメ学生のような思考回路を形成したものの、まるで眠れない。

サンタや遠足を楽しみに待ち遠しくて眠れない子供のごとく。

否。

そうしたプラス的な感情、もといウキウキワクワクで眠れないのであればまだ良かったのだが、今回のコレはそれとは全くの別物であり、むしろ真逆。

月とすっぽん。泣きっ面にハチ(?)である。


眠るべく心を無にして目を瞑るものの、次から次へと心底から湧き上がる不安という名のラプソディ。

ラプソディ・・・と言うだけあって気が狂いそうだ。ーーーというのは言い過ぎにしてもそれに準ずるくらいには狼狽しつつある響であった。



そもそも今まで友達という存在すらまともにいなかった響に、年頃の女子の裸と出くわしたなどという、

フィクションにはありきたりとはいえ現実において酷く難しくありえないといっても良いシチュエーションに対する対応策などまずもってわからない。


おそらくエンデが男だったとして同性であった場合でも多少なりとも慌てふためく程度には対人スキルが貧弱なのだ。

そんな響にこれからの応対を”謝る”以外に何かを考え出せと言うのがいかに酷なことかわかるかと思う。



などといいつつ結局のところ響の被害妄想、とまではいかずともそもそもエンデは怒っていないのであるからして、許しを請うのではなく誤解を解くだけで良いのであるが如何せん不器用な2人にはそれが難しい。

かたや、恥ずかしがりや。

かたや、にぶちん。

この二つが揃うことでここまで状況がこんがらがることを一体誰が予想できたか?

仮にこれが小説のネタだったにしろ、著者は思いもよらずに成り行きで書けてしまったと言うに違いない。

事実は小説より奇なりとは良くぞ言った物である。


閑話休題。

ともかくしてこの状況を解決しようとする一つの影が響に舞い降りた。

言わずもがなベリーである。

”こ”から始まる盲目的な何かを邪魔する者は古来から馬に蹴られてうんぬんと良く言われるが、さすがにこれには関与せねばなるまい。

もとい、ベリーのせいであるから尻拭いーーーないしはお節介とも言えるので馬に蹴られることはまず無いだろう。

その点は安心できる。


「マスター?」

「ん?何・・・ベリー?どうしたのこんな時間に。」

「いえ・・・お風呂でもいかがかと思いまして。」

「えうっ!?」


昨日の今日でお風呂に行って来いというお達し。

響はにぶちんであるがバカではない。

よって当然のごとく警戒をした。

またもや何を企んでいるか知れた物ではない。

響が奇声を漏らすのも無理は無い。


「今日は入られていないでしょう?

ずっと悶々としていましたから。」

「ベリーは僕をバカかそれに近い何か、とでも思ってるの?

さすがに昨日の今日で騙されるほど僕はバカじゃないよっ!!」


ふふんと胸を張る響。

とはいえベリーと話している現在も頭の片隅でエンデのことを考えているのかいささか強がっているように見える。

男の子と言う生き物は総じて見栄っ張りなのだ。

これテストにでますよ?


「無理が見え見えですよ?

どうせ強がるならば態度のみならず、表情ももう少しどうにかしていただかないと・・・」

「うぐ・・・」


あいも変わらずポーカーフェイスの苦手な響である。


「まぁそれを気づいてて知らん振りをするのが良い女・・・かもしれませんしね。

とりあえず今のセリフは無かったことにしておいて上げます。」

「あ、ありがとう・・・ってバカにしてるのかっ!?」

「いいえ、コケにしてます。」

「あまり変わらないよねっ!?」

「まぁそれはどうでもいいので置いておきまして、マスターはエンデさんと仲直りがしたいのですよね?」

「うぅっ!?」

「誤解は解いたはずなのになぜか無視され、拷問され。悲しいところにマスターの忠実な性的奴隷。

ベリーちゃんが助けて差し上げます。」

「性っ!?せ、せいて、ど、どれいとか・・・ごにょごにょ・・・と、とにかくっ!冗談でもそういうはしたないことを言うんじゃありません!!」

「てへ。」

「無表情でそのセリフは無いと思う。」


頭に片手を置いて、もう片方の手を腰に。

そして軽く体にしなりをつけて”テヘ”と言うベリーは笑顔が伴っていればそれはもう可愛かっただろう。



「それで、・・・一つお風呂に入ってさっぱりしたらどうかと思いまして。助言は気分転換した後にでも。このまま悶々としてても何も変わらないのはお分かりでしょう?」

「確かに悩むだけ無駄っぽいし・・・気分転換には良いかもしれないけれど・・・どうも何を考えているか・・・」

「大丈夫ですよ。私の行動原理はおおよそ自分のためと残りがマスターのため・・・といって良いですから。」

「・・・。」


少しでも信じていいかと思った自分がバカだった。

そう学習した響である。


「そんな顔しないでくださいな。今回はその残りの部分でのお節介ですからね?

どうぞごゆるりと私に任せてくだされば万事解決、へへ屁の河童というものです。」

「・・・本当に信じて良いの?」


できれば頼りたくない物だけれど、今は藁でもつかみたい気持ちだ。

そんな響にまともな選択肢を選ぶ余裕も無く。


「ええ。いけない企みなんて微塵も灰燼もありませんから安心して湯船に浸かってくださいませ。」

「・・・わかったよ。ベリーの言うとおりにしてみる。実際気分転換は必要だと思うし。」

「おういえぇー。任せてください。」


「・・・本当に大丈夫だよね?」

ふざけた調子のベリーにため息を吐きつつ。そう1人ゴチてから、響はドラム缶風呂へと向かった。



去り際のベリーの一言。


「他意はありますけれど。」


響には聞き取れなかった。



☆ ☆ ☆

念のため遮音結界に入った直後に気配を探りながら恐る恐るむかうと誰もいないことがわかる。

押し寄せていた緊張が一気に緩んだ。

さすがに二回連続、二夜連続というのは自重したみたいで本当に良かった。


とりあえず服を脱いで、全裸になる。

魔法で水を虚空に作り出し、そこからシャワー状に水を切り離して頭を洗う。

魔法って本当に便利極まりない。

軽く体を洗い終えたあと、ドラム缶風呂に浸かると良い具合の温度に調整されていた。

ベリーがやっておいてくれたのだろうか?

なんにせよありがたい。

ゆったりとお風呂に浸かること10分。


ガタンと物音が鳴る。


結界魔術であるセイグリッド(遮音効果プラス)を張ってあるので魔獣は入れない。誰か入ってきたのだろうか?

でもこの結界には昨夜の出来事を踏まえて内側からしか外を見れず、外側からでは中を見れないという覗き防止効果をつけてある。なおかつ範囲や色を視認できるようにしてあり、中に人がいれば色が変わるようも創った。

間違って入ることはまず無いと思われるので、何か急ぎの用事だろうか?


と思い、音のした方向を振り向くとこれまた困った物に出くわした。

タオル姿のエンデである。


「・・・」

思わず響は絶句。

なぜここに?

あれ?

昨日の二の舞ですか?

WHY?

エンデにもきっちり伝えたよね?

結界の色に関して。

青だったら僕が。赤だったら女性陣の誰かが。黄だったらゴルバさんかクルトが。

というかむしろエンデにこそ重点的に、念入りに、真っ先に教えたはずだ。

今目の前の光景がありえるはずが無い。

なんでかな?



裸にタオル一枚というエンデの艶姿にはもちろん、そういったことも含めて響の脳ミソはショートした。

そんな中でもとっさに股間を隠した響こそ紳士の鏡と言えよう。

そして驚くことに響に近づいていき、そのままドラム缶風呂にポチャン。


「・・・えーーーーーっと?」

「・・・な、なに!?」


なに!?とはこちらのセリフだろう!?と考えてもすぐにそんな些細なことは飛んでいく。

目の前のエンデは酷く朱に染まった顔で、すでに茹っているのではないかと思うほどに真っ赤になっていた。

そしてエンデの双眸が捉えるのは眼前の響。

ドラム缶風呂は決して広いほうでは無く、お互いに向き合った状態で軽く密着気味だった。


はっきりと異議を唱えようっ!!


これは一体どんな状況なのかとっ!?


普通の男子学生からすればうらやましい状況かも知れぬが、いかんせん響の頭には処理能力オーバーである。

具体的に言うならメインメモリ128MB、無線LAN(電波強度50も無い)のパソコンでマビ○ギをプレイするような物だ。

確実に固まる。

というかそもそもプレイできない。


てっきり嫌われたと思った相手がいきなり風呂場に乱入。

乱入のみならず、混浴までしてくる。

さらには密着状態で叫び声ひとつ上げない。(自分からしておいてそんなことをするのも大概にして阿呆だが。)


なんだろうか?

本当にわけが分からない。

これほど分からないのは数学の初めての証明問題ぶりである。

あれは話が分からないとか証明においての法則が分からないとかではなく、答え方がわからなかった。

問題の意図してることが分からなかった。

懐かしいなぁ。と現実逃避気味の響。



「正直に言ってわけがわからな過ぎ・・・」


とりあえず話を聞こうとコンタクトを試みてみる物の。

これまたわけの分からないことが起こる。


いきなり泣き出しちゃったのだ。

誰が?

エンデが。


わけの分からないことのバーゲンセールである。

どこぞの主婦のおばさん方よ。

今ならタイムサービスゼロ円。

お願いだから目の前で起こっているこの事象を買い取ってくれまいか?と今にもこの場から逃げ出したくなる響。

でもさらに分からないことに、エンデは響の腕を掴んで離そうとしない。


「あ、のね・・・私・・・その、怒って無くてね・・・ぐず・・・ひっく・・・ひっく。」

「べ、別に無理しなくても良いと思うよ?」


とつとつと語りだすエンデに、何を無理してるのか良く分かっていなかったが、とりあえず慰める響。


「そ、その・・・ね・・・私って・・・肝心なとき・・・ばっか失敗して・・・」

「・・・。」


とりあえず、空気的に沈黙を選んだ響。

賢い選択である。それでこそ紳士だ。


「ほ、本当は・・・ぜんぜん怒ってなくて・・・でも、でもひぐっ・・・上手くいか・・・な”ぐて・・・ね・・・」


ぼろぼろと涙を垂れ流すエンデ。

開く口はまだまだ閉じない。


「は・・・恥ずか、しくて・・・なにも・・・言・・・なくて・・・ね。

私って、どう、してこう、なんだろうって・・・思ったら・・・ひぐ・・・自分が情、けなく、なってきて・・・こんな、ば、かな・・ぐず・・・案にすがってまで・・・ね・・・ひっぐ。

ビ、ビキと仲なお・・りがしたぐで・・・ひっぐ。」


とどのつまりエンデは素直になれない自分に口惜しさを感じ、それにたいして悔し涙を見せているというわけである。

もちろんそれだけではなく、自分は全く怒ってないし許してるつもりなのに、しょうも無いことで、自分が素直になれないというだけでこのまま仲違いしたまま嫌われたらどうしよう?と思う。

その結果本当に嫌いだと言われたときのことを考えると、それだけで胸が締め付けられるように感じたエンデ。

本当にそうなるかもしれないと妄想しただけで目から涙が溢れてくるエンデ。

今、響と混浴しているのも「男なんて単純じゃからのう」というフェローの提案の元に過ぎず、バカみたいと思いつつもそれに縋るしかない自分の現状に、苛立ちを覚えて泣くエンデ。

恥ずかしくて無視してしまった晩など、恥ずかしさと不安でろくに眠れずそして泣くエンデ。


たった一日ちょっとの出来事だと言うのに、ちょっと距離が開いたくらいで不安で胸が一杯になり泣けてしまう自分の弱さになおのこと、軽蔑し、嘆き、泣くエンデ。


自分はなんてひ弱なのだろう。と絶望し、泣くエンデ。

なおかつ、目の前で裸一貫で響と相対した結果、今にも恥ずかしさで死にそうになる自分に何かを話すなんてことが出来るはずもなく。


すなわち、とにかく、つまり。

エンデはとりあえず、感情が暴走してしまったわけである。



そんなエンデに響ができることなどたかが知れており。

最初の緊張などどこへやら。

響はエンデを抱きしめて、ただひたすら頭を撫でていた。


夫が妻にするように。

彼氏が彼女にするように。

父親が娘にするように。

兄が妹に対してするように。

ただ、優しく優しく撫でていた。








どうもエンデに対して感情移入し過ぎる傾向のある僕。

不思議と目が潤んじまったぜ(笑)

もうエンデがメインヒロインで良くない?と思い始めた今日この頃。

メインはセリアです。

次からは一人称に戻ります。なおかつ王都へ。

やりたい話が幾つかあり、それと挟めて大筋の物語も進む予定。

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