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第32節 卑屈もーど

魔獣の生態を考えるのが楽しくて仕方ない。

「だりゃあっ!!」


振るったバスタードソードがフロッグマンという二足歩行のカエル型魔獣を叩き斬る。

振りぬいた勢いを無くさずにさらに一回転。

フロッグマンの背後に控えていた、もう一匹を斬り捨て戦闘が終わった。


周りにはもう二匹のフロッグマンがいた。

しかし、その二匹は頭に矢を生やして絶命している。

エンデの弓で仕留められたやつらだ。

ちなみにフロッグマンとは日本で言う両生類に属する魔獣で知能、戦闘能力共に割合高い。

体も大きく、3メートル前後。オタマジャクシは卵から出ずに中でカエルになるまでじっと耐えるという特徴的な繁殖形態をとる魔獣である。卵のなかでオタマジャクシからカエルにと変態するわけだ。その後、孵化して口より小さな他魔獣を捕食しつつ成体となる。

粘着質の舌で昆虫型魔獣や小さな魔鳥類、時には下位竜種をも捕食すると言う。

体表から神経毒を含む粘液が出ており、素手で触ると結構強めの感覚麻痺に侵されるとのこと。

なんて恐ろしい毒蛙だ。

元の世界のカエルにも粘液には大なり小なり毒が含まれているとテレビで見たことがある。

人を殺せるほどの毒を持つカエルは手で数えられる程度しかいないというが、比較的身近なアマガエルでも毒を持つという。触った手で目をこすったりした場合、かなりきつい激痛だとか。

カエルを触ったら、手を洗いましょう・・・ってね!

剣を念入りに拭いておこう。粘液が怖い!!

ちなみにフロッグマンのクラスはナイトⅠ。


「すごい・・・この弓。

私の思い通りに当たるし、魔力の伝達効率がかなり高い・・・」

「そんなに凄い弓なんだ?

高いだけあったな・・・

それよりも、一気に魔獣との遭遇率が上がってきた気がする。

あれからもう何十匹殺したことか・・・ちょっと気が滅入るよ。」

「おそらくじゃが、アスタナシアという高位の魔物が消えたことに関係あるじゃろうな。

強大な存在が消えたことによって、普段から隠れて過ごしていた魔獣達が活性化しているのじゃろうて。」

<よくあることなのね。まぁ私達にかかれば余裕って話よ!>

「お主は何もしておらんだろう・・・まぁ、響の魔力の扱いが下手なこともあるのじゃが。」

「耳が痛い・・・」


あれからさらに魔力、霊力容量が増していて、現在では三割ほどが僕の体に流れていた。

これはあくまでも僕の体内から漏れないレベルというわけであり、扱うとなると2割ほどが精一杯だ。

激しい戦闘中だと一割程度。

魔力、霊力を扱う感覚はいかんせん分かりづらく、もともとそんなファンタジー要素がなかった僕には扱いづらいことこの上なかった。

しかも、一割といえどそれなりに大容量であり多めに魔力を込めると無駄に破壊力があるし、かといって少ないと本来の威力や用途を満たすことが少ない。

全く持って扱いづらいものである。

ちなみに奇跡もちょいちょい併用しているが、重点的に魔術の方を訓練中。

勇者の才能があるとされた連中は簡単に扱っているのだろうな・・・と思うとなんかむかついてくる。


そして、ちやほやされてるのだろうな・・・と思うとレヴァンテの王をひっぱたきたくなる。ような気がする。


「そろそろ森の出口が見えても良いだろうに・・・」

「まだまだじゃろう。

あれから5日。ひたすら進んでおるが・・・もう5日はかかるじゃろうな。」

「確かに。魔獣が良く出てくるようになったのが痛いよね。

これから魔獣との遭遇が増えてくるかもしれないし・・・下手したらその倍かかるかも。」

「はぁ・・・めんどくさ。

それに予想以上の広さだよ。この森。富士の樹海の数百倍は軽くあるねコレ。北海道くらいの面積がありそうだ。」

「富士の樹海?ほっかいどう?」

「僕の国で結構規模の大きい森のこと。北海道は島・・・かな。

それにしてもエンデとフェローもよくよく動けるね?

僕は契約と弱いながらも勇者としての力で大体10倍くらいの能力値になってるにもかかわず、あまりペースを落とす必要が無いってのは凄いよ。」

「肉体強化の魔術を使っておるからの。妾の力は基本固定砲台向きとはいえ、下手な剣士よりは強いぞ。」

「私も肉体強化と疲労軽減の魔術を使ってるからね。

ついでに私の一族固有の”魔法”もあるから。」

「ああ・・・確か、その力ゆえにあのお下劣勇者との同行を強制されたんだっけ?」

「うん。

本来、肉体強化の魔術は自分にしかかけられないんだけど、私の”魔法”は他者の治癒能力の強化ができるの。

というか、他者に対する専用。

筋力とかが上がるわけでもなく乱発できないっていう扱いづらい能力なの。」

「なるほどね。すでに十分な肉体強化がされているから怪我の心配があまり無い、あのモドキにはあまり必要なかったわけか・・・」

「そうなるわ・・・口惜しいことにね。」

「僕としては凄く助かるけどね。

女神の指輪と契約、エンデの力をあわせたら一時的に不死身になれそうだし、ある程度の怪我は覚悟できる・・・ってのは大きなメリットだよ。

他にもサポート系の魔術を多く覚えていて弓の腕も良い。料理の腕も良し!

そんなエンデをあんな扱いとは・・・あいつはつくづく無能だったんだな・・・いや、有能だからこそ他者の助けを必要としなかったってところか?」


などとエンデをべた褒めしているとエンデは頬を赤らめて謙虚な発言をしだした。

「そ、そんなに言うほど・・・わ、私役にたってるかな?」

「もちろん。

現に助かってるし、エンデが旅についてきてくれるって言った時はまぁ・・・戸惑ったけど、結果的には僕の・・・その、と、と、友達が増えたってことだし・・・嬉しかったし・・・」


と、友達でいいよね?

僕から一方的に友達だと思いこんでるってわけじゃないよねっ!?

ちょっとドキドキ。

もし、「友達だとは思ってなかった」とか言われたらどうしよう?

というか友達ってどうやって作るんだっけっ!?

友達らしい友達を作ったことが無いからいまいち作り方がわからない。

今から「友達になってもらえませんか?」と許可を取るほうが良いのだろうか?

「友達ってのは、いつのまにか出来てるもんだぜ!キラッ」みたいなシーンを漫画で見たことがある気がする。が、そんな抽象的(?)かつ曖昧なことを言われても、実感が沸かない。

そもそも”ソレ”を経験したことがないもの!!

もちろん、日本にいた段階でこうした悩みがあったのは当然。

悩んだ挙句、友達作りのためのハウトゥー本を買っておいたはずなのだが・・・結局前提条件で挫折したのを覚えている。

前提条件が「清潔な見た目を心がけましょう」だからだ。

さらには「人間は見た目で7割ほどを判断します」とかなり穿ったことが書かれていた。(もう少し回りくどく、優しくウェッティな表現で書けよと思ったものである。)

ぶっちゃけこれが一番難しい・・・というか、これを守れない人はどうすれば良いのか?という疑問の答えを得るべく買った本なのに、「この前提条件が守れない場合はもはやあきらめろっ!!友達を作るどころか、就職すらまともにできんよ小僧ども!」みたいなことが書かれており・・・著者は見た目が汚かったり、不潔なヤツが嫌いな潔癖症なんだな。と漠然と感じたのを覚えている。

分かっているだろうが、僕の服が特別汚いわけではない。

清潔な見た目と言うのは余裕でクリアである。

下着だって毎日違うものをはき、毎日洗っている。

手洗いだってちゃんとやっているし、アイロンだって欠かさない。

むしろ普通の人よりも清潔なくらいだ。


ただ、見た目と言う越えられない壁があった。

包帯である!!

時たま血がにじんでいたり、帰りのホームルームになる頃には血が固まり、ドス黒くなった包帯で体中を

包んでいるものだから・・・不潔と言えば不潔かもしれないが、単純に恐ろしい見た目が辛いのだ。

しかも包帯が毎日。

これが女の子であれば萌え~とか言われていただろうに、僕は残念ながら男。

立派なオノコである。

顔はまぁ女の子っぽいがそれよりも包帯のインパクトの方が強いのは当然。

血で黒く変色した包帯を巻いている(しかもだいたい毎日)人間に不潔も清潔もない!!


とにかく、そんな人生を歩んできた僕としては友達は貴重なのである。

今は包帯なんて無い!!


今ならば友達が出来てもおかしくない!!

と自分を振るい上げるものの、ただやっぱり不安はぬぐえない。

空気的にも性格的にも「いや、ヒビキと友達なんてありえないよ」なんてことは言われないだろうが、少しなりとも「え!?・・・っとその・・・」みたいな反応ないしは目を向けられたらハッキリ言われるよりも堪える。



「あ、ありがと・・・」



よかったぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああっ!!

顔が結構赤いが嬉しそうにエンデはそう言ってくれた。

もう!!

もうもうもう!!

友達だよね?と聞くのは恥ずかしすぎて出来ないが、否定しないし不快だという態度も見られない!

これは友達だと向こうも思ってくれていると考えてOKだろう!!

本当に良かったっ!!

良かったっす!!


と思いきや。


「と、友達か・・・友達よりも・・・」


と言いながら微妙に不機嫌な感じになるエンデ。

あれ?

あれあれ?

なんで急に不機嫌になってらっしゃるの?

もしかして僕なんかまずいこと言った?

友達になってくれないの?

やっぱり無し!とか言ってくるの!?


確かにさ。

”ありがと”だけじゃ単に自分の能力を認めてもらったことに対する感謝みたいなものかもしれないし?

友達うんぬんの部分はまさか聞いてなかったとか?

それとも私を友達だと思ってくれるなんてありがとう。みたいな意味合いなのか?

まず後者は無いだろう。

だって、後者だとなんか僕と友達になりたがってるニュアンスだ。

”友達より”という言葉も聞いた。

これは”友達なんかより”という意味が込められてるかもしれない。

友達”なんか”。

友達という言葉を軽視してるような感じである。

友達と言う関係図を望まないという意思が含まれているのは間違いが無い。

というわけで、さっきの”ありがと”はまず間違いなく前者。

そして友達うんぬんと僕が行った部分に対する返事が今の”と、友達か・・・友達よりも・・・”という部分であろう。

なおかつ”友達よりも”の”友達”と”よりも”の間にはおそらく”なんか”という言葉が入るだろう。







すなわち?

これってあれ?

友達は無理ってこと?

友達だとは思えないもとい友達とは思いたくないってこと?

えと。

なにそれ?

僕だけが勝手に友達だと思ってたってこと?

向こうはあまりそう思いたくない節がある。

ってこと?

すなわち微妙に不機嫌になったのは「勝手に友達扱いしてんじゃねぇぞごらぁ、なれなれしいこと言ってんじゃねぇぞごらぁ」みたいな?



ははははあはは。なんて滑稽なんだ。

僕は。

いや、いいよ。

もういいですよ!

どうせもう少し経てばイチゴ柄パジャマが喋れるようになるし!!

僕の友達はイチゴ柄パジャマだけいればいいよっ!!


そう思った瞬間に急に悲しくなって涙が溢れてきたのってのは秘密。

今日の野営時に判明することだが、これは僕の誤解であり、向こうも普通に友達だと言ってくれた。

そのときにまた泣いた(嬉泣き)のは言うまでも無い・・・というか言いたくないことだ。


「・・・バカじゃのう妾の相棒は・・・」

とフェローに呆れられた。

こころなしかシロも呆れていた気がする。

ごめんね。バカな飼い主で。





☆ ☆ ☆


なんだかんだでさらに8日くらいかけて森をようやく抜けると真っ先にあったのは大きな街であった。

街の名前は良く分からないがとにかく街に入ることにする。

東大陸にようやくたどり着いたのだ。

後半、中位竜種の群れに出くわしたときは適当に斬り開いて逃げ出した。

全部殺すのが面倒すぎる。


「まずはギルドで換金かな。

東大陸で新しく登録しなくちゃいけないのかな?」

「それは無いと思う。

確か、ギルドって中立の北大陸の人たちが作った組織らしくてギルドと国にはなんら関わりはないから特別そういうのは必要ないらしいよ。」

「へぇ・・・それはよかった。」


そのままギルドに到着。

割と迷わずにつけた。

すると。


「はぁい!

ご一行さん。

数日振りね!」

「てぃ、ティリアさん!?」


そこにはティリアさんがいた。

多少驚くも、まぁティリアさんだし。と適当に納得しておく。

「巨乳魔人め・・・やはり先回りしていたようじゃな。」

「ミもフタもない言い方ね・・・酷いじゃない。

まぁ幼児ごめんなさい。」

「ふん!!」


右手に凄まじいほどの魔力と霊力が集まっているのに気づいたのか、ティリアさんはすぐさま謝る。

フェローをからかうのは命がけと言うことだろう。


「それで?今回はなんの用じゃ?」

「こっちのセリフだと思うわ。」

「だまれ、脂肪女め。」

「・・・酷い言い草ね。

私泣いちゃいそう・・・だって女の子だもん!」

「やかましいわっ!!」


フェローの暴言にティリアさんはよよよと泣き崩れる(演技をする)がそれを意に介さないフェロー。

あまりカリカリするとお肌に良くないと忠告してあげるべきか?

まぁビンタされるのでしないけれど。

ただ、よよよと崩れ落ちるティリアさんの体のしなり具合がえっちごほごほん!

大根演技なのだが変な可愛さがある。

ついつい手を貸してしまいたくなるような、抱きとめてあげたくなるような。

そして大人の色気と言うものがムンムンと漂ってくる。


「顔が赤いわよ・・・ヒビキ。」


むむ!?

エンデはなぜか不機嫌だ。


「これじゃから男は・・・」

「響君?

私と良いことする?」

「必要ありませんっ!!」

「あなたには聞いてないのに・・・エンデちゃん。」


良いことってなんだろう?

とちょっと気になったけど、いきなり不機嫌の絶頂に到達したエンデの方が気になる。

なんでそんなに怒ってるの?


聞くと「知らない!」と叫んで僕と目線を合わせようとしなくなった。

一体何だって言うんだ。


その後、二言三言話したあとに換金して宿を取ったのである。






ちなみに卵の中でオタマジャクシからカエルになるまで成長するというカエルが実際に存在します。


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