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第25節 フェローとエンデ

二回、原稿が飛びました。

我が家のパソコンはポンコツなのです。


部屋の窓から外を眺めると、重厚な鎧を着けた兵士達がザックザックと足音を立ててルベルークの街のいたるところを闊歩していた。

装備が統一されているところから冒険者チェスとは違うようだ。


「な、何?あれ?」

「ふむ。

まぁ、10日も経てばこうもなるのう。」

「あれはレヴァンテ王直属のレヴェンテ兵。

たぶん、重要な駒を一つ無くした事に対する偵察隊・・・もしくはあのモドキに持たせた宝具のセルシーちゃんと神具のクラウ・ソラスを回収しに来たってところだと思う。

あのモドキ自身は勇者の中でも中の中ってところだったけど、神具の力は絶大だからね。」


エンデが僕の疑問を答えてくれた。

あのモドキですら中の中程度とは、勇者というのはやはりそれだけでチート級の存在のようである。

二度と相手したくない敵だ。

上の上を相手にしたら僕なんて塵と化すだろうね。

もちろん、手袋の力を使えばその限りではないけれどあれは反則技のような気がしてあまり使いたくない。

そもそもアレはそうそうポンポン使えるような力ではないし。


「見つかるのは・・・まずいよね。」

「うん。もちろん。

見つかればよくても東大陸へ侵攻するように命令されるし、悪くて勇者を殺したとして指名手配プラス打ち首かな。」


エンデのその言葉に血の気が引く。

レヴァンテの王はやっぱり好きになれない。

「ん?

東大陸への侵攻?

レヴァンテの王様は”レガート王”の討伐をしろって言ってたけどな・・・」

「レガート王は覇王だか・・・・え?」

「ぬ?」


おっと、そういえばエンデはおろかフェローにも話してなかったんだっけ。

僕の不幸な境遇を。

フェローは魔力体でリネティアと僕の会話を聞いていたようだけど、勇者がどうのとかいう話はしなかったしね。

この際だから話してしまおう。特別秘密にすることじゃないし。

「えと・・・じつはかくかくしかじかで。」


エンデはちょっと驚いた後に、哀れみの目を。

フェローは大声で笑いやがった。

今の僕なら姉さん以外の生き物を殺せる!

よって、フェローはジェノサァァァァァァァイドッ!!

というか、エンデの哀れみの目がマジで辛いです。

「あ、えと・・・ごめんね。

あの馬鹿があんなに良い思いして、なんでヒビキはここまで・・・・って思うと余計に・・・・それにヒビキが勇者だったらよかったのに・・・」

「あれに比べたら、誰だってマシに思えるよ・・・」


哀れみの目を向けないでくれっ!!


「おほん!

それで、どうやってこの街から出るの?

多分、検問がしかれてるよね?」

「うむ。

ちゃんと考えておるから、心配するでない。」

「どんな作戦?」

「強行突破じゃ!!」

「作戦って言うかなソレっ!?」


もう少し頭を使った作戦が良い。

というか、作戦もへったくれもない。


「味噌っかす頭の癖に文句を垂れるではない。」

「それはちょっと酷すぎませんかっ!?」

「なんじゃ?

味噌は味噌でも白味噌じゃぞ?」

「僕が味噌の種類で文句を言ってるとでもっ!?

とりあえず医者いってこいっ!!」

「ふっ。

安心するがいい。

素でこれじゃからな。」

「手遅れなのっ!?」

「赤味噌でも良いのじゃが・・・妾の好みには合わぬ。」

「好みの問題じゃねぇっ!!」

「私は赤味噌の方が好きかな。」

「エンデまでっ!?」


あれ?

エンデも混ざってますよ?

というか、味噌の話ではないというのがなぜわからない!?

というか、君はボケ要因だったのですねっ!?


「味噌は味噌でも脳みそな味噌はな~んじゃっ!?」

「あれ!?

いつのまになぞなぞへ!?

てか、問題の段階でわけが分からないっ!?」

「正解は脳みその形をした味噌じゃ。」

「な、なるほど・・・確かに・・・ってなるかいっ!!

そのまんまな上にシュールすぎるわっ!!」

「脳味噌なだけにの。」

「上手くないからねっ!?」

「その・・・でも・・・ヒビキが白味噌のお味噌汁のほうが好きだって言うのなら・・・・そ、その、私が毎日白味噌のお味噌汁を作ってあげても・・・イイケド・・・?」

顔を真っ赤にして、ちょぼちょぼ口を動かすエンデ。

なぜ、味噌の話で真っ赤になるのか分からない。

そして、その話はもう終わってます。


「とりあえず、味噌から離れようか!?

うん!!」


と言うと「・・・にぶちんばか・・・」といって不機嫌になってそっぽを向いてしまう。

わ、わけがわからなすぎるのですが?


「にぶちんすぎるのう・・・

いくら回りくどいとはいえ、気づくには十分なれべるだと思うのじゃが・・・」

「・・・?

とにかく、話を戻すけどそれしかないの?」

「うむ。

もともとはあれらが来る前に離れようと思ったのじゃが・・・ヒビキが倒れておったからのう。」


ごめんなさい。

面目ないです。


「ひ、ヒビキは悪くないもんっ!!

わ、私を助けてくれただけだし、ヒビキを責めるのはお門違いでしょっ!ちびっ子っ!!」

「ち、ちびっこ言うなっ!?

妾にはフェローという気高い名前がある!!

さらに言えば、一億歳じゃ!!」

「い、一億!?

そんな見得を張ったって信じられるわけ無いでしょっ!?」

「ほ、本当じゃもん!!」


フェローがちょっと泣きそうである。

いささか以上に気にしてることらしい。

このケンカをとめるべきなのだろうか?

僕は。

でも、女同士のケンカの仲裁なんてしたことがないし怖いし正直とっととこの場から逃げたい。

布団に包まっていたい。

一応言っておくが僕はへたれじゃない。

平和主義者なだけである。

本当の平和主義者は戦い自体を避けると思うんだ。

だからこそ、僕はここから全力全開で離脱するのだ。

決して女性同士のいさかいに関与できるほどの甲斐性を持たないとかでは決してない。

カミニチカッテホントウダヨ。


「第一、それが本当ならババアじゃないのっ!?」

「ば、ばばあっ!?」


うわ、一気に目の潤み具合が増した。

これはちょっと見てられない。

というか、止める事が出来ない時点でここからさっさと逃げるに限る。

さて、逃げ・・・としたところで、フェローが泣いてしまったのだ。

エンデもちょっとオロオロしてる。

僕?

僕はもっとオロオロしてますよ?

決まってるじゃないか!!はははははははははっ!!

泣きたいのはこっちだぜこんちきしょうっ!!

目から溢れてくる自然的目薬を微妙に垂らしながら、僕はフェローの頭を撫でてやる。


「大丈夫、フェローはババアじゃないよ?」

「ほ、ほんとうかのう?」


ゴボハァツ!!?

寄り添いながら、服を裾を弱い力で引っ張る。

なおかつ上目遣いというこのコンボ。

弱った可愛らしい声もまた脳髄を痺れさせる。

おもわず吐血してしまうほどに強烈な一撃であるっ!!

ロリコンの人ならば即お持ち帰りしてしまうレベルであろう。

一応言っておくと僕にその気はない。

僕の好みは・・・・わかんないけども。


「たとえ、ババアでも僕の相棒は可愛いフェローだよ。

僕は気にしないから大丈夫。

ね?」

「う・・・うん・・・って何を言っておるかっ!?」

「ひでぶるんしっ!?」


照れ隠しと思われるビンタを受けて倒れこむ僕。

最初こそ自分から引いて威力を殺していたのだが、最近のフェローのビンタは熟練度が上がっており威力がとてもとても切ないことになっていた。

僕の身はいつまでもつのやら。


「・・・・甘やかしすぎだと思う・・・私も撫でて・・・いや、なんでもない。

ヒビキなんて爆発すればいいのに・・・」


前半は聞こえませんでしたけど、後半はバッチリ聞こえましたよっ!?

爆発しろって!?

僕ってなんでそこまで恨まれてるのっ!?

少なくとも嫌われる行為をした覚えは全く持ってないのに!?


「に、にぶいのう・・・」

ほんのり頬が赤いフェローはさっきまで泣いていたと思ったら、僕に呆れた目を向けてくる。

何が言いたいんだ君は?


「まぁ・・・よいか。

おいおい直していけばよかろう。

・・・そう簡単に治るとも思えんが。」

「私もその時は協力する。」


何がなんだかわからないが不吉なことを言ってるのはなんとなくわかるよ?


「話を戻すがこれからすぐに強行突破として、この街を出る。

そして、次の目的地はロロリエじゃ。」

「うん。それは良いけど・・・本当にそれしかないの?

夜まで待って検問をやり過ごすとか・・・」

「おぬしは馬車を買ったし、ブリッツドラゴンの白竜もおる。

それは不可能じゃ。

馬車は代わりを買えばよいが白竜はそうそう手に入らぬし、ここで置いていけばあの白竜はこの異国の地で苦心するじゃろうな?

妾としは良いが・・・響は良いのか?」

「・・・無理だね。」

「そう言うかと思ったからこの作戦にしたのじゃ。

さらに言えば、夜まであやつらも待つまい。

すぐにでもこの宿屋に検査の手が来るじゃろう。

そのためでもある。

作戦の具体的な内容は馬車に乗って、妾がはったりの大規模魔術を外に打ち放つ。

それに検問の兵が注意を引かれてる間に、妾たちは馬車で強行進行。

そのまま、振り切る。」


それが一番妥当な作戦か。


「でも、追いつかれない?

そして、下手したら指名手配されてしまうんじゃ・・・?」

「こちとら白竜がおる。

今は牧場主にある程度の世話賃を渡して面倒を見てもらっておるが・・・

あの白竜ならば物理的な力で上位竜種の弱い奴並みの力を持つ。

追手を撒くという点では問題あるまい。

いざとなれば、エンデが持ってる弓で牽制をかけつつ走れば十中八九逃げることができるじゃろうて。」


「白竜といえば・・初めて白竜を見たエンデの反応は面白かったの。」

「ぅなっ!?」

「ん?」


いきなりのフェローの話題フリ。

エンデの顔が一気に赤くなった。


「初めての白竜だったらしくての?

失禁したのじゃよ。」

「ち、ちがっ!?

も、漏らしてにゃんかないっ!!」

フェローはニタニタとたまに見せるイヤラシイ笑みを浮かべながら、のたまう。

エンデは舌を噛んだ。

失禁・・・って?


「それって・・・おしっーーーーーー」

「言うなぁぁぁぁぁあぁぁあああああああああああっ!!」

「いや、僕はそれくらい気にしなぶるがっ!?」


拳が思いっきり僕の鳩尾にめり込んだ。

こ、こいつぁは効くぜっ!!

とか思ってる最中も現在進行形でプロボクサー並のボディブローが僕の鳩尾に襲い掛かる。

具体的に言うと”胃”に。

もうやめてっ!僕の胃のライフはとっくにゼロよっ!!


「ぐぶはっ!?死、死ぬぐはっ!?げばふっ!?ぐぶるっしゃあっ!?ちょ、がへっ!?痛いってばぶるっ!?ちょっと死ぬびんむっ!?かんべっむっ!?してくだばらがはっ!?」


あれ、お花畑が見えるや。

僕が好きな花。

百合のお花畑である。百合の形や香りがたまらなく好きだったりするのだがこれまた良い夢が見れたものよ・・・

我が生涯に一片の悔いーーーーーー


「ありまくるわぁっ!!

がはぶっ!?」

「ひうっ!?

あ、あれ!?

そ、その、その、ごめんなさい!?

ついやっちゃったっていうか・・・い、今、治癒魔術かけるからっ!!」


ようやく照れ隠しであろう攻撃行動を止めてくれたエンデ。

女の人は決まって照れ隠し攻撃をしてくるのだろうか?

だとしたらとてつもなく嫌なのですけども。それともこの2人だけ?



「あの、そのね?

その・・・そういう・・・行動?

も、もら・・・粗相?とかそういうのって、一般男性から見たら、みっともないというよりはむしろ可愛いと思われるところだろうから大丈夫だと思うよ?」


とりあえず、恥ずかしすぎて、みっともなさすぎて今にも泣きそうって感じのエンデにフォローを入れる。

怖すぎてついついそういうことになるってのはむしろ可愛いと思う。男の場合はだらしない、情けないと評されるだろうけど。


「・・・・ヒビキは?

わ、私のことヒビキはみっともないとか、情けないとか思ったりしないの?

そ、その・・・も、も・・・漏らすってことに・・・・その・・・」

「そんなこと無いよ。

むしろ、それくらいの方が女の子らしくて僕は好きだよ。

竜なんて誰だって怖いだろうしさ。」

「す、すき・・・!?」


僕だって、ちびるというほどではないが怖くないというわけではない。

むしろ、失禁の一つや二つ当然だろう。

かくいう僕だって一度だけ失禁したことがあるんだし。

言わずもがな、相手は姉さんなのですけど・・・・竜を見て漏らさない僕にそれをさせる姉さんって本当に何者だろうとほとほと疑問を抱く。

というか、血がつながってないんじゃね?

家族は皆々変態だらけだし、僕だけ常識人って・・・きっと僕は捨て子なんじゃないんだろうか?

捨て子だとしてもまるで悲しさを抱かないのが、また不思議だ。

むしろ嬉しかったりする。


「ど、どうしたの?エンデ。」

「べ、別になんでもないよ!!」

顔を真っ赤にさせて、こちらをじっと見つめるエンデ。

心なしかぽーっとしてる気がする。

まだ恥ずかしさをぬぐえてないのかな?


「・・・にぶちんじゃのう。」


失敬な。

僕のどこが鈍いというのか。

エンデの心情をきっちり理解しての的確なフォロー!

こんどから僕の名前は”山瀬 響”改め”フォロ瀬 響”と言っても過言ではない。



「で、フォロビキよ。」

「名前の方に使うとなっ!?」

「そろそろ、出んと逃げることが出来なくなるぞ?

とっとと牧場で白竜を引き取って馬車屋へ向かうぞい。」

「う、うん。

じゃあ行こうか?

準備は出来てる?

フェロー、エンデ。」

「万全じゃの。」

「私も大丈夫。」


「じゃ、行こうか。」



こうして、僕達はルベルークの町を出たのである。



百合の花は作者自身も大好きな花です。

作者名はそっから来てたりします。

原稿が飛んだ時のヤル気の下降具合と来たらもうね。

ぶっちゃけ、一度目二度目三度目ともに一緒なのは無かったりします。(笑)


一度目と三度目ではだいぶ違う仕様になってしまいました。


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