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第17節 美少女を泣かせるやつは俺が許さねぇ

よし、ようやくセリアと合流だと思いきや。

一度勇者を出したいなと思って書きました。

「なにか用でも?」

「あのね?

美少女である私からのお願いなんだけども・・・」

「美少女・・・ぷっ・・・」

「わ、笑うなっ!?

何かおかしいことをいった!?」

「言った言った。

美少女とか美少女とか美少女とか。あと具体的には美少女とか。」

「美少女美少女と連呼すなっ!!」

「いちいちからかっていては話が進まぬぞ?響。」

「それもそうだね。

なんていうか、からかいがいのある雰囲気を醸し出していたから、ついついからかい気味になっちゃってね。というか心のオアシスだわ。この子。」

「すっごく嬉しくない言葉ねソレ!!」


僕を引き止めた理由を聞いてみるとしよう。

「で?

なんで僕を引き止めたの?」

「あ、あなたの腕を見込んで、協力して欲しいことがあるの。」

「悪いけど、断る。」

「ま、まだ何も言ってないじゃない!?」

「面倒くさい。

それじゃね。」

「ふふふ、ひどいのう。」


酷いとは失敬な。

単にベッドが、布団が恋しいというだけだというのに。

そして、こういうのはやはり無視に限る。なんだかんだで助けてしまったが、あまり深く関わるつもりは毛頭無い。

セリアのこともいささか心配だ。

大丈夫だろうけど。


「ぅぅうう~。

待ってってばっ!!お願いっ!!

待ってぇ~っ!!

待ってっ待ってっ待って待って待って待って待ってっ!!」

ただでさえボロボロの服を引っ張って駄々をこねるように僕を引き止める青髪少女。

正直うっとうしいよ。

そして、そんなに引っ張られると破れます。破れちゃいます。


「わ、わかったっ!!

とりあえず待つから、服を引っ張るのをやめてくれっ!!」

「ほ、ほんとっ!?」

「ほんとだからとにかく離してっ!?

破れるからっ!!」

とりあえず、離してもらってその直後にすぐさま逃げ出そう。

彼女が僕に追いつけるなどということはあるまい。


「いや。

逃げられたら、困るもん。」


見事に見抜かれた。


「はぁ~。

とりあえず、話を聞こうか。」

「私の美少女っぷりに根負けしたのね!?」

「超絶阿呆だな貴様!」

「そのマジトーンツッコミやめてよっ!?

わ、私、そんなに美少女じゃない!?」

「僕にソレをいわせるの?

僕はパーフェクト紳士だからね。

ちょっとその質問には答えられないな。」

「答えられないという言葉がすでに答えの気がするんだけど!?」

「そんなことどうでもいいから、とっとと話を進めてくれる?

僕は早く、ルベルークに戻ってフカフカのベッドで寝たいんだ。」

「私の美少女っぷりがどれくらいよりもフカフカベッドの方が大事なの!?」

「いい加減にせい、たわけどもがっ!!」

「ぷげらっ!?」

「ひんっ!?」


ぐだぐだ無駄話をしていたことに腹を立てたフェローが僕と青髪少女をビンタしてようやく本題に入ることとなった。


「私は、とある勇者様と旅をしていた1人だったんだけど・・・」

「”とある”勇者様?

ってレヴァンテって街で召喚された人のうちの1人?」

冒険者チェスなだけにやっぱり知ってるのね。

一応、機密事項に当たるんだけど捨てられた勇者から噂が大陸上に広まったらしいから・・・

まぁそれはどうでもいいの。

話を戻すけど、私って、もともとはエールゲン村に住んでた、ただの村娘だったんだけど。

私の一族はちょっと特殊な一芸を持っててね。その一芸からレヴァンテの王の兵に徴兵されて、あのバカのお供に命じられたの。

良い迷惑よ。」

「勇者・・・最近どこぞの遺跡から発掘されたとかいう陣式の”魔法”に分類される秘術で呼び出された者達のことかのう。」

というフェローの言葉に頷く青髪少女改め、エンデ・フラッセイン。

僕もその一人だったりするけど、勇者の才能なしということで捨てられた結果ここにいる。

そういえば、フェローに話してなかったな。

エンデと別れたときにでも、話しておこう。

「その人が、ちょっとアレでね。」

「アレじゃわからん。」

「大方、力に溺れて偉そうにしてるとか、そんなところではないか?

最近良く聞く話じゃ。」

「そう。

あのバカな奴が私に命じたの。

”とりあえず、アースヘッドの一匹でも狩ってこいよ”ってね。」

「とりあえずで狩れる様な相手ではない気がする。」


僕なんて死に掛けたからね!うん。

今着ている服が全てを物語っていると言って良い。


「自身の力を基準に上位竜種を雑魚認定してるのよ。

あのバカっ!!いえ、あのバカに限らず異世界から来た奴らなんてバカばっかりよ!!

とくにあのバカなんて女を侍らすだけで敵地にも行こうとしないし、”お前の能力は所詮、サポートに過ぎないからいらんな。ただ夜の相手としてなら近くにおいてやらんこともない。顔だけは良いしな”って言ってきやがったのっ!!

あんなバカに純潔を捧げる位なら、自害したほうが百倍マシッ!!」

エンデの顔は真っ赤になって憤っていた。

もちろん、照れの類ではなく、怒りのあまりに赤くなっているのだ。

お気の毒としか言い様がない。

というか、勇者として実力を認められるとそんなことまで出来るんだ。

深夜の街に捨てられ追い出された僕とはまるで境遇が違う。

お金や寝床に困ることも無かったんだろうな。

それらは能力に見合った報酬・・・という考えも出来るが、そんな奴にえっちなことをされる彼の周りの女性が可哀想に思えた。が、やはりそこは赤の他人の事情。

多少のイライラを感じても、わざわざぶん殴りたいと思うほどじゃない。

それに望んでそういう場所にいるということも考えられるし。そういうことを生業にしてる女性達かもしれないし。とにかくエンデの言葉には賛成である。


「僕も同じ立場ならそう考えるな。多分。」

女になったことがないから断言は出来かねるが。


「でしょっ!?

んで、あいつが次に言った言葉は”くくく。なんだ?一歩後ずさったりなどして?身の危険ってやつか?確かに俺が本気を出せばお前くらい簡単に手篭めにできるからな。安心しろよ。ガキには興味ないんだ。”とか!!とかとかとかっ!!

ふざけすぎじゃないっ!?

これって!?」

「んあっ!?

あ、ああ、たしかにふざけすぎだね。」

いきなり身を乗り出してきたエンデに後ずさりする僕。

普通に鬼気迫る勢いで怖いです。感情を真正面からそのままぶつけられるのって、傍から見るよりもずっと怖いよね。ドラマの役者さんとか、いくら演技だと分かっていても僕には務まりそうにない仕事だ。


「それで、私は思ったのっ!!

アースヘッドをぶったおし、あいつの前にその死体を差し出して吼え面かかせてやろうってねっ!!

近接戦闘に優れた力で、上位竜種を倒したところでそれはあいつなら簡単に出来るわ。

でも、戦闘に向かない私のサポート能力で、あいつと同じ成果を・・・上位竜種を倒せるなら、単に戦闘能力に特化した相手がやった成果よりも数段凄いことでしょっ!?」

確かにそのとおりだ。

彼女が言ってるのは、アイテムとか特殊能力などを駆使してレベル1で魔王に打ち勝ちたいということだ。

彼女がバカだとかいう恵まれた”奴”はこの世界に来たときから、チートレベルの力を携えており、魔王にレベル1000状態で挑むようなもの。

勝って当然の結果である。

しかし彼女は、どうにかして弱いながらに戦略を考え、もてる駒をすべてフル動員し、背後からなり、斜めからなり魔王をぶっ殺そうと言ってるのだ。

大層なことを簡単にいうね。

いや、簡単ではないだろうけど。

もし可能なら、個人的には彼女こそを勇者と称えたい。

だが。

ここで僕に声をかけたということは一つの可能性を示していた。

まことに残念なのだが。

「でね・・・勢いづいてあいつに言ってやったの。

”今からあんたが馬鹿にしたサポート能力とやらでここからここから北のララバム遺跡に居るアースヘッドを殺してあんたの前に差し出してあげるわよ!もし、証拠の・・・そうね。牙を持ってこれたら、謝ってよっ!!”って。」

「なんとなく、展開が読めてきたな。」

「妾もじゃ。」


「そ、それで・・・そのままの勢いであいつも”ははははははははっ!?お前が!?いいだろう!!もし、お前のその消極的能力を役立ててあいつらを殺せることが出来たら土下座でもなんでもしてやる!!だが、もしお前がこの勝負に負けたら、存分に嬲ってやるから覚悟しろよ?”って言ってきたから、私もその場のノリで・・・ノリでね・・・・本当・・ノリでね・・・

”いいわ!!私が負けたら、この体を好きにすればいい!!奴隷でも愛玩物にでもなんでもなってやるわよっ!!”って話になって・・・」

「はぁ~。バカだな。」

「バカじゃのう。」

「う、うるさいなっ!

しょ、しょうがないじゃないっ!!

く、悔しかったし・・・・・」

「それで、ここで奴らを殺すべく張っていたは良いけれど・・・何らかの理由で挫折。かといって帰るに帰れず、ここでけ健気にもがんばっていたと?」

「そ、そうなの。

察しが良いのね。

それで・・・美少女のお願いなんだけど・・・」

「だが断る!」

「ひ、酷いっ!?

まだ何も言ってないのに!!」

「自業自得というやつじゃしのう。」

「う、うぐ・・・それを言われると・・・」

可哀想だとは思うけれど、自業自得だ。

願いは概ね、アースヘッドの討伐を手助けしてくれとかだろう。

別に助けても良い。僕が殺したアースヘッドのところへ案内すれば良いだけなのだから。

もしくは剥ぎ取った素材を今、この子に渡せば良いだけだ。

でもそれだけで終わりそうにない嫌な予感がする。

関われば関わるほど、後々厄介になるとのアラートが脳内で鳴り響いているのだ。

できればすぐに見なかったことにしたい。


「わ、私だって・・・が、頑張ったもん。

で、でも・・・食料はもう尽きかけだし、魔力も残ってないし、魔法薬も無い、弓矢も無くなっちゃったし・・・・

ど、どうすればいいかわかんなくなってきたし・・・あいつのことだから逃げても追ってくる・・・追ってくるの・・・・

私・・・ど、奴隷になんてなりたくないよぉ・・・」


なのにすっごくいたたまれない。

調子に乗ってる勇者が100パーセント悪いはずなのだが、僕がいじめてるような錯覚を受ける。

逃げればいいんじゃない?と言おうとしたら、”逃げても追ってくる宣言”を先にされてしまった。

とりあえず、アースヘッドから剥ぎ取った牙をこの子にあげればいいか。


「ふぅえ・・・ふえええええええええええええええええええええんっ!!」

ついには泣き出してしまう始末。

これは急いで牙を取り出すしかないっ!!


「ちょ、ちょっとっ!?

こんなとこで泣き出さないで!!

魔獣がよってくるし、ほ、ほら、これあげるからっ!!」

「ああぁあああっ!・・・・・やだようっ!やだやだやだぁぁぁぁぁぁぁああ・・・・

ひっく・・・ひっく・・・な、何コレ?」

「し、知らんのか?

アースヘッドの牙だが?」

「はぅ?

こ、これが・・・?」

「ああ。

とりあえず泣き止んで・・・あ、あくまで魔獣がよってくるからという理由だから勘違いしないように!!」

「男の”つんでれ”は気持ち悪いだけじゃぞ?」

「や、やかましい!!

そんなんじゃないから!!」


そんなんじゃない。

単に泣かれるのが苦手なだけで、いうなれば自分のためであるからして。

そう。自分のためなのだ。

決して心配だとかお人よしだとか、そういうことではないことを明言しておく。


☆ ☆ ☆

その後、そのまま遺跡を出てルベルークに向かう僕達三人。


「付いてくる必要ないだろ?」

「べ、別に私が付いていってるんじゃなくて、たまたま進んでる方向が一緒なだけよ!!

というか、牙を持ってたんなら私が泣き出す前にくれればよかったじゃない!!

お、おかげで・・・いえ、そのせいであんなみっともない・・・」

「ど、奴隷になりたくないよう・・・だっけか?」

「う、うるさいっ!!

ばかぁっ!!」

「ぐはっ!!

殴られるのは想定外だよっ!?

恩人に殴るってあんた、恩を仇で返すとは何事なのっ!?」

「うるさいっ!!」

「ぐほうっ!!」

また殴られた。

結構痛いんだこれが。


「泣きじゃくる姿は確かにみっともなかったけど、可愛かったよ?」

「は、はぅ!?

・・・っ!!

ばかたれっ!!あほんだらっ!!」

なおのこと殴られる。

こころなしか全く痛くないけれど。


「これこれ。

暴れるでない。今日はこの辺で野宿で、明日の日暮れ時に到着といったところかの。」

そんな僕達を見て呆れた視線を向けつつフェローは街道の端によって、野営の準備をする。

周りは岩場が広がっており、ちょうど良い具合に大きな岩と岩が重なり合うところに大きな空間が出来ていた。

ここで野宿をするのだ。

ちなみに遺跡に来るときもお世話になっていたりする。

周りに魔獣が居ないことを確認して、寝る準備にとりかかる。

街で買った綿のような物ーーーコットンフラワーという簡易型布団になる寝袋をバックパックから出して、それを敷く。予備としてもう一つ買っておいたのは、フェローに渡した。

エンデはすでに持っているだろう。多分。


「それじゃあ、寝ようか。」

「そうじゃのう。妾も眠い。」

「み、見張りは立てなくて良いのっ!?」


驚いたように目を見開くエンデ。

そんなに見張りって大事なんだろうか?


「別に周りには特に敵らしい影はないよ?」

「そうじゃの。

妾の探知範囲にも何もおらん。」

「それは今の段階であって、そのうち近くを通るかも知れないじゃないっ!?」


それも問題ないだろう。

殺気がわかる僕が居れば問題ないし、そのためにも眠りは浅く常に意識の一部は握るように寝るという技を姉さんから教え込まれた僕に不意打ちの類はまず通じない。

殺気を感じるスキルも言わずもがな。姉さんのせい、というべきかおかげというべきか。

あんなのと毎日死合いをしてる僕からしたら、殺気を感じることなど造作も無いことである。

ふっ。姉さんっていつ考えてみても化け物だ。

弟にそんなスキルを埋め込むことに躊躇が無いという精神構造からしてもう、常人の枠には収まりきらない。

なぜ、あの姉の弟として生まれてしまったのか。

本当に悔やまれることである。


「いや、気配があればわかるし。」

「ば、化け物ね。

アースヘッドを剣のみで殺したとかも含めて信じられないけど。」

「失敬な。

それは姉さんに言ってくれ。」

「お姉さんがいるの?」

「ああ。

僕のこういった技術も、剣も姉さんには遠く及ばないです。

そして、訓練と称した斬傷刑ざんしょうけいが・・・いやだぁぁぁあああああああああっ!!

姉さんのっ!

姉さんのばかぁっ!!

そこはらめぇぇぇぇえええええっ!!

そこは頚動脈らのぉぉぉぉおおおおおおおおおっ!!」

「ちょっとっ!?

しっかりしてっ!!

ちょ、頭を抱えて・・・ひぃっ!?

何考えてるのっ!?

頭をしこたま岩にぶつけるのをやめ・・・やめ・・・・・やめてって・・・」


だめだっ!!

早く、早くあの日の思い出を・・・

思い出を!!

脳内から抹消せねばっ!!

僕はここから抜け出せなくなるっ!!(?)

さぁさぁさぁっ!!

僕の記憶よっ!!ブロークンしてしまえっ!!

さぁ、ブレークするのだぁっ!!

わはははははははははははははははははははははははははっ!!

「やめなさいってばっ!!」

「ぐはぁっ!!」


はっ!!

僕は何を・・・

思考回路がショートした気がする。

そして、頬が猛烈に痛い。


「ヒビキがそこまでになるなんて、よっぽどなのね。そのお姉さん。

私が悪かったわ。」

というエンデの表情には慈愛の情がわきあがっていた。

一体僕は何をしたのだろうか?

思い出せない。



そんなやりとりの間。

フェローはぐっすりお休みだったのは言うまでも・・・・あるかな。

コレからの展開で色々と迷ったのですが、こんな感じとなりました。

次回はだいぶ長くなるかもです。

そして、作品の名の『ー時々魔王』部分の意味がようやく分かることとなると思います

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