古着屋アップル 第7話 短編版
クレープを食べたあと、湊と蓮は「二人で行くところある」と言って去っていった。置いていかれたあたしと凛は、なんとなく気まずいまま帰ることに。胸の奥がずっと重くて、凛ともほとんど話せなかった。
電車に乗ると、凛が急に言った。
「ねぇ詩、蓮って誰が好きだと思う?」
「え、知らないよ」
「ほんと鈍い。今日、詩と似たコート買って嬉しそうだったじゃん。クレープのときも、詩のことばっか聞いてきてたよ」
「気に入っただけでしょ」
凛はため息をつき、あたしの顔を覗き込んだ。
「蓮、詩のこと好きなんだよ。わたしの勘だけど」
「そんなわけないって」
強く否定したけれど、胸がざわついた。
「じゃあ詩は誰が好きなの?」
「今はいないよ」
もちろん湊のことは言えない。
凛は「ふーん」と言いながらも、どこか納得していない顔だった。
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翌日、塾に行くと、彩葉、湊、蓮がいつもの席にいた。蓮は昨日買ったコートを着ていて、あたしが隣に座ると、まるでお揃いみたいに見えた。
「昨日は楽しかったね」
蓮は嬉しそうに頷いた。
授業が終わると、湊と蓮、彩葉の三人が先に帰ってしまい、あたしは凛と二人きりに。凛に「ピザまん行く?」と誘われたけれど、湊と帰り道で話せるかも…そんな期待があって断った。
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その頃、湊と彩葉と歩いていた蓮は、急に立ち止まった。
「ちょっと俺、詩と話してくる」
湊と彩葉は「やっぱりね」という顔をして歩き出し、蓮はあたしの方へ戻ってきた。
彩葉は湊の腕を取りながら言った。
「蓮、昨日もずっと詩のこと見てたよ。告白する気なんだと思う」
湊は気づいていない。
詩が湊を好きなことにも。
そして彩葉は確信した。
湊は自分のことしか見ていない、と。
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帰り道、後ろから駆け足の音。
「詩、ちょっと待って」
蓮だ。横に並ばれると、また体が勝手に動かなくなる“金縛り”が起きた。
「昨日、楽しかったね。このコート、気に入ったんだ」
「似合ってるよ」
少し沈黙があって、蓮が言った。
「詩って、彼氏いるの?」
「いないよ」
そして――
「詩……俺と付き合わない?」
世界が止まった。
蓮、ごめん。
あたしは湊が好き。
でも、どう言えばいいのかわからない。
そのとき、また“何か”があたしの右手を引っ張った。
気づけば蓮の腕に触れていて、蓮が驚いた顔をしている。
やばい。何か言わなきゃ。
「あ、あのね……受験終わるまで待って。終わったらちゃんと答える」
自分でも驚くほど自然に言葉が出た。
蓮はほっとしたように笑った。
「じゃあ、受験終わったらまた一緒に古着屋行こう。コート着てさ」
「うん……」
心にもない返事をしてしまった。
蓮は駅へ歩き出し、角を曲がる前に振り返って手を振った。
あたしも手を振り返した。
胸が痛い。
湊が好きなのに、蓮に期待させてしまった。
でも――
初めて告白されて、少しだけ嬉しかった。
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その頃、古着屋アップルの店長はつぶやいた。
「よし、うまくいった」
詩と蓮はお似合いだと思っていた。
少し手助けしすぎたかもしれないが、最後は詩自身が選んだ言葉だ。
店長は信じている。
二人はきっとうまくいく。
あとは受験の結果次第だ。
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