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古着屋アップル 第7話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/05/26

クレープを食べたあと、湊と蓮は「二人で行くところある」と言って去っていった。置いていかれたあたしと凛は、なんとなく気まずいまま帰ることに。胸の奥がずっと重くて、凛ともほとんど話せなかった。


電車に乗ると、凛が急に言った。


「ねぇ詩、蓮って誰が好きだと思う?」


「え、知らないよ」


「ほんと鈍い。今日、詩と似たコート買って嬉しそうだったじゃん。クレープのときも、詩のことばっか聞いてきてたよ」


「気に入っただけでしょ」


凛はため息をつき、あたしの顔を覗き込んだ。


「蓮、詩のこと好きなんだよ。わたしの勘だけど」


「そんなわけないって」


強く否定したけれど、胸がざわついた。


「じゃあ詩は誰が好きなの?」


「今はいないよ」


もちろん湊のことは言えない。


凛は「ふーん」と言いながらも、どこか納得していない顔だった。


---


翌日、塾に行くと、彩葉、湊、蓮がいつもの席にいた。蓮は昨日買ったコートを着ていて、あたしが隣に座ると、まるでお揃いみたいに見えた。


「昨日は楽しかったね」


蓮は嬉しそうに頷いた。


授業が終わると、湊と蓮、彩葉の三人が先に帰ってしまい、あたしは凛と二人きりに。凛に「ピザまん行く?」と誘われたけれど、湊と帰り道で話せるかも…そんな期待があって断った。


---


その頃、湊と彩葉と歩いていた蓮は、急に立ち止まった。


「ちょっと俺、詩と話してくる」


湊と彩葉は「やっぱりね」という顔をして歩き出し、蓮はあたしの方へ戻ってきた。


彩葉は湊の腕を取りながら言った。


「蓮、昨日もずっと詩のこと見てたよ。告白する気なんだと思う」


湊は気づいていない。

詩が湊を好きなことにも。

そして彩葉は確信した。

湊は自分のことしか見ていない、と。


---


帰り道、後ろから駆け足の音。


「詩、ちょっと待って」


蓮だ。横に並ばれると、また体が勝手に動かなくなる“金縛り”が起きた。


「昨日、楽しかったね。このコート、気に入ったんだ」


「似合ってるよ」


少し沈黙があって、蓮が言った。


「詩って、彼氏いるの?」


「いないよ」


そして――


「詩……俺と付き合わない?」


世界が止まった。


蓮、ごめん。

あたしは湊が好き。

でも、どう言えばいいのかわからない。


そのとき、また“何か”があたしの右手を引っ張った。

気づけば蓮の腕に触れていて、蓮が驚いた顔をしている。


やばい。何か言わなきゃ。


「あ、あのね……受験終わるまで待って。終わったらちゃんと答える」


自分でも驚くほど自然に言葉が出た。


蓮はほっとしたように笑った。


「じゃあ、受験終わったらまた一緒に古着屋行こう。コート着てさ」


「うん……」


心にもない返事をしてしまった。


蓮は駅へ歩き出し、角を曲がる前に振り返って手を振った。

あたしも手を振り返した。


胸が痛い。

湊が好きなのに、蓮に期待させてしまった。


でも――

初めて告白されて、少しだけ嬉しかった。


---


その頃、古着屋アップルの店長はつぶやいた。


「よし、うまくいった」


詩と蓮はお似合いだと思っていた。

少し手助けしすぎたかもしれないが、最後は詩自身が選んだ言葉だ。


店長は信じている。

二人はきっとうまくいく。

あとは受験の結果次第だ。

本編はこちらから

https://ncode.syosetu.com/n0234lr/7

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