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第7話 自爆前提の作戦なんですが…(不安)

「…やるか!」


ボンッ、ボンッ、ボンッ——10人。


50%サイズの分身たちが出現。


——成長している。


ステータスを見ると、俺の分身レベルは3に上がり、等倍で出せる分身数も6体になっていた。

調査や温泉開拓でスキルを酷使したからだろう。

当然の結果だ…なんなら、もっと上がっててもおかしくない!


思わぬ副産物として、分身のサイズをある程度調整できるようになった。

つまり、俺(本体)は等倍、分身だけを100体×5cmで出す、みたいなことも可能になったわけだ。


「お前ら、死ぬ気で岩を削るぞ。朝までだ!休む暇はないと思え!」


「あ?」

「時給は?」

「お前がやれ!」

「眠い」

「ブラックだ…」


こ、こいつら…探索の時は素直だったのに…


 「わーかったよ!交代制にしよう!4時間ごとに1時間休憩!これで文句ないだろ?報酬も山分けだ!」

 

「チッ!」

「お前はあっちだ」

「了解」

「最初からそう言えよ」

「仕方ねぇ」

「ドラゴン戦だしな!」


10人の分身がギャーギャー喚きながらも、ピッケルを担いで現場に向かっていく。


一晩中、採掘の経験を積む。これを繰り返せば、全員が今よりマシに岩を砕けるようになっているはずだ。

 

そして、回収————

俺はこの分身の可能性に身震いした。



「ユーヤ様~」


リーシャが隣に座った。


「ドラゴンとの聖戦、緊張してますか~?」


「それが、そうでもないんだよな」


「え?」


「むしろワクワクしてる。全ステ「F」の俺がドラゴン退治とか、最高じゃん?」


「……さすが我らが救世主様です~!器が違いますね~!」


「その『救世主様』っての、やめような?」


「では、これまで通り、ユーヤ様で~」


あらためて思うと、全ステFで禁忌処刑された俺に「様」付なんて……となるが、まあ本人たちが喜んでるなら別にいいか。


「この作戦、うまくいくといいな…!」


「大丈夫ですよ~。ユーヤ様なら絶対勝てます~」


「…ちなみ根拠は?」


「愛ですよ~…愛!」


「……なんだそれ、根拠になってないじゃん」


「えへへ~」


まあ、こいつがいてくれるだけで今は気が楽になるのは事実だ。



「よっし、今日はもう寝るか!」

 

分身たちに働かせて、本体の俺は休む。これもこのスキルの醍醐味ですなあ~!


…分身共、謀反とか起こさないよな…?




———————————————————



その数刻後。


建設中の教会の裏手——温泉とは反対側で、ダリオたちが密かに話していた。



「……なぁ、お前ら聞こえるか?あれ」


ダリオが岩山の方を指さした。

カンカンカンと、延々と続く採掘音。


「夜通し、分身に訓練させてらっしゃる……」


「マジかよ……」


「数日後には、採掘のプロになってるってことっすよね……?」


「しかも、本人はお休みになったままなんだぜ?」


「化け物……」


盗賊たちが顔を見合わせる。



「なぁダリオの兄貴。さっきのドラゴンの件のお頭……」


「おう」


「普通、腰抜かして逃げますよね?相手は『空の帝王』だ。それが普通ってか、当たり前ってか…」


「……だな」


ダリオが唾を飲み込んだ。


「俺なんか、足ガクガクで立っていられなかったっすよ。正直、漏らしかけました」

「俺も」

「俺もっす」

「……あっしも」


全員が正直に件の恐怖を思い起こす。


「でもよ、お頭は——」


「ああ。笑ってらしたな…空の帝王を見て、目ェ輝かせてた……」


「しかも、俺らの聖地を守るって……」



山の方から、また採掘音が響く。

深夜だというのに、分身たちは黙々と動き続ける。



「……胆力がハンパねえっす」


「ああ。お頭は、俺たちとは器が違うんだ」


「「「「「やっぱお頭についてきて正解だったっす……」」」」」


盗賊たちが、揃って空を見上げた。


明日、自分たちはドラゴンと戦う。

正直、死ぬほど怖い。


——でも、あの人についていけば、なんとかなる気がする。


根拠なんてない。ただ、そう思えた。






—————————————————————




 数日後。


 俺は分身を全て解除した。


 ボンッ、ボンッ、ボンッ——


 10人分の経験が、一気に頭に流れ込んでくる。


 岩の感触。ピッケルの角度。どこを狙えば効率よく砕けるか。

 これまでの経験が、全部俺のものになった。


 毎度のことだが、情報酔いで頭痛はするが——


 今回はやはり、受けたダメージが特にない分、大したことないな。


「……これなら、いける」


 鱗だろうが、剥がしてみせる。

 もはや今の俺にとってドラゴンは魔物なんかではない。ただの鉱山なのである。




「おお……」


 俺は感嘆の声を漏らした。


 木材で組まれた巨大なY字型の構造物。大の人間が数人がかりで引っ張る、獣の腱をねじったゴム構造。

 まさに、巨大パチンコだ。


 そして隣には、ダリオたちが夜通し編んだであろう長い縄が山のように積まれている。

 300mくらいはありそうだ。これでドラゴンの口を縛ってやる算段だ。



「やりましたね~!」


 リーシャが拍手する。


「ダリオたちも、ありがとう」


「いえ!これくらいお安い御用です!」



 準備は整った。



 


 ————翌日の昼過ぎ


 ドラゴンの咆哮が聞こえる。すぐ近くだ。


 全員が空を見上げた。


 山の稜線に、巨大な影。


「来たな…」


 俺は立ち上がった。


「——よぉし!この時を待ってたぜドラゴン!!」


 俺は拳を握りしめた。



「全員、配置につけェ!!」





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