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第4話 異世界といったらやっぱり"アレ"ですよね!(お約束)

 くせぇ池——もとい、温泉を前にした俺は…それはもう、興奮していた。


「いざ、参らん!」

 服を脱ぎ捨て、勢いよく源泉に飛び込む。


「あっっっっっづ!!!!!!」

 慌てて飛び出して、地面を転がり回った。


「先生ぇええ!!リーシャ先生ぇえええ!!!」

「大丈夫ですか~?!」

 即座にリーシャが駆け寄って、回復魔法をかけてくれる。

 黒紫の光が広がり——痛みが引いた。


「……あっぶねぇ……死ぬかと思った……ありがとうリーシャ」


 そういえば、天然の源泉ってめちゃくちゃ熱いんだった。

 100度近い源泉もあるとか、前世にテレビで見た気がする。

 盛り上がりすぎて、完全に失念していた。


「……これは冷まさないと入れないなぁ…」

「冷ます?」

 オルファが首を傾げる。


「川の水を引き込むんだ。源泉と混ぜて、ちょうどいい温度にする」

「なるほど~!さすがユーヤ様です~!」

 リーシャが目を輝かせる。


 

 ——というわけで、温泉作りが始まった。


「分身!」


 ボンボンボンッ!


「よし、源泉の近くは俺たちがやる。お前らは離れて周りの木を切ったり整備しといてくれ」

「大丈夫なの?」

 オルファが怪訝な顔をする。

 

「分身なら死ぬことはない!任せとけっ!」

「……分かったわ」

「承知いたしました~!」


 

 俺と分身たちが源泉の近くで仲良く作業を始めると——


 ブシュウウウ!!


 源泉から熱湯が噴き出した。間欠泉だ。

 近くにいた分身が直撃を受ける。


 ボンッ!——消滅。


「ぐはぁぁぁ……!」

 

 分身が受けた熱さが一気に返ってくる。 

 熱い…皮膚が焼ける…溶ける…死ぬ!!

 これはかなりキツい…!


「ユーヤ様ぁあああ!!」

 リーシャが泣きそうな顔で駆け寄ってくる。


「だ、大丈夫だ!今は近寄るな!!ここはまだ危険だ!」

「ユ、ユーヤ様ぁ…私たちを気遣って…!」

 恍惚としたまま動かなくなったリーシャをよそに、間欠泉に巻き込まれながらも作業を進めた。


ボンッ! 「あっっっづ!!」

ボンッ! 「またか!!」

ボンッ! 「なめんなっ!」


——そして

 

「…なんか慣れてきたな」

 何度目かの被害から、そう感じ始めた。

 最初は飛び上がるほど熱かったのに、今ではほとんど気にもならない。


「ユーヤ様~大丈夫ですか~?」

「問題ない!むしろ調子いいくらいだ」



————————————————————



 夕方。

 ついに、露天風呂が形になった。


「おお……!」

 俺は感動に打ち震えた。

 

 石で囲われた湯船。白い湯気。ほのかな硫黄の香り。

 サイズは、大人10くらいなら余裕で入れる、大変立派なものだ。


「ではでは…」

 俺は服を脱ぎ捨て、ザブンと湯に浸かる。


「っあ゙ぁ゙~~~……」

 思わず声が漏れた。


 体の芯まで温まる感覚。疲れが溶けていくような心地よさ。

 やはり温泉は、日本人の血に根付いてるんだなぁ~


 しみじみと空を見上げる。山の端で夕日が輝いて幻想的だ。

 俺…異世界に来て、今が一番幸せかもしれない…!



「ユーヤ様ぁあ!! 私も入っていいですかぁあ!!」

 リーシャが服に手をかけた。


「ダメに決まってるでしょ!!」

 オルファが即座に止める。


「えー!! でもユーヤ様と一緒にスベスベになりたいんです~!!」

「男女別々! 常識でしょ!」

「常識よりユーヤ様です~!!」



 ……ふむ。

 

 いつもなら騒々しいと感じるやり取りすらも、今は違って聞こえる。

 湯気の向こうで言い合う二人の姿。木々のざわめき。鳥たちのさえずり。

 まるで、全てが一枚の絵のように調和しているようだ。

 

 ……ふっ。これが「風情」というやつ、か。


「こらこら、君たち…ケンカをしてはいけないよ?…順番に入りなさい」

 我ながら穏やかな声だ。俺は今、完全に悟りを開いている気がする。


「ユーヤ…お前、一体どうしたんだ?」

 俺のあまりの変わりぶりに、狼狽えるオルファ。


「承知しましたぁ~!ユーヤ様~!」

 リーシャは相変わらずブレないね!



 ——しばらくして、俺は風呂から上がった。


「オルファ、お前も入ってみろ。気持ちいいぞ」

「……そう?」


 半信半疑のオルファだったが——


 数分後。


「……っ」


 湯船に浸かったオルファの表情が緩んだ。

 目を閉じて…深く息を吐く。


「…………」

「どうだ?」

「……認めるわ。温泉、最高ね」


 その夜、全員が交代で温泉に入った。

 使徒たちも無言で湯に浸かり、静かに満足している様子だった。


 よかったよかった!




————————————————————



 翌朝。

 温泉の縁に座って、俺はぼんやりと湯気を眺めていた。


「…なあリーシャ」

「はい~?」

 リーシャが隣に来て座る。

 

「次はやっぱり建物が必要だよな。教会でも作るか?」


 俺がこの地に来てもう数日は経つが、今もまだ、野宿同然だ。

 リーシャも使徒たちも文句を言わないが、さすがに屋根くらいは欲しいに決まってる。


「はぁあああ!!! 教会…!! 建てましょう! 今すぐに!! ユーヤ様と私の愛の巣になるのです~!!」

 

 リーシャが目を輝かせ絶叫した。

 最後の方になにか不穏なことが聞こえたが、もう触れまい。


「ん~どこに建てようかな……どこか希望ある?」

 

 リーシャが温泉を見下ろしながら口を開いた。

「いっそ温泉の真上に建ててみますか~? 一階を温泉にして~その中に、ユーヤ様をお祀りする祭壇もおきましょう~!」


「俺を祀るのはよせ」

 だが、「温泉教会」か……悪くない!


「色は黒にしような! 洗練されてて高級感も出そうだ!」

 あと強そうだし……なによりカッコイイ!!


「黒!! いいですね~! 最高の選択です~!!」

 リーシャがくねくねしながら感動している。気に入ったようでなによりだ。



「……ねぇアンタ、それ本気で言ってるの?」

 オルファが呆れた顔で聞いてきた。


「そうだけど?」

「あのね~…教会を黒にするってことは——」

「いいじゃないですか~そんな野暮なお話は~……黒! きっと素敵な教会になりますよ~」

 何か言いかけたところでリーシャが遮った。


「…まあ、あんたの建物だし、好きにすればいいけど…」

 そういうとオルファは背を向けた。



 ……え、なに?

 超気になるんだけど?!


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