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第4話 生徒会長 九条玲花は勧誘する【中編】

 壁にはひんやりした色の金属製のロッカーカーが整然と並び、入り口近くには脚立が立て掛けてある。中央にはロの字に組まれた長机、その奥の重厚な机には会長と書かれた席札が置かれていた。


 その会長の席に腰掛けているのは、長い黒髪を背中に流した生徒会長――九条玲花くじょうれいかだ。


 黒檀のように艶やかな黒髪に切れ長の目。白磁の肌に淡いピンクの唇。書類を揃える所作はそれだけで絵になると言っていい。


 そういえば、九条先輩ってクラスの男子にも人気あったな。入学式の後にあんなに美人で生徒会長だなんてって話題になっていた。


「やっほー、慎くん! 来てくれたんだ」


 そして、九条先輩の隣に立っている水無瀬先輩が書類を持ったまま、こちらを見て手を振る。


「来なかったら、水無瀬先輩が明日もうちのクラスまで来そうなので」

「正解!」


 水無瀬先輩は手で銃の形を作って俺を撃つ。

 大阪人なら打たれたリアクションをしたかもしれないが、俺はそのスキルを習得していない。


 九条先輩は俺と水無瀬先輩を見てから、机の上のファイルを閉じて立ち上がる。


「黒瀬君、放課後のお時間をいただき、申し訳ありません。昨日は水無瀬が困っているところを助けていただいたようでありがとうございます」


 丁寧に頭を下げる九条先輩。


「いえ、あの程度大したことではありません」

「そんな。水無瀬が大変、手を煩わせていたところをあっという間に解決したと聞いています」

「(ここは水無瀬先輩を立てつつ)たしかにあそこまで絡まっていては、慣れない人には大変かもしれません」

「黒瀬君は普段からケーブルのほどくのに慣れているのですか? 何か機材関係のアルバイトでも?」


 あれ? うちの高校ってアルバイト禁止だったっけ? 

 禁止なら生徒会長の前でその方向の話にならないように、強く否定しておいた方がいい。


「いえ、バイトなんてしていなくても、あの程度であればなんとかなります」

「そうですか。それは何とも頼もしい」


 九条先輩は手を合わせてにこりと笑顔を投げる。普段の凛とした顔とのギャップは笑顔の攻撃力を倍に引き上げる。

 あれ? なんかまずい方向に進んでいないか?


「でしょでしょ。やっぱり、私の見立て通り、慎くんはなんでもできるタイプだね」


 ちょい、ちょい。そんなに持ち上げても、俺は生徒会なんてやらないから。そろそろきちんとした断りの言葉を言った方がいいな。


「あの……、大変、心苦しいのですが、手紙にあった生徒会の庶務補佐の件については――」

「そうでした。本題の方をすっかり忘れていました」


 合わせていた手をポンと打ってから続ける九条先輩。


「黒瀬君、庶務補佐として、私たちと一緒に生徒会の活動をしてもらえませんか?」

「光栄なお話ですが、庶務といえば、様々な相手との調整の仕事が多いと思います。俺はコミュ力が高くはないので、庶務の仕事には向いてないと思うのですが……」


 よし。事前に考えたとおりの断りの言葉が言えた。

 コミュ力のない奴が生徒会の庶務の仕事ができるはずがないからな。これで九条先輩も諦めてくれるはず。


「あら、黒瀬君はそのようなことまで心配してくれていたのですね――」


 ん? 雲行きが怪しくなってきたような……。

 九条先輩はにこりとした笑顔のまま顔を俺の方から水無瀬先輩の方に向け。


「生徒会の庶務は水無瀬が担当してくれているのでそのあたりは心配ないです」

「えっ⁉ 水無瀬先輩って庶務なんですか?」

「およ? その言い方だと、私を庶務じゃなくて何だと思ってたのかなー?」


 ふんすっと鼻息荒く、腕を組む水無瀬先輩。

 いや、水無瀬先輩みたいなギャルが生徒会にいるって時点で、俺は驚きなんですけどね。

 深く考えていなかったが、昨日の感じだと会計だけはないと思っていた。


「えーっと、水無瀬先輩は……こ、広報とかかなって……」

「そっかー、広報ね。広報」


 よくわからないけど、広報と言われたことが嬉しいのか水無瀬先輩の頬が緩む。


「会長、聞いたぁー。やっぱり、可愛い私が生徒会の顔として――」

「残念だけどうちの生徒会に広報の役職はないので。……それにお世辞を真に受けないように」


 ピシャリと水無瀬先輩を遮る会長。さすが、扱いに慣れてるな。


 ― ― ― ― ― ― 

 毎日の更新文字数が少なくて申し訳ないです。こつこつ頑張っていきたいと思います。


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