嫁蔵
挙式を七日後に控えた一人の花嫁は女が生まれた家に建てられる嫁蔵にいた。
花嫁が嫁蔵で過ごす七日間の初日は晴天でなくてはならない。
そうでなければ、「晴天の日に鳴る小さな雷」と言われる晴雷の小さな音を嫁豪と呼ばれる女が聞くことはできないから。
嫁豪には晴雷の小さな音を聞くと、どの嫁蔵から鳴っているのかがわかる。
花嫁のいる嫁蔵にやってきた嫁豪は挙式後の百通りの人生を語った。
それを聞いた花嫁は、もっともふさわしい人生を一つだけ選ぶ。
その際、嫁豪の女が持参していた燭台に立てられた蝋燭の灯りを花嫁が手で扇いで消さなくてはならない。
そうして、新しく花嫁になる若い女は最良の人生を手に入れた。