落ち込みました。
びっくりでしょう?
ショックでしょう?
ラブラブだと思っていた恋人が知らぬ間に婚約していたんですから。
しかもそれを勤め先のお嬢様に紹介しているんですよ?
おまけに結婚を機に仕事を辞めて故郷に帰るらしいんです。
もう、全てが寝耳に水。
初耳も初耳の初めて知る真事実だったのですよ。
まぁそりゃあ……恋人というカテゴリーから外れたら私なんてただの他人ですからね、そんな大切な事をわざわざ言うわけがないですよね。
……恋人だと……思ってたんだけどなぁ……。
あの、ギルドの職員さん。
ちょっとお訊ねしてみてもいいですか?
恋人の概念とは?
何を以ってどこから恋人と呼べる関係性となるのでしょう?
え?告白?
はい、されましたよ。
想いを打ち明けられて、交際を申し込まれました。
私も彼に惹かれていたのでもちろんお受けして交際がスタートしたんです。
はい、その後も何かにつけて「好きだ」とか「愛してるよ」という愛の言葉を戴いておりましたとも。
……もしかしてリップサービスだったんでしょうか?
ん?スキンシップはどこまで?
いやん、そんなこと訊きます?
まぁ私たちは互いに成人していましたしね、普通に平民としては当たり前なくらいには進んでおりましたとも。
ちょっ……ハッキリと訊いてきますね、ええハイそうですよっ、男女の仲とやらにはとうの昔になっております!きゃっ♡
会う頻度ですか?えっと…そうですねぇ……
(一方的に)別れる前は会える回数が減っていましたが、以前は週に四回以上は必ず会っていました。
あ、そうですか、恋人という認識でいて間違いはない感じでしたか。
良かった……。
え゛?でもセフレだっとも言えなくはない……?
……私も一瞬そうだったのかなー……と思いましたけどね。
でも彼は、セオノアは真面目な人なんです。
まさかそんな……。
あぁやっぱりもういいです。
……考えてみれば今さらその真意を確かめてところで仕方ないですよね。
もう別れたんですから。(一方的に)
まぁたとえセフレだったんだとしても、
リップサービスで可愛いとか愛してるとか言って貰えましたし、マメにデートもしたしお花やプレゼントを沢山戴きました。
贈られたプレゼントは全部箱に詰めて宅配便で彼に送り返しましたけど。
だからもういいんです。
よくないけど、いいんです。
いいと思うしかないじゃないですか……。
セオノアは私じゃない人と結婚を決めたんですから……。
それを知ったその夜は本当に落ち込みました。
たくさん、たくさん泣きました。
大好きだったから。
本当に愛していたから。
彼が居ない人生なんて考えられないほど、私にとってかけがえのない人だったんです。
だから本当に悲しくて寂しくて……。
一晩中泣き明かしましたよ。
それでも等しく朝はやってくる。
散々泣いた私は……泣き過ぎて“θθ”こんな感じに瞼が腫れ上がった顔を洗ってスッキリさせて、落ち込んでいる場合ではないと自分を奮い立たせました。
ミナリラお嬢様の次は間違いなく私です。
セオノアは結婚するから別れると私にも告げに来るはずです。
でもそんな話、とてもじゃないけど聞く気にはなれないし、律儀に聞いてやる必要もないと思ったんですよ。
だから……何も言わずに消えてやろうと、
何も言わさずに消えてやろうと、
そう決めたんです。